習近平政権に「軍事パレード」をさせたのは誰?

※敬称略 ◆は参照報道、①〜はその要点

今日の朝日朝刊は大量の中国非難記事で埋められている。抗日戦勝70年パレードが気に食わないのだ。朝日の中国記事は中国蔑視、嫌悪、敵愾心、妬みの行き過ぎといった匂いが強く漂う。朝日の北京支局(中国総局?)の記者の面々に対する記者ビザ更新を拒否しない中国政府に敬意を表したいほどだ。

それは朝日の中国担当記者が、国内における安倍の「上から目線、国民蔑視」と同じ、中国蔑視という日本優越感の上に米国式人道主義の衣をまとって、高慢にも中国を睥睨していると思える。

「中国人は独善的で世間知らずな欲張りで、共産党独裁体制は自由と民主主義の敵だ。自分たちは世界の冠たる知識人で、民主主義の擁護者なのだ」と、鼻持ちならない。

中国政府が実施した抗日軍事パレードは少なくとも大いなる浪費だ。そんなことはプーチンでも習近平でも十分に知っている。知っていて、せざるを得ない心境に追い込んだのは、安倍晋三を二度も内閣総理大臣に押し立てた「日本社会の怖さ」に気づいたからだ。

安倍の狡猾なる平和主義演戯は危険なポピュリズムだ。生きていたらヒトラーも舌を巻いたであろう。ドイツは二度の世界大戦に敗北して漸く本格的な戦争犯罪に対する反省を法制化して今日に至っている。だが日本は一度しか敗北していない。まだ懲りていないのだ。

もう一度世界大戦――少なくとも中国を再び征服しようと軍事行動を起こす可能性は十分にある。それは安倍の歪んだ逆恨みが起点となる。そんな安倍の平和演戯に朝日すら騙されるほど日本社会の平均的知的レベルは最低の部類に属する。

だから、習近平は日本軍の征服行動を跳ね返す専守防衛力の維持を怠るべきではなく、自国防衛に庶民を団結させるために、80年前の日本の侵略行動の悪辣さとその残虐性と殺戮の規模の大きさを、中国の現代人に教える必要があるのだ。

朝日は、「習近平覇権主義者で膨張主義者であるから、軍事力を拡大し、海洋を征服する」としつこく繰り返すが、習近平は純粋の華人であり、北方の征服民族ではない。そのことは、習近平が経済繁栄を第一とし、軍事侵略を毛嫌いする人であることを無視している。

アジアを征服した空前の大帝国の清帝国唐帝国や印度からヨーロッパの淵まで版図にしてしまった元帝国、一方宋や明は世界貿易に活路を見出し軍事侵略はしなかった。前者は中国を征服した北方民族の帝国であり、後者は長江流域の華人政府なのだ。

そして習近平はその意味で華人だ。彼は軍事侵略を嫌い、軍事は専守防衛に必要最小限、予算は経済興隆に使いたいと考える。宋や明の大洋貿易への夢と同じ道を辿っているとも言える。その彼が安倍によって専守防衛の抜本建て直しを余儀なくさせられ、近代化を進めたと言える。

抗日戦勝70年記念パレードも、安倍の軍事同盟威嚇がなければ、なかっただろう。「抗日」とも言わず、「終戦」か「国慶節」(国が再生)としか言わなかっただろう。習近平に「抗日」と言わせ、「戦勝」と言わせたのは安倍を支持した日本社会の愚劣さなのだ。朝日は謝罪も自己省察もできない。

結局朝日記事は、「習近平専制独裁者で、一党独裁共産党で盤石の地位を得ようとあがいている。そのために狡猾にも安倍を利用した。日米欧が一致して忌避した軍事パレードは習近平を頂点立たせたかに見えるが、その軍事的野望は留まるところを知らず、遠からず財政破綻するだろう。少なくとも来週のG20では、習政権の無策によって上海市場が暴落し、全世界に恐怖を与えたと世界非難の渦が中国政府を取り巻くだろう。1週間後に習近平は栄華の絶頂から奈落へと墜ち込むに違いない」と言いたいようだ。

