米中の西沙紛争は中国の核ミサイル原潜をめぐる暗闘

(1) 南中国海の全海域は台湾の領海(台湾)
(2) 米イージス艦の第2回西沙人工島侵入に海自イージス艦も関与
(3) 米中の西沙紛争は中国核ミサイル原潜をめぐる暗闘
(4) 米軍は嫌うが、米欧企業は中国に航空機組立工場
※敬称略 ◆は参照報道、①〜はその要点


………(1) 南中国海の全海域は中国の台湾の領海である(台湾行政府)………

南シナ海領土論争、台湾は中国の味方につくか?(sputnik)
http://jp.sputniknews.com/opinion/20151030/1095890.html#ixzz3q3fovSpw
中華民国(台湾)外交部声明
「歴史、地理または国際法の観点から南沙諸島西沙諸島長沙諸島および東沙諸島はその周辺の水域も同様、中華民国の固有の領土および領海の一部である」
中華民国国際法に準じてこれらの島およびその領海に対するあらゆる規則を保持している以上、中華民国政府はこれらの主権に対するいかなる要求も、それらが他の国によって占領されることも、その理由や領土要求ないしは占領の際に用いられるやり方の如何によらず認めない」

②これは1947年、蒋介石政府がこの地域の地図に引いた九段線だ。米国は19世紀末から1945年まで日本の掌握下にあった領土の一部を渡す構えだった。たとえば釣魚諸島(尖閣諸島)もその一部だ。ところが1949年、中国共産党政権が樹立した。

中華民国蒋介石行政府は毛沢東の軍を逃れて台湾に逃げ込んだ。米国は釣魚諸島を、反共産主義で忠実な連合国となった日本に渡した。その後蒋介石、続いて中国共産党も釣魚諸島、沖縄、南中国海における無数の島々、群島の領有権を主張したが、米国は支持しようとはしなかった。

④1970年代の初め、ソ連抑止を目的に米中が国交回復した時でさえ、米国は中国の共産党政権を中国で唯一の合法政府と認め、台湾を国連から「脱退」させ、中国を常任理事国に迎え入れた。米国は台湾を国とは認めていない。

⑤台湾が南中国海の状況に介入してきたのは、この状況の熱を冷まそうとしてのことだ。なぜなら今、ここは中国だけの問題ではないからだ。それにもし、仮に中国が米国の露骨な脅威に慄き、人工島の建設作業を中止してしまったとしても、南中国海の領土係争は消えては無くならない。

⑥この問題は南シナ海に接する、あらゆる国が台湾のいうように「平和と協力の海」とするため尽力し、解決せざるを得ない。このため米国の原子力空母も日本の駆逐艦もこのプロセスを阻害する悪事でしかない。

➆10月29日、米国は南中国海で日本と合同海上演習を開始。原子力空母「セオドラ・ルーズベルト」と駆逐艦「冬月」が参加。これより前、米ミサイル駆逐艦ラッセン」が南中国海の南沙諸島にある暗礁のひとつの12海里水域に侵入した。中国は滑走路を備えた人工島を建設している。


………(2) 米イージス艦による第2回西沙人工島海域侵入に海自イージス艦も関与………

◆米日が南中国海で合同演習(新華社
http://jp.xinhuanet.com/2015-10/30/c_134765658.htm
海上自衛隊は29日、日米海軍が南中国海で合同演習を開始したと発表、「海上自衛隊イージス艦ふゆづきは少し離れた距離から、中国の島礁から12海里内を巡航する米軍の2回目の行動に参加することで、日米同盟を強化し、南中国海に介入する日本の姿勢を国際社会に示す可能性もある」と強調した。

②だが、米軍に追従して軍事介入に及ぶのは日本だけらしい。欧州諸国の海軍は中国海軍との関係構築を模索しているからだ。

③フランスの護衛艦は水曜日、中国の南中国海の拠点、湛江に停泊し、海上の偶発的な遭遇に関する訓練への参加を予定。

④豪州のペイン国防相は29日、豪州海軍のフリゲート艦「スチュアート」、駆逐艦「アランダ」が、中国と豪州海軍の南中国海における合同演習に参加すると表明した。(ロイター)

⑤米国の行動は東南アジアの同盟国を喜ばせたが、中国に対抗する行動に積極的に参与したがる国はほとんどない。中国人がこれらの島嶼を軍事化することに、口実を必要としているとは思えない。(FT)


………(3) 米中の西沙紛争は中国の核ミサイル原潜をめぐる暗闘………

◆海南建“堡垒” 未来能挑战任何人(環球時報
http://mil.huanqiu.com/observation/2015-10/7873231.html
①ロシア報道「中国は海南にミサイル原潜の“堡塁”として空母2隻の基地を建設」

