米国の破綻は不可避(田中宇)

(1) 米国の破綻は不可避 (田中宇
(2) トランプの制裁関税は中国にそよ風しか吹かない(ロイター)
※1 ◆は参照報道
※2 ①〜は参照報道の要点で、論旨明確化と背景説明を加えた「意訳」です。敬称略。
※3 ❶〜や※で始まる文章は私見です。
※4 Web登録後も関連報道などを追記します。

(1) 米国の破綻は不可避 (田中宇

田中宇‏ @tanakanews_com 8月6日
新しい無料記事「米国の破綻は不可避」を配信しました。 http://www.tanakanews.com/180805japan.htm
➀米国が中国などに輸入関税引き上げの貿易戦争を仕掛けるなか、7月末にBRICS諸国(中露印ブラジル南ア)の年次サミットが南アフリカで開かれた。

BRICSは米国に輸出して経済成長してきたが、トランプによる米国の保護主義化に伴ってこの従来モデルをあきらめて離脱した。

➂世界の総人口の4割を占めるBRICSの消費市場としての潜在的な力を利用し、BRICS内部や他の新興市場諸国との貿易で経済成長していくモデルに移行していくことにした。その主導役は中国だ。

④米国経済のバブル崩壊を予期して、BRICSはまた、加盟諸国間の貿易で使う通貨を、米ドルから、人民元など加盟諸国の5つの通貨に替える。外貨備蓄も米国債を減らす。

➄米国が金融崩壊すると、金地金がドルに代わるが、金地金の国際的な価格管理の主役は、今年初めに中国政府に交代し、国際金相場は人民元の為替と連動している。

BRICSには世界最大の金消費国である中国とインド、世界最大の金生産国である南アフリカとロシアがあり、生産と需要で金相場を支配できる。

⑦米国の経済覇権の根幹にある債券金融システムがいずれバブル崩壊し、それが米国覇権の終わりになる。だから、中国やBRICSは「ノアの方舟」を建造し始めている。

⑧米国の上層部は、覇権を維持したい『軍産複合体』と、放棄破壊したい『トランプ』との激しい暗闘が続いている。軍産は窮地にたつ度に戦争を起こして抜け出してきたが、トランプは言葉とは裏腹に産軍の戦争を阻止しており、産軍はジリ貧状態。

➒米国の中間選挙(11月6日の上下院議員選挙)は民主党が有利で、トランプの共和党は議会で少数政党ないしは捻じれ政党に陥るだろう。

➓躍進する民主党では、サンダースとウォーレンに象徴される、リベラル派が中間選挙候補の44%と三倍増して最大勢力となり、クリントンオバマの産軍複合体制派は弱小化した。

中間選挙でトランプが勝てば、彼はTPPとNAFTAに大幅譲歩して、「米英加豪日」同盟の盟主として縮小された覇権を維持する。

⓬しかし、真のリベラルが主流となった民主党中間選挙で勝利すれば、米国内は内乱状態(米国のリビア化)に陥ることすら懸念される。それが回避されても、いずれ米国の金融が再破綻し、米国のリビア化が現実味を帯びる。

⑬米国覇権が失われると、「中国敵視」が必要だという軍産の論理も消失し、日本や豪州は中国敵視をやめ、日豪亜やTPPは中国とも協調するようになる。すでに安倍晋三は、その手の親中国的なことを何度も表明している。


(2) トランプの制裁関税は中国にそよ風しか吹かない(ロイター)

◆Commentary: Trump tariffs only a weak blow to China (ロイター)
https://www.reuters.com/article/us-andelman-china-commentary/commentary-trump-tariffs-only-a-weak-blow-to-china-idUSKCN1LX2HN?utm_campaign=trueAnthem:+Trending+Content&utm_content=5ba075f504d3012ed777f41a&utm_medium=trueAnthem&utm_source=twitter

➀9月24日から中国への追加制裁関税を輸入額2000億ドルに対して10%課税するとトランプが発表。当初の25%課税から後退し、中国の妥協を懇請する形。

②トランプの制裁課税は中国にとってささやかな被害しかもたらさない可能性。

➌逆に中国は
・同率の報復課税
・米国以外の国からの輸入関税を半減して、消費者に米国以外の国への買い替えを促す
・米国企業への原材料と部品輸出の制限という切り札を準備している。

習近平政権は、トランプが中間選挙で敗北し、議会少数派に転落し、2020年の大統領再選は有り得ないと予測している。それまでは上げすぎた人民元のレートが適切に下がるまで放置すれは制裁関税の大部分が相殺されることもある。

➎2007年胡錦涛が米国で激しい抗議に直面したとき、中国のGDPに占める輸出は35%に達していた。

➏だが、2017年には輸出依存度が18.5%に半減し、全輸出額に占める対米輸出の比率も18%に激減しているから、トランプ制裁関税の影響はGDP比で1%を超えることはない。

➐激しい抗議を受けた胡錦涛は日本の1985年に学んで、輸出依存の経済成長を内需依存経済成長へと大規模に切り替えながら、ASEAN各国に投融資してASEANの購買力を高め、ASEANとの貿易を倍増させ、その政策を強化するために人民元の対ドルレートを40%切り上げた。

胡錦涛温家宝内需依存政策を引き継いだ習近平李克強は、ASEANから広くユーラシア大陸全体への投融資を拡大し、ユーラシア全域の購買力と高めている(「一帯一路」新経済ベルト建設)。

➒「一帯一路」21世紀のシルクロード建設が始まって5年が過ぎた。行き過ぎもあるが成果は着実で、ロシアとの同盟関係が親密となり、反中国的であったベトナムやフィリピンやモンゴルも反旗をしまい込んだ。

➓トランプの貿易戦争は多少の困難を中国企業に与えるだろうが、その困難がむしろ中国企業をスリム化させ生産性を高めさせて、広くユーラシア全体へと広がってゆくとみられる。


◆トランプによる追加2000億ドルへの制裁関税は中国に進出した米企業を窮地にたたせるだろう(環球時報https://twitter.com/globaltimesnews/status/1041896885223477248
➊中国の米企業は中国内需に依存するだけでなく、完成品や部品を米国工場に輸出して、米国工場でのコストを下げているが、それができなくなるからだ。


◆China, Russia agree to further improve energy cooperation (中国中央電視台
https://news.cgtn.com/news/3d3d514f7a636a4d7a457a6333566d54/share_p.html

➀中国とロシアはシベリアやサハリンの石油・天然ガスの供給を拡大する大規模なプロジェクトに調印した。

②中露の緊密化はこの20年来着実に準備され、日本保守権力の在りざまを反面教師として中露緊密化は政治と軍事だけでなく経済でも非常な緊密さに至っている。サハリンと南クリルの中露開発プロジェクトでけでも2兆円を超える。