習近平主席の訪米は相互信頼を深め疑念を解消する旅

(1) ジョセフ・ナイ「米中はトゥキディデスの罠を回避できる」
(2) 習近平主席の訪米は相互信頼を深め疑念を解消する旅
(3) 習近平主席の訪米と国連創立70周年サミット

※敬称略 ◆は参照報道、①〜はその要点

………(1) ジョセフ・ナイ「米中はトゥキディデスの罠を回避できる」………

ジョセフ・ナイ氏「米中はトゥキディデスの罠を回避できる」(人民日報単独会見)
http://j.people.com.cn/n/2015/0917/c94474-8951561.html
①日増しに国力を強めるアテネに恐怖心を拭えなかったスパルタ。アテネ脅威論がスパルタをアテネとの戦争に追い込んだ歴史を、中国と米国に当てはめる中国脅威論を主張する人が存在する。

②しかしそれは間違った見方だ。米中が歴史と同じ道を辿ることはない。中国は国際秩序の建設的な参加者であり、国際秩序の充実を望んでおり、それに挑戦することはないからだ。

③米中関係は相互理解を深めることで衝突を回避することができる。現在米中両国の各レベルでの往来はますます増え、中国人観光客や留学生も両国と両国民の相互理解に貢献しており、知らぬがゆえに恐怖に陥るということはない。

④中国が国際問題においてより重要な役割を発揮することが、アメリカの役割を削ぎ落とすゼロサムゲームだとする見方があるが、それも愚かだ。例えば、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立でオバマ政権は政策調整を行った。TPPでも中国側に意欲があれば、中国の加盟は今後いつでも歓迎される。

⑤ただし、相互理解と相互信頼に欠けているため、そこから生まれる問題が多くある。その典型は米中のサイバーセキュリティーにおける意見の食い違いであるが、それは相互信頼の欠如の表れである。この分野での協力を増やし、余計な疑いを減らすことで解消できる。

中国経済の発展拡大は米国にとって脅威ではない。米国には独自の優位性があるからだ。それよりも中国の発展は「回帰」なのだ。歴史的に、もともと大国であった中国が一時の不調を克服して癒えていると考えるべきだ。大国時代の華人政権(宋、明)を見れば恐怖とは縁のない体質であるとわかる。

⑦政府間や国際組織や非政府組織間の権力が米国から中国などに移転することは正常な現象だ。それが米国の没落を象徴するなどと考えることは誤りだ。米国の権力は過剰に過ぎた、中国の権力は卑小に過ぎたのだ。米国は順応するということを学ばなければならない。

ジョセフ・ナイの指摘はオバマ政権と習近平政権の共通認識なのだと思われる。習近平氏は22日から28日まで米国に滞在するが、オバマとの会談は1日だけで、習氏は全米を回り各地で講演と対話にほとんどの時間を費やすからだ。


………(2) 習近平主席の訪米は相互信頼を深め疑念を解消する旅………
習近平主席、米国を公式訪問し、国連創設70周年のサミットに出席(新華社
http://jp.xinhuanet.com/2015-09/16/c_134629089.htm
①習主席は米国のオバマ大統領の招きに応じて、今月22日から25日まで米国を公式訪問する。

② また、国連の潘基文事務総長の招きに応じて、習近平国家主席は26日から28日までニューヨークの国連本部で開催される国連創設70周年のサミットに出席し、中国と国連との協力を強化する重要な取り組みについて発表する。

◆中米の新型の大国関係を構築 対話と協力を堅持 不断に前進(人民日報)
http://j.people.com.cn/n/2015/0908/c94474-8946937.html
①ライス米大統領補佐官(国家安全保障担当)、ラッセル国務次官補がこのほど相次いで訪中し、習主席の訪米に向けた準備をした。議論されたことは次の二点;
・海洋をめぐる争い、サイバーセキュリティーなど厄介な問題が生じているが、問題を発生させる要因は、米中間の戦略、政治、経済的利益、価値観の溝という伝統的摩擦の起伏である。
・米中の歴史経験の位相差を冷静に見るべきだ。中国は古来から大国であったが、近代では停滞し混乱し、再生して「回復」する過程。米国は新しい国で急速に国力を拡大し、世界の権力を集中し過ぎたことからやや疲弊している。一部権力を米国から中国へと移転することは米国を癒すだろう。

②2014年に両国間の貿易、投資、人的往来はいずれも過去最高を記録。エネルギー、軍、人、文化などの相互協力が進展し、イラン核問題やシリアなど世界や地域の重大な紛争問題、および気候変動、エボラ出血熱などグローバルな試練への対処において成果に富む実務協力を成功させた。

