安倍晋三は歴史改竄言動を封じられた

(1) 安倍晋三は歴史改竄言動を封じられた
(2) 欧米の論評
※敬称略 ◆は参照報道、①〜はその要点

………(1) 安倍晋三は歴史改竄言動を封じられた………

28日の日韓外相会談で、安倍側が日本軍の犯罪と日本政府の責任を全面的に認めたと韓国側が解釈する結果になった。安倍首相が謝罪し日本政府が全面的に元慰安婦に対する補償を行うと約束し、日本大使館前の慰安婦少女像の移設を韓国政府が民間団体を説得すると約束した。

慰安婦性奴隷問題を国連が非難決議している。この決議に正しく対応しなければ、安倍政権は「ならず者政権」扱いになる。常任理事国入りどころではなく、国連憲章の「敵国条項」発動すら議論が起こりかねない。安倍は「ほぼ全面的」に屈した。

韓国社会には「日本政府の法的責任」は曖昧にされたと批判が根強い。また岸田外相はソウルでは「日本軍の犯罪と日本政府の責任」を表明したが、いつものように、日本国内で「道義的責任に言及したもの」と説明すれば、韓国社会の怒りが一挙に爆発するだろう。そこを注視されている。

「最終的かつ不可逆的に解決」についても、日本側では「韓国にむしかえさせない」と報道しているが、韓国や海外報道は「日本側の歴史修正行動を封じた」と報道している。安倍自身が二度と歴史修正発言ができなくなった、すれば即座に「安倍はならず者」になる仕組みができた。

歴史修正言動を封じられたことは安倍本人だけでなく日本政府全体に影響する。閣僚は二度と「靖国参拝」できなくなった、閣僚は「竹島」日本領と断言できなくなった、「WWⅡ強制労働訴訟」を批判できなくなった、「安重根」批判をできなくなった・・・

安倍を継ぐ内閣総理大臣と自ら名乗る「稲田朋美」は韓国政府から「入国禁止者」にされたが、今回は彼女の外交言動はもとより国内言動でも封じられた状態であり、高市早苗も同様である。安倍晋三が取り巻き極右にどう対応するかが、韓国だけでなく世界から監視されるだろう。

韓国政府は「日本大使館前の慰安婦少女像の撤去など適切な措置を関係者と協議する」公約をおこなったが、関係者は反発している。それを日本側が合意違反だと批判すれば、韓国社会の怒りが一挙に噴出するだろう。

米国政府は「慰安婦問題に関する日韓和解はTPPと並ぶ地政学的な歴史的成果」と自己賛辞したが、背景にはネオコンの「中国封じ」を破壊してきた「日韓軍事同盟」の不成立が実質的に突破されたとの軍事外交がある。安倍や取り巻きがその「中国封じ」目的の「日韓和解」を示唆すれば・・・

米国政府内部は錯綜している。オバマ共和党が送り込んだネオコン官僚の齟齬である。オバマの本音は「日中韓の三国FTA」を成立させ12月31日に成立する「ASEAN共同体」との連携による「アジア共同体」の成立を願っているのだろう。だがペンタゴンネオコンは執拗に反対している。

安倍政権がオバマの本音にはでなく、ネオコン官僚とペンタゴンに追従して、日韓和解を中国を封じる「米日韓軍事同盟」が可能になったと解釈するなら、中国は猛烈な反撃をするだろう。そうならぬよう、朴槿恵は日本政府を注視し続けるだろう。

慰安婦問題で日本が責任認定 「法的責任」は曖昧(朝鮮日報
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/12/28/2015122803132.html
慰安婦問題 安倍首相「心からの謝罪と反省」(朝鮮日報
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/12/28/2015122802419.html
◆日本「責任痛感」 韓国「不可逆的に解決」=慰安婦問題妥結(朝鮮日報
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/12/28/2015122802466.html
➀岸田外相
「安倍首相は、『日本国の内閣総理大臣として』、慰安婦としてあまたの苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に心からの謝罪と反省を表明する」

慰安婦問題は、当時の『軍の関与』の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している」と、日本政府の責任を公式に認めた。

