米国のフラストレーション

※敬称略 ◆は参照報道、①〜はその要点

◆Trump may be making the headlines, but China remains biggest challenge for US(BBC
http://www.bbc.com/news/world-us-canada-35040851?ocid=socialflow_twitter
オバマは中東から手を引きたがっている。共和党の前任大統領によって作られた泥沼の後始末などに関わりたくない。巻き込まれれば泥を被るだけで、歴史に業績を残せない。だが、ISがパリで無差別テロを起こし、米国でも同系列の無差別テロが起こり、トランプが騒いで、中東関係を複雑化させた。

②だがこれはオバマにとって短期間の舞台でしかないだろう。オバマにとって中長期の緩むことの無いフラストレーションは中国との摩擦にあるからだ。だから今日のヘッドラインニュースは南中国海紛争になる。それは次の米国大統領を翻弄し続ける可能性もある。ブッシュがオバマを悩ませたように。

オバマは中東から一切手を引き、アジアに全精力を注ぎこんで、アジアの覇権を再確立し、自分の業績として歴史に残そうと考えた。ブッシュの中東政策は全面戦争というハードであったが、オバマのアジア回帰はソフトな覇権戦争であったはずだ。

④2年以上もかけてオバマはそのためにTPPを構築してきた。資本がフェアーに競争し、国々を跨いで移動自由な世界標準を標榜していたが、それは建前に過ぎず、アジアの覇権を再確立するためには、建前などどうでもよくなって妥協を重ね、アメリカらしからぬ経済拘束体となった。

オバマはTPPで中国をソフトに包囲し、TPP国をして中国にNOと言わすことの積み上げて、中国を飲み込もうとしたのだが、中国の経済成長は驚異的な速度で、IMF統計では米国と肩を並べてしまった。飲み込むには大きくなりすぎた。そして米国IT企業すら中国人が内部で活躍する。

⑥中国は米国のように世界に軍事力を誇示して従わせるような野望は持っていない(その点は元帝国や唐帝国と違い、宋や明と同じ性格)。だが、米国の意図を忖度した日本とフィリピンとベトナムがソフトな戦いにハード(戦争危機)な戦いを持ち込んで、中国をして南中国海の前線に軍事拠点を建設させた。

⑦米国は引くに引けない窮地に追い込まれたのだ。それがイージス艦やB52に挑発行動をさせ、スパイ機UP−8を配備して南中国海の中国前線基地を常時監視し牽制する事態へと追い込んだのだ。

⑧これは中東以上に危険である。二つの核兵器保有する経済超大国がぶつかれば、人類は破滅する恐れすらあるからだ。中国は南中国海の前線基地を完成させ、同時に全世界の途上国に巨額の開発支援をおこない、ロシアの加勢もあって、TPPというオバマのアジア回帰を逆包囲するだろう。

⑨そのフラストレーションがオバマ政権内に募っている。中国は南中国海の前線基地建設を除き、あくまでもソフトパワーで押し通す。中国が米国にハードパワーをぶつける可能性は、明確な領海侵犯の撃退を除き深追いはない。問題の本質は米国政権がそのフラストレーションに耐えられない可能性だ。