多党制議会民主主義は万全ではない。日本の八紘一宇の野望もナチスの世界帝国の野望も、選挙による議会制民主主義が産み落としたか、少なくともファシズム台頭に戦わなかった。米国流の民主主義や人道主義は冷戦を発生させ、朝鮮戦争ベトナム戦争とアフガン戦争とイラク戦争を発生させた。

その地点から中国を眺めると異なる様相に見える。共産党一党独裁は官僚腐敗を起こすが、日本も同じだ。日本の多党制議会制民主主義は安倍晋三を産み落とした。中国の一党独裁胡錦濤習近平を米国流儀とは異なる民主主義制度で産み出したが、相応の見識と人格者を選んだ。

日本は1985年のプラザ合意で高度成長を禁止され、輸出経済から内需依存経済へ、経済侵略なき持続可能経済へと転換させられた。胡錦濤は訪米して暴力的な反中デモに直面し、輸出経済から内需依存経済へと、高度成長を停止させた。その中で習政権が腐敗の除去に苦しんでいるのだ。

ならば、日本メディアが「中国経済危機に世界が大きな迷惑をかけた、なんとかしろ」というのは高慢ちきである。中国脅威論を述べ立て、中国を軍事包囲して経済成長の息の根を止めようと躍起になってきたのはどこの誰か? 

上海市場が下落した、中国経済指標が0.2%悪化したで日経平均が暴落」するほどの中国依存で飯を食っているのによくも言えるものだ。李克強は巨大だった中国の影の金融を激減させ、投機金融が不動産市場になだれ込むとそれを規制し、上海市場に追い込んで、投機的株取引者に退場を迫っている。

そんな視点が日本マスコミには欠落している。IMFFRBが必死になって李克強の経済清浄政策を擁護し、中国経済の底力は強く、暴落は投機バブルの清算に過ぎないと声明するほどなのだ。黒田日銀総裁すら、米国で同趣旨の講演を行った・・・

右翼的と見られていた時事通信記事のほうが余程まともである。記者のプロパガンダが薄まり、淡々と端折ることなく速報してくるからだ。

朝日の記事は米国式の人道主義や民主主義の暑い衣を纏って、香港の反中活動ネットを頼りにして、中国の地方政府に対する抗議運動を必死に嗅ぎまわる。その種の記事は、産経よりも悪質だろう。産経記事なら子供でも分かる反共プロパガンダだが、朝日はそれを隠して民主主義の擁護者を装うからだ。

◆歴史否定は「良識への侮辱」=抗日記念で日本けん制−中国主席(時事)
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol&k=2015090300779&utm_source=twitter&utm_medium=jijicom&utm_campaign=twitter
①「歴史は人民の心の中に書かれており、歴史の抹殺は許されないし、抹殺もできない。残忍非道な侵略や血なまぐさい戦争の場面、人々を激怒させる虐殺の犯罪行為のほか、あの戦争で不幸にも亡くなった数千万人の善良な魂を、人類の歴史の記録に銘記し、人類の心の中にとどめる必要性がある」

②「歴史の忘却は裏切りを意味する。侵略戦争を否定し、歪曲し美化したり、その歴史的な責任から逃れようとしたりする一切の言行は、自分も他人もだますものだ。侵略の歴史を否定することは歴史をもてあそぶことであり、人類の良識への侮辱だ。必ず世界人民の信頼を失うだろう」と習主席が述べた。

◆「戦勝・中国」硬軟の演出 パレード、軍事力誇示/兵力30万人削減表明 70年式典(朝日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11947033.html?ref=pcviewer
◆(時時刻刻天安門前、戦車とハト 中国・70年式典(朝日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11946925.html?ref=pcviewer
①中国で3日、開かれた「中国人民抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利70周年」の記念式典で、習近平指導部は大国としての力を誇示しつつ、脅威論の払拭を図ろうとした。しかし、国際社会の不信は根強く、国内も祝賀ムードに浸ってばかりはいられない現実がある。

②中国が「抗日戦争勝利記念日」に「軍事パレード」を行ったのは初めてだ。そして、空母に艦載される戦闘機「殲15」や大型無人偵察機「BZK005」、米本土を攻撃可能な大陸間弾道ミサイル「DF(東風)5B」、などを次々と披露した。