慰安婦被害者支援のために韓国政府が設立する財団に『日本政府が約10億円』の予算を拠出する。被害者補償には『被害者の名誉と尊厳の回復および心の傷の治癒』などが含まれる」。韓国政府が設立する財団は、慰安婦被害者46人に対して、医療サービス、健康管理、療養、介護などを行う予定。

②韓国社会の反応
・「日本政府の法的責任の明示」が不足;
岸田外相は「日本政府の責任を痛感する」と表明したが、日本国内でいつものように「道義的責任に言及したもの」と説明すれば、逆効果になる。

・「法的責任による賠償金」とは距離がある;
日本政府の法的責任の認定については、「責任を痛感する」とし、法的責任なのか、道義的責任なのかは明確にしなかった。被害者や関連団体の反発が予想される。

・「国連非難決議」に対応し日本政府が反省した;
政府当局者は「日本政府が責任を認めて謝罪と反省をし、このために予算を投じるとした」と説明した上で、「国際法的な責任を認めたものであり、国際社会もそのようにみるだろう」と話した。

・「最終的かつ不可逆的に解決」は日本側の歴史修正行動を封じる;
韓国政府は日本側が措置を着実に実施することを前提とし、「この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」と明らかにした。日本政府の予算拠出を前提に「解決された」ではなく「解決される」とした。

・「日本大使館前の慰安婦少女像」は韓国政府が関連団体との協議を行う;
韓国政府は日本側が撤去を求めているソウルの日本大使館前に設置された慰安婦被害者を象徴する少女像に関しては、「可能な対応方向について関連団体との協議を行うことなどを通じ、適切に解決されるよう努力する」

◆<韓日外相慰安婦会談>日本、軍関与の事実と政府責任を明確に(中央日報
http://japanese.joins.com/article/124/210124.html
➀「日本の民主党政権の『佐々江案』よりも進展した。

②明示的な法的責任はないが、総理大臣の資格で謝罪し、政府が責任を痛感し、政府資金で被害者支援することは法的責任の認定にともなう賠償である。

③歴代内閣の中で最も右側にあり、歴史認識において多くの問題点を見せてきた安倍政権を相手にこのような合意を引き出したことに意味がある」

◆元慰安婦女性「交渉結果、すべて無視する」=韓日合意に強い不満(朝鮮日報
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/12/28/2015122802631.html
➀日本側が10億円を拠出する計画に「我々は金がないからこうしているわけではない。罪があるならその罪に対する公式賠償をすべきではないか」

◆韓国次官が日本との合意内容を説明 慰安婦被害者は反発(朝鮮日報
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/12/29/2015122903560.html?utm_source=twitterfeed&utm_medium=twitter
➀被害者たちは「事前協議なくなされた合意を受け入れることができない。公式謝罪と賠償を受けなければならない」と声を高めた。

②ユ・ヒナムさん「大きな待遇を受けようとして言っているのではない」
③キム・グンジャさん「被害者は私たちなのに政府がなぜ勝手に合意するのか。私たちは認めることができない」
④イ・オクソンさん「こっそりと協議を進め、もてあそんでいる。わが政府が慰安婦被害者を売り飛ばした」

⑤被害者の意見を聞いた趙次官
「重く深く心に刻んだ。被害者は自分たちなのになぜ政府が合意するのかというのは当然だ。今年だけで9人が亡くなり、最も重要なのは時間という要素だと考えたため、生存されている間に100%満足ではないとしても日本政府代表から公式謝罪を受け、責任が認められたことが合意の意味だ」
「おばあさん方が喜んで満足する返事を差し上げられず申し訳ないが、これが終わりではなく新しい始まりという考えで名誉が完全に回復する日まで政府が最大限努力する」

⑥ナヌムの家の安信権所長は「被害当事者が同意していない合意は話にならない。法的に違憲の可能性もあり、国際社会で認められないと思われる」。

慰安婦問題の記憶遺産申請「不参加」 韓国が否定(NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151229/k10010356481000.html
➀岸田外務大臣「中国が韓国などに呼びかけて慰安婦問題を巡る資料を共同でユネスコ記憶遺産に申請の準備を進めているが、韓国が加わることはないと認識している」

