(再編)超大国アメリカのチェスは終わった、世界は多極化した

(1) 中国牽制;ASEAN分断にフィリピン、上海機構分断にトルクメニスタン
(2) 三位一体;TPP、安倍中央アジア3兆円、米軍『軍事航行の自由作戦』
(3) 中国の反応;『航行の自由』は偽りの命題、米国には餓鬼大将と小心な我儘が同居
(4) 米国の論評;国際法の無視を放置すれば、米国の抑止力が疑念に晒される
(5) 西側の論評;超大国米国の支配構造が、多極化体制に取って代わられた
※敬称略 ◆は参照報道、①〜はその要点

………(1) 中国牽制;ASEAN分断にフィリピン、上海機構分断にトルクメニスタン………

安倍はネオコンに入れ知恵されるままに行動し、悲惨な孤立を招いたことを認識できない。むしろ大成功だとご満悦の様子すらある・・・

中国脅威論を吹聴しASEANを分断するために南中国海に対立を持ち込む。中国と対立しているフィリピンに軍事援助し自衛隊を派遣し、ベトナムにも核発電や新幹線やODAで中国から離反させるという。

フィリピンは中国や香港や台湾との経済関係がやせ細り、期待した日米からの基地使用料で外貨準備を支えようと期待したがそれも不可能だった。ベトナム共産党が北京に謝罪に出向いた。

今回の安倍の中央アジア訪問も全く同じ狙いである。ロシアと対立するトルクメニスタンに2兆2億円の経済援助をし、日本の同盟国にする。同国のGDPの半年分という巨額で。ウズベキスタンも100億円借款ロシアから分断する・・・安倍の狙いはロシア封鎖ではなく中国封じ込めであったはずだが?

お粗末な現状認識である。トルクメニスタンの輸出の9割は中国向けであり、日本が援助して増産する天然ガスも日本に送る術もなく、全量がパイプラインで中国に輸出される。ウズベキスタン上海協力機構の加盟国で抗日戦勝70年軍事パレードに軍を派遣し大統領も隣席している。

◆首相、中央アジア5カ国歴訪 資源確保・中国けん制狙う(日経)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS23H47_T21C15A0PP8000/?dg=1
◆首相「中国に毅然と対応」ウズベキスタン首脳会談で(朝日)
http://t.asahi.com/ikyw
◆中国懸念を共有 日・ウズベキスタン首脳会談(テレ朝)
http://5.tvasahi.jp/000061211?a=news&b=np
トルクメニスタンに2兆円超の協力で合意 安倍総理(テレ朝)
http://5.tvasahi.jp/000061132?a=news&b=np


………(2) 三位一体;TPP、安倍中央アジア3兆円、米軍『軍事航行の自由作戦』………

安倍は中央アジアで3兆円をばらまいた。同時に米軍は南中国海で軍事行動を起こした。ワシントンではインドネシア大統領にTPP参加と南中国海懸念表明をさせ、北京では全人代。11月には環太平洋首脳会議でオバマ習近平の対決か。米国は中国が南中国海から手を引くまで軍事行動を繰り返す。

米国がTPPを乗っ取った意図が露呈してきた。オバマのアジア回帰は二面作戦であり、TPPで排他的な経済圏で囲み、日本の企業投資と若者の税金を先食いしたばらまきによって、今度は中国の「一帯一路」経済圏を乗っ取る魂胆だろう。並行して「太平洋軍事条約」を強要し、中露を封じ込める作戦。

オバマは南中国海で中国が領海を主張する海域にイージス艦を侵入させた軍事行動を『軍事航行の自由作戦』と公式表明した。中国牽制が目的であるが、それを隠すために「全世界の如何なるところでも、必要があれは軍事介入する」とカーター国防長官が議会証言した。

日米がTPPによって中露を封じ込めるための大きな土台の構築に目途をつけたことで、オバマの鼻息が荒くなった。

TPPの次は『軍事航行の自由作戦』で米国に従わない国を海洋で威圧し、さらに『安倍のばらまき外交作戦』でASEAN中央アジアを中露から分断する。『TPP』『軍事航行の自由作戦』『安倍ばら撒き外交』は三位一体だ。

◆米『軍事航行の自由作戦』、南シナ海で作戦継続=対中関係は「極めて重要」−米国防長官(時事)
http://www.jiji.com/jc/c?g=int&k=2015102800051&utm_source=twitter&utm_medium=jijicom&utm_campaign=twitter
①カーター米国防長官は27日、上院軍事委員会の公聴会で証言した;
「南中国海の中国人工島12海里への侵入は今後数週間から数カ月のうちにも作戦はあるだろう」
国際法が許すあらゆる場所で、必要があればいつでも、飛行、航行、作戦を行う」