③その成果を米誌『フォーリン・ポリシー』は次のように概括した。「すべての道は様々な方法で中国と米国へ通じ得る状況にある」。新型の大国関係構築の模索と実践は、両国にとって世界に対する共通の責任であり使命なのだ。

④長期的観点に立ち、具体的事業の調整と協力において辛抱強さと冷静で動揺しない力を示し、煉瓦を一つ一つ積み上げるように進めていく必要がある。

王毅外交部長、習近平主席訪米を語る(人民日報)
http://j.people.com.cn/n/2015/0917/c94474-8951379.html
①【相互信頼を強化して疑念を解消する】
国際体制およびアジア太平洋秩序などの問題で中米間に「衝突」が発生するのではないかとの米国の懸念を解消することが最大の目的である。
そのために、習主席の今回の旅は西海岸のシアトルから始まり、「米国各界の民衆に向き合うこと」から始まる。習主席は米国の数多くの地方、企業、友好団体、各界の人々と交流し、社会各界に演説し、実業家代表と懇談する。
・中国の平和的発展、協力と相互利益の理念についてはっきりと説明
・中米は協力すれば共に利し、争えばともに傷つく道理を述べる

②【協力に焦点を合わせ未来を切り開く】
・アジア太平洋地域の問題、イランの核開発、朝鮮の核開発、アフガニスタンなど世界の様々な紛争問題についても踏み込んで共通認識を達成し、調整と協力を一層強化する。
・経済、貿易、軍事、エネルギー、航空、人・文化、環境保護、金融、科学技術など多くの分野で共通認識を獲得し、計り知れない影響を持ついくつかの協力協定に調印する。
・米側と共に長期的着眼点で未来を切り開く。

◆習主席、訪米に先立ち米商工業界リーダーと会談(CRI北京放送)
http://japanese.cri.cn/2021/2015/09/17/145s241575.htm
①第7回「中米商工業界リーダー・元政府高官対話」出席のため訪中した全米商工会議所のドナヒュー会長やグティエレス元商務長官らアメリカ側代表と会談しました。

②米国代表発言
・習主席の「訪米を心から歓迎」
・米国商工業界は米中両国の経済、貿易、投資分野における協力強化に取り組んでおり、米中の二国間「投資協定の早期締結」を願っている
・中国が主導するアジアインフラ投資銀行や「一帯一路」(シルクロード経済帯と21世紀海上シルクロード)構想は、世界経済の発展において重要な役割を果たすものであり強く支持する

③習主席発言
・今回の訪米を通じて、中米両国民の「友情を深め」、各分野での「協力を拡大」し、両国関係に新たな、大きな発展をもたらしたい
・中国と米国は世界の二大経済大国として国際的経済協力をリードし、国際金融の安定を守り、世界経済のガバナンス改革を推進し、世界経済が長期的成長を遂げるための潜在力を強化する責任がある
・中国は改革開放を国策として継続する。米国商工業界は中国改革開放政策のステークホルダーであり、今後もより積極的な姿勢で中国の改革開放をサポートしてくれることを期待する


…………(3) 習近平主席の訪米と国連創立70周年サミット……

王毅外相 習主席の訪米と国連総会参加は意義重大と表明(CRI)
http://japanese.cri.cn/2021/2015/09/16/241s241542.htm
①中国人民は死傷者3500万人という大きな民族的犠牲を払って、各国人民と共にファシズムを打ち破って世界平和を勝ち取り、国連の創設メンバー国と安保理常任理事国になった。中国は各国と共に国際秩序と国際体系が公正で合理的な方向に発展するようしかるべき役割を果たしたい。

②習主席は中国と国連の共同主催による南南協力の円卓会議を主宰する。また中国が国連の平和維持活動を積極的に支持し、この平和維持活動に参与する中国の理念と原則を明らかにするほか、気候変動問題や持続可能な発展の道の実現などについて各国首脳と話し合う。

習近平 国連で中国の国際秩序と国際関係の政策主張を説明(CRI)
http://japanese.cri.cn/2021/2015/09/16/141s241523.htm
①国連サミットで採択される予定の2015年から15年計画の国際開発目標(ポスト2015年開発アジェンダ)への取り組みに中国が深く関わることを表明する。

②そのために、中国の国民経済をさらに発展させ、種々の制度をさらに改善し、現代化を実現し、豊かで民主的文明を持つ社会主義国家を建設するという目標を表明する。