②韓国外務省報道官「日本とそうした合意の事実はない。慰安婦問題の被害者が記録したものを『記憶遺産』に申請することは、韓国内の民間団体が主導して進めている」

③だが、今後中国の申請に加わる動きが具体化した場合、28日の合意「国際社会において慰安婦問題で互いに非難・批判することを控える」に反するという指摘が出る可能性。
※犯罪の再発を防ぐためには歴史記憶を再生し持続させねばならない。これは日本に対する批判でも非難でもない。

◆ロサンゼルス近郊のグレンデール市の「慰安婦像」設置推進団体、日韓合意を非難し像撤去を拒否(TBS)http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2668995.html
➀「人々が過去の過ちを理解して学び、二度と同じような間違いをしないためにも、日本政府は積極的により多くの像の設置に寄与すべきです。なぜ撤去する必要があるのでしょうか」

②合意そのものについても、「河野談話より後退している」

◆台湾 元慰安婦への謝罪など求める 日韓合意受け(ANN)
http://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000065330.html
➀馬総統は29日、「日本に対し、韓国と同じような措置を求め、台湾の元慰安婦に謝罪や賠償を行うよう要求する」


………(2) 欧米の論評………

◆Japan will pay $8.3m into a fund for surviving South Korean victims of a system of forced prostitution in WWII(FT)
http://on.ft.com/1NL40Np
➀日本政府はWWⅡにおいて日本軍による強制売春の罪を認め、被害者への補償基金に10億円を拠出

◆Details of the landmark deal between Japan and South Korea to settle the World War II sex slave issue(AP)
http://apne.ws/1UdRwiU
国粋主義者安倍晋三首相がWWⅡでの性奴隷の生存者に対する10億円の基金を出すことで韓国に勝利した。国家責任は厳密には認めず、道義責任だけの1995年と同じ趣旨で、変わったのは基金を民間から政府に変えたこと。

◆South Korea, Japan agree to irreversibly end 'comfort women' row(ロイター)
http://www.reuters.com/article/us-japan-southkorea-comfortwomen-idUSKBN0UB0EC20151229?feedType=RSS&feedName=topNews&utm_source=twitter
➀韓国と日本は、日本が「慰安婦」と婉曲的に語る、戦争時の慰安所で働くことを強制した問題を解決するために、月曜日に画期的な協定に達した。長い間隣人間を悩ました問題だった。

②拡大する中国と予測不可能な北朝鮮に直面する米国は、アジアの二つの米国同盟国の関係改善を切望し、日韓の合意を歓迎した。これによって、1年前に調印された米韓日の三国軍事機密情報の共有が実効可能になるからだ。

③安倍は、東京の記者に、『日本が謝罪し、その自責を表明したが、未来の日本世代はもう謝罪し続ける必要が無い。この問題を次世代に引きずらせることをすべきでない。私が8月15日にWWⅡ終戦70周年談話で述べた通り、今後、日本と韓国は、新しい時代に入る』と言った。

④安倍は性奴隷を強制した日本軍の犯罪と日本政府の責任を認め、心の底からの謝罪と償いを約束した。
Japan was "painfully aware of its responsibilities" for the affront to the women's honor and dignity. "Prime Minister Abe expresses anew his most sincere apologies and remorse to all the women who underwent immeasurable and painful experiences." (岸田外相)

⑤国連の潘基文事務総長も和解合意を歓迎した。日韓両政府はこの和解は「最終的な解決であり、後戻りを禁じる合意」であると表明した。日本は慰安婦問題にとどまらず、歴史認識問題でも「犯罪性の認識と国家責任の否定」をむしかえすことができなくなった。

⑥20万人といわれる性奴隷犠牲者のうちで、「志願」した女性は極少数。だが日本はその一握りをもって、全体を「売春」商売女だと言いつのってきた。韓国でも言い出しにくい社会環境にあったから、名乗りを上げた元「慰安婦」は238人に過ぎず、生き残りは46人、平均年齢も89歳になった。