②シュルツ大統領副報道官も27日、記者団に;
「航行の自由作戦は、国際法下で全ての国に保障されている海と空の権利と自由、合法的な使用の保護に役立つ」と主張した。


………(3) 中国の反応;『航行の自由』は偽りの命題、米国には餓鬼大将と小心な我儘が同居………

中国外交部は激しく抗議した
「米軍艦の行為は中国の主権と安全を脅し、暗礁島の人員と施設の安全に危害を及ぼし、海域の平和と安定を損なった。中国側には断固として自国領土の主権と安全と海洋権益を護る合法的権利があり、いかなる国家の挑発にも、中国側は断固として対応する」。

新華社は社説で米国を非難した
「先月、オバマ大統領は『双方は、意見の相違を認識しあい、問題を管理する能力があると信じ、南中国海問題などで良性の循環を展開するために、対話によって全てを調整する能力がある』と表明した。その発言が耳に残っているにもかかわらず、米国は南中国海の暗礁島に軍艦を侵入させた」

「南中国海の『航行の自由』を米側は大義名分としているが、それは『偽りの命題』である。事を荒立てたい人が世界に居るが、中国人は事なかれ主義ではない。南中国海の諸島は中国領土で、祖先が残したもの。いかなる人であろうとも、中国の主権を侵害することを、中国人民は承諾しない」

楊毅海軍少将
「今回の米軍行動は中米関係を著しく損ない、中国は人工島の建設を加速し、更に軍事基地化する大義を与えることにしかならない。中国の尊厳に対する悪質な挑戦である」
「『航行の自由』は民間船舶の話。軍用船や軍機には領海どころか経済専管水域でも有り得ない。米軍の『航行の自由』は偽りの看板に過ぎない」
「米国には『大口をたたきたがる心理状態』と『子供の我儘』が同居している。米国は口実を探して私達の足並みを混乱させるが、私達の足どりは絶対に止まらず、黙って怒りに堪えることもない」
「もし米軍が南中国海の内部攪乱を常態化させるなら、アジア地域での軍事紛争は避け難い。米国は軍事紛争への道を歩み始めてしまった」

◆外交部发言人陆慷就美国拉森号军舰进入中国南沙群岛有关岛礁邻近海域答记者问(新華社
http://news.xinhuanet.com/mil/2015-10/27/c_128363288.htm
中国外交部報道官の陆慷は、米軍艦に中国南沙諸島侵入について記者質問に答えた;

①「米軍艦は中国の許可なく南沙諸島に侵入し、中国の暗礁島に接近した。中国は法に基き米艦艇を監視し追跡し警告した。米軍艦の行為は中国の主権と安全を脅し、暗礁島の人員と施設の安全に危害を及ぼし、海域の平和と安定を損なった。中国側はこの威嚇に強烈なる不満と断固とした反対を表明する」

②「中国側が再三強調したように、中国は南沙諸島と近隣海域に争う余地の無い主権を持つ。中国の南中国海での主権はポツダム宣言による権利と長期の歴史過程で形成されたものであり、歴代中国政府はこれを堅持してきた」

③「中国側が進める自国領土で建設は、主権範囲内での事であり、いかなる国家とも関係がなく、影響も及ぼさない。各国は国際法の民間船航行の自由と、軍艦及び航空機の事前許可による無害航行を実行すべきだ」

④「中国側は南中国海で国際法に準拠して一貫して各国の民間船の航行の自由を尊重してきた。だが中国の主権を侵害する不法占拠や軍艦・軍機の偵察と示威行動は中国の主権と安全を損なう」

⑤「中国側には断固として自国領土の主権と安全と海洋権益を護る合法的権利があり、いかなる国家の挑発にも、中国側は断固として対応する。私達は引き続き厳密に海域の海と空を厳格に監視し、必要に応じて全て措置をとる」

⑥「中国側は米国政府に要求する; (1) 今回事態の責任を明らかにするための厳正なる交渉 (2) 米軍は過ちを認め謝罪し態度を改め問題行動を中止せよ 中国の領土主権と安全を損なう挑発を繰り返すなら、中米関係は深刻に損なわれ、アジアの平和と安定をも損なわれる。全ては米軍の責任だ」中国外交部

◆国际时评(社説):美国南海荽耀武力不负责任(新華社
http://news.xinhuanet.com/mil/2015-10/27/c_128363260.htm
①米軍艦が南中国海の暗礁島の12海里に侵入した。米国人は国際世論で騒ぎたて、遥かな南中国海で威嚇し、波風を立てる西太平洋のならず者。中国人民は憤っている。責任の全ては米国にある。

②先月、中米の両国指導者は南中国海問題について建設的な疎通を維持するという共通認識を成立させた。オバマ大統領はその時「双方は、意見の相違を認識しあい、問題を管理する能力があると信じ、南中国海問題などで良性の循環を展開するために、対話によって全てを調整する能力がある」と表明した。