③軍事力を誇示しながら、宣言された兵員の大規模削減。その目的は陸軍の余剰を削減しその予算を海洋戦力強化に回すものだ。陸軍を削減し海空軍を近代化し強化するに過ぎす、国際社会に「脅威論」が広がる原因になっている。

④だが、「周辺外交」など融和的なかけ声の一方で、領土や海洋権益を巡り、国際ルールを無視してなりふり構わず力の行使を続ける中国への反発は根強い。

⑤ロシアのプーチン大統領朴槿恵大統領、国連の潘基文事務総長ら49カ国と11の国際機関の代表らが出席したが、村山富市元首相は3日、体調不良のため一連の行事の出席を見合わせた。式典前は習氏と親しげに言葉を交わしていた朴氏も、パレードの最中は座ったままで、ぎこちなさも漂わせた。

⑥国際社会から警戒されながらも軍事力を誇示するのは、国内統治を安定させるためだ。世界第2の経済大国となった中国の習指導部は、前例のない「反腐敗」の取り組みで党内外の支持を集めたが、新鮮さは薄れ、13億国民を束ねる新目標に「中華民族の偉大な復興」を掲げざるを得なくなったのだ。

⑦習氏が軍事パレード後の記念レセプションで『侵略の歴史を否定することは歴史をもてあそぶことであり、人類の良識への侮辱だ。必ず世界人民の信頼を失う』と述べたが、それは日本を牽制する「強い習政権」を庶民に見せつけることが狙いだ。

⑧「偉大な中国の復興」とは「軍事力の復興であり」、その柱が、領土や主権を守る国の力強い姿だ。パレードをテレビで見た庶民の多くは「祖国が強く、大きくなっているのを実感した」(河北省承徳市の26歳女性)と、好意的に受け止めた。ただ、その国内でも「やり過ぎ」の弊害が浮かぶ。

⑨公害産業を一時停止させ、車の量や建設工事まで激減させ、北京周辺の産業活動は一時、マヒに近い状態となった。8月に170人以上の死者・行方不明者を出した天津の大規模爆発事故に続いて、経済に追い打ちをかける。

⑩折しも、中国経済が減速する懸念で、世界は「中国ショック」とも呼ばれる株安に揺れる。軍事パレードに熱を上げる政府の姿勢に、市民も共感一色とは限らない。地方別の経済成長率が全国最低の遼寧省瀋陽に住む大学職員は「こんなに不景気なのに、軍備やパレードにお金をかけていいのか」と。

◆(天声人語秋天の軍事パレード(朝日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11947029.html?ref=pcviewer
①ロシアや韓国の大統領は列席したものの、欧米主要国は首脳級の出席を見送った。「抗日戦争・反ファシズム戦争勝利70周年」が大規模な軍事力の誇示と一体になる。その辺りに中国の危うさを見る国もあったはずだ。

②中国国内に向けた意味も大きい。経済は減速し、格差は縮まらず、汚職は蔓延する。民衆の不満がときに各地で噴き出す中、「偉大な国」の演出で政権への批判はそれていく。なぞらえるなら、抗日・反日は中国における「ナショナリズムの気付け」。不人気なときほど政権には使いでがある。

◆(社説)東アジア外交 仕切り直しの時がきた(朝日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11946866.html?iref=reca
①北京で開かれた中韓首脳会談で、3年ぶりとなる日中韓の首脳会談が来月末にも韓国で開催されることが決まった。朴氏はきのう、中国の「抗日戦争勝利70周年」の記念式典に出席した。習氏は、日米からの慎重論を押し切る形で訪中した朴氏を手厚く迎え、蜜月ぶりを強調した。

②だが、天安門広場での軍事パレードでは、米本土を攻撃可能な大陸間弾道ミサイルや最新の大型無人機が初めて披露された。今回の式典には共産党政権の正統性を訴えるために抗日戦争での功績を強調するとともに軍事力を誇示する狙いが込められているようだ。

③韓国は、そんな中国にのみ込まれることを警戒し、今のところ「歴史共闘」には慎重だ。しかし、今後も同じ間合いが保たれる保証はない。そのためにも日本は歴史問題で中韓それぞれと和解を進めねばならない。北朝鮮の核ミサイル問題もある。日韓は米国とともに緊密に連携する必要があるからだ。