⑦ソウルの日本対館前に設置された「慰安婦を象徴する少女像」は刺激的で強烈な抗議のシンボルであった。韓国政府は、彫像を取り除くことに合意しなかったが、日本の懸念に対処するためにそれを組み立てた民間組織と対策を協議すると約束した。

◆UN chief praises Japan-Korea 'comfort women' accord(DW/AFP)
http://www.dw.com/en/un-chief-praises-japan-korea-comfort-women-accord/a-18946494?maca=en-rss-en-all-1573-rdf
潘基文国連事務総長は「戦時性奴隷問題」で、日本政府が公式に謝罪し、日韓が和解したことを歓迎する声明を発した。とりわけ、その合意が「最終的で、後戻りを禁じる」内容であることを極めて重視しているとのべた。

②日本政府がWWⅡにおいて日本軍が設置した売春宿に韓国女性を強制によって追い込んだことを公式に認め謝罪したからだ。東京は謝罪金として10億円を拠出する約束をした。これらの安倍政権の国際約束はアジアの新時代を加速させるだろうと国連事務総長は述べている。

◆日韓慰安婦問題「処理」に関するドイツZDFでの報道
http://echoechanges-echoechanges.blogspot.jp/2015/12/zdf.html
➀20万人の女性を戦時性奴隷にしたナチスの東洋の朋友日本は、敗戦後も本質的な謝罪を拒否してきた。その日本が韓国に対して「謝罪」した。

②安倍が謝罪したと岸田に言わせたが、それは中国と闘争している安倍政権の大切なパートナーに韓国を引き戻すための、所詮はパワーポリテックスに過ぎなかった。性奴隷被害女性たちの心の痛みも消えず、怒りが燃え上がるだけだ・・・

※実際、『もうさっさと慰安婦問題なんか謝罪して、韓国を日本のパートナーに引き戻して、日韓で中国をやっつっけなければならぬ』と、死んだ安倍の外交指導者である日本会議系の元大使が死ぬ直前に発言していた。

◆'Comfort women': Japan and South Korea hail agreement(BBC)
http://www.bbc.com/news/world-asia-35190464?OCID=twitterasia
➀日本政府はWWⅡにおける「慰安婦性奴隷」を公式に謝罪し、支援基金10億円の拠出を約束した。

WWⅡで20万人の女性が日本軍の性奴隷にされたと見積もられている。その多くは朝鮮人女性であったが、中国、台湾、フィリピン、インドネシアでも犠牲者が多数でている。

③勇気をだして名乗り出ることができた被害者は200人ほどしかない厳しい社会環境であったが、韓国では46人が生存している。朴槿恵大統領は生存者が90歳を超え、屈辱と精神的苦痛から解放するための猶予はなくなったと謝罪を求めてきた。

朴槿恵大統領はまた、この問題が解決されないなら、次世代にまで日韓関係に重いしこりを残し、ヘイト事件を持続させるだろうと警告もした。

⑤日韓合意項目
・日本政府は元慰安婦の生活援助と精神のケアに10億円の基金を拠出
・日本国の総理大臣として「心から謝罪」し、「深い責任」を表明する
・日本政府がこの約束を忠実に履行するなら、韓国政府は「最終的で、後戻りしない」合意とする
・韓国政府は日本大使館前の「慰安婦少女像」について建立した民間組織と協議する
・日韓両国は、国際会議や国際世論で「慰安婦性奴隷問題」に関して相互批判を慎む

⑥BBCは「元慰安婦」の方々にインタビューした;
「私たちはお金を求めていない。私たちの心は戦後も傷つけられ続けている。その謝罪と責任を取る実際行動が欲しいのです」「私たちは人間としての基本的人権を奪われた生活を強制された。いかなる謝罪や賠償でも心の傷が癒されることは無い」

⑦そして、韓国では「日本政府は真実の人道主義者ではなく、国連非難決議と米国の圧力に屈しただけであり、日本政府の謝罪が本物であるか疑わしく、文章も不誠実である。10億円の拠出も「賠償金」ではなく「人道支援」と言っているではないかと批判がある。

⑧1995年の基金は、「民間」基金の形式に拘ったものであった。日本政府は日韓請求権協定で個人賠償まで完結しているという立場を変えないのだ。政府間なら「最終的で不可逆的解決」は有り得るが、個人と日本政府間にはそれは有り得ない。民主主義なら個人の考えを政府は束縛できないからだ。

◆【社説】The Guardian view on Japan, South Korea and ‘comfort women’: one step towards healing the wounds of the past(ガーディアン)
http://www.theguardian.com/commentisfree/2015/dec/28/the-guardian-view-on-japan-south-korea-and-comfort-women-one-step-towards-healing-the-wounds-of-the-past?CMP=twt_gu
➀日本人は「慰安婦」と呼ぶ。それは日本の責任を軽減するために、日本人が発明した言葉である。朝鮮人を中心とする20万の女性を日本軍が設置した「売春宿」に連れ込み、性奴隷にした当人たちが発明した言葉なのだ。

②この犯罪性を否定しようと、日本政府が「強制された性奴隷」と呼ばず、「売春慰安婦」と執拗に言い続けて、それは数十年間の終わりなき政治的な外交論争の主題になってきた。日本政府が否定すればするほどに、アジアの被占領国は責任を認めさせ賠償させる意思を強めた。

③敗戦後70年が過ぎ去り、やっと日本政府の首相が、軍の犯罪性を認め、女性たちが受けた痛ましい経験に深く謝罪し、日本政府の責任を明確な言葉で表明した。だが日本政府は10億円を賠償ではなく生活支援基金に拠出することに拘って、犯罪性を軽減させようとする意識を色濃くにじませた。

④中国と北朝鮮がこの日韓合意を達成させる主役であったと皮肉を言うことができる。膨張する中国と先の読めない北朝鮮の脅威に直面した米国は軍事同盟国である韓国と日本の緊張によって軍事同盟が無力化していることに恐れを抱いて、強烈な介入を両国にしたのである。

⑤そして、外交評論家は日本の謝罪の誠実性を疑っている。過去にも同情や謝罪に対して「法的な責任は約束していない」と修正することが繰り返されたからである。その修正は韓国人には受け入れがたく、修正される度に韓国世論は対日感情を悪化させた。

⑥今回の合意においても、「賠償」ではなく「道義的協力」とされたことが、日本はまた認識や発言の意味を修正する余地を作ったと誰でも感じるからだ。逆に、日本側では1億円で十分なのに10億円は払い過ぎだと言い立てるかもしれない。

⑦それでも今回は明確な進歩があった。今後の日本がWWⅡ時に植民地化したアジアの各国と真の友情関係を打ちたてるためには、今回の「性奴隷」と同様の真摯な反省と謝罪が必須であると証明されたからだ。

⑧さらに重要なことは、村山や河野といったリベラルな首脳級とではなく、ナショナリズムの炎を吹きつけることで知られていた極右安倍首相に言わせたことである。

⑨今年初めにメルケルが日本を電撃訪問し、ドイツ同様の真摯な謝罪による隣国との真の友情関係を構築することが世界の繁栄と平和に不可欠であると諭した。彼女はオバマと協議して、欧米の代表として安倍に直談判したのだと言われている。もちろん米国も強いプレッシャーをかけた。

⑩外交協定というものは国民感情を宥めるには程遠いものだ。
数年前に韓国の女性歴史学者が、「貧しかったが故に、売春を自発的に申し出た」と記述し、その記述が「慰安婦」という「快適さを提供する商売」と並置されるから、物議をかもしている。

⑪「慰安」=快適を与えるとはあまりにもひどい婉曲表現であり、疑う余地のない「苦しみ」を消し去ろうとする邪悪。
これらの女性の経験は、断崖の淵に立たされ、「自発的」に言わせるという、残忍な手法なのだ。

⑫この事実と責任を認識することが今回の協定の根幹でなければならない。
88歳のヨーさんは言う、『私たちは基本的人権を奪われた生活を送ってきた。それは永い間待ち続けていたこと』