③米国大統領のその発言が耳に残っているにもかかわらず、米国が南中国海の暗礁島にまで軍艦を侵入させたことに不思議な思いを隠せない。このような挑発的な挙動は南中国海とその地域の平和と安定に責任を負わないだけでなく、国際大義と米国自身の矛盾の両方に対する深刻な開き直りだからだ。

④南中国海の「航行の自由」を米側は大義名分としているが、それは「偽りの命題」である。周知のように、南沙諸島は2000年前の昔から中国領土で、中国側は歴史と法律の原理の根拠を十全に持っています。そして、南中国海の各方面は共に努力しており、全体情勢は安定的なのです。

⑤南中国海は中国の貿易と交流が行き来する重要な通路。中国はいかなる国家よりも南中国海の平和と安全を必要としているのです。それで中国は、ASEAN国家との全面的で実質効果のある《南中国海各方面の行動宣言》を成立させ、その原則下に《南中国海の行動規範》を制定する協議を進めます。

⑥事を荒立てたい人が世界に居るが、中国人は事なかれ主義ではない。習近平主席は最近ロイター通信の取材を受けて、南中国海の諸島は昔から中国領土で、これは祖先が残したものです。いかなる人であろうとも、中国の主権を侵害することを、中国人民が承諾することはありえない。


………(4) 米国の論評;国際法の無視を放置すれば、米国の抑止力が疑念に晒される………

中国軍幹部「米軍行動は中国が人工島建設を加速し、更に軍事基地化する大義を与える。無謀で危険で無責任な行動だ。米軍は大口の餓鬼大将と癇癪持ちの小鬼という心性を露呈した。その心性が常態化するなら、アジアでの軍事紛争は避け難い」

環球時報「中国はこの悩み事を静かに受け止め、理性的に処理しなければならない。米軍の戦闘艦が通り過ぎて消えてしまったのならそれでよし。だがもし戦闘艦が何か別の行動を起こすために留まるなら中国軍は電波妨害を実施し、上空で戦闘機を旋回させ、軍艦を追突させて退去させる」

CSISの中国専門家「一方的な行動に対して何もしないことおよび黙認の積み重ねは海の国際法を無視する状況を産み出すだろう。それは地域の安全を補償する者としての米国の信頼性を徐々に蝕み、アメリカの同盟国の間に、米国の約束と抑止力に対する疑念の種をまくだろう」

ペンタゴン高官「今回の米軍行動は南中国海で中国が主張する主権に挑戦する一連行動の“序幕”。数週間あるいは数か月間に更に何度も行動を起こし、ベトナムとフィリピンが南沙に建設した軍事施設も防衛巡視する。この軍事行動は経常的であり、“中国だけに対する軍事行動ではない”」

米国政府は自らの犯した過ちに逡巡しながらも、行動の正当化を反省する気配はない。ただ、中国との経済交流の停止と軍事衝突を恐れている。

◆China says U.S. naval destroyer sailing close to Chinese-built island damages peace and stability(WP)
https://www.washingtonpost.com/world/china-says-us-naval-destroyer-sailing-close-to-chinese-built-island-damages-peace-and-stability/2015/10/27/25b254b4-7c7a-11e5-beba-927fd8634498_story.html?tid=sm_tw
①米国政府の意図は、南中国海の航行の自由をデモンストレーションすること、そして中国が環礁の周りに築いた人工島は領土領海と認めないと示威することにあったと軍事専門家は言う。

②それはまた、北京が海洋に膨張する政策を進めることに神経質な同盟国を安心させることが目的である。誘導ミサイル駆逐艦USSラッセンは、海軍哨戒機(P8とP3)に誘導されて接近したと、匿名の米政府高官が話している。

③南中国海では、12ある島の全てを比律賓、越南、マレーシア、台湾が占拠し、ブルネイ岩礁を占拠。しかし中国はその全てを2千年前からの中国領であると主張し、それらの国に返還を要求。米国は中国にその要求取り下げを要求したが、関係のない米国の不法な干渉で、中国への侮辱と反論。

④2014年に中国は大規模な島嶼開拓計画を実行に移し、米国および領土を主張する国は、平和と安全を壊したと主張する。

⑤今週の海軍の任務は、先月ワシントンを訪問した習近平主席が誓約した「北京は島を軍隊化しない」が嘘か誠かを実地確認することも意図されている。中国はFiery Cross環礁ですでに滑走路の工事中であり、Mischief環礁でも建設される可能性があるとCSISの専門家は言う。

CSISの中国軍事専門家ボニー・グレーサーは「米海軍の行動が中国の建設を止めることはないだろう。フィリピン、ベトナム、マレーシア