②中国の核ミサイル原潜の全てが水深のある南中国海に展開し海南島を母港にしている。核ミサイル原潜を護衛するためにはイージス艦と空母が有効である。中国は4〜6隻のイージス艦を海南に配備し、さらに建造を進めている。訓練空母遼寧も時に停泊するが、正規空母2隻の建造が進んでいる。

③核ミサイル原潜が巡航するには水深が必要で、黄海も東中国海も浅く、中国が利用できる海域は南中国海の西沙諸島南沙諸島の間しかないのです。米国は西沙諸島を狙った理由に「満潮時水面下岩礁」をあげますが、それはこじ付けで、海南島と核ミサイル巡航海域を遮断する位置だからです。

④米軍は海南島の核ミサイル原潜基地と空母基地の偵察を日常化させており、少なくとも5回の事件が露呈されている;

2001年、海南島沖12海里付近で米軍電子偵察機EP3と中国軍戦闘機が空中衝突
2009年、海南島沖で米軍海底調査船が中国軍から進路妨害され米イージス艦が出動
2013年、海南島の空母埠頭に向かう空母遼寧艦隊を米イージス艦が進路妨害し衝突直前で非常停船
2015年、米軍の最新鋭ステルス戦闘艦が西沙諸島に接近し中国のイージス艦が追い返した
2015年、米軍のイージス艦ラッセンが西沙の人工島沖を通過し比律賓が基地を持つ島に

⑤中国の潜水艦発射核ミサイル巨浪-2は大陸間弾道弾で、米本土を攻撃することができます(射程8600キロ)。改良型も試験中で更に長い射程(14000キロ、複数弾頭搭載)を持ち米東海岸も射程内なのです。

⑥中国で建造中の2隻の正規空母海南島を母港とし、南中国海を潜水して巡航する核ミサイル原潜の防衛任務につくでしょう。2隻の空母は電磁カタパルトを装備し、故に核空母であると英国軍事年鑑が推定しています。核空母は将来4隻に増え、中東からアフリカまで遠征することになるでしょう。

※中国が西沙の人工島に3千m級滑走路を建設しているのは、中国の核ミサイル原潜を哨戒する米国の潜水艦と哨戒機を寄せ付けないための前線基地に使用できるからでしょう。それが完成すると、米軍の潜水艦も哨戒機も遮断され海南島基地も偵察が困難化する、だから米軍は死に物狂いで突進した。

⑦来年になると西沙人工島の航空基地と軍港が完成し、海南島には遼寧が、更に2017年には2隻の正規空母駆逐艦隊が集結し、マラッカ海峡まで中国の空母と駆逐艦と潜水艦と哨戒機がパトロールすることになるでしょう。

※海自がF35戦闘爆撃機搭載可能な中型ヘリ空母を複数建造し、長時間潜航可能な潜水艦を開発し、イージス艦と対潜哨戒機を南中国海に派兵し、米軍と共同作戦を行う目的は中国の核ミサイル原潜の封じ込めにあるのです。「尖閣」と言うちんけな島嶼が目的ではありません。


………(4) 米軍は嫌うが、米欧企業は中国に航空機組立工場………

エアバスは組立工場を中国で稼働させ、100機の契約。中国はロールスロイスに出資しジェットエンジンの購入を安定化させる。ボーイングも組立工場を中国に建設し、300機を契約。

米軍が中国の核ミサイル原潜を極度に警戒している一方で、ボーイング社は習近平主席を自社の飛行場に迎え、B737を中心とする300機の契約と、その組み立て工場を中国に建設する契約を9月に結んだ。米軍がいかに焦ろうと、民間は米中協力体制で米国企業を支えようとしている。

10月には、習近平主席が英国を公式訪問し7兆円規模の経済協力協定。その中にはロールスロイスジェットエンジン事業に出資する契約も含まれている。中国の戦闘機はロシア製エンジンかそのライセンス生産であるが、一部の戦闘機はロールスロイスエンジンを搭載している。

10月30日、メルケル首相が北京でエアバス100機の契約に立ち会った。エアバスは既に組み立て工場を中国に建設して稼働している。

最近のボーイング機は機首と翼の付け根だけを米国内で生産し、翼は三菱重工が、胴体は中国が製造している。それが進んで、中国にはエアバスボーイングも組立工場を建設し、英国のロールスロイスに出資してエンジンの輸入を安定化させる。米軍が最も嫌う体制が着々と進んでいる。

・・・F35戦闘機の製造に三菱重工が参加していない理由が憶測を生んでいる。三菱重工東レボーイング機の主翼を製造し、中国製の胴体と米国で接続している。そのボーイングが中国と300機の契約を結び、そのための組立工場を中国に建設する。ロッキードのF35に肩入れしにくい状況。

ボーイングとの協業の巨大さからロッキードと組めない三菱重工はF2の後継機として独自にステルス戦闘機を開発し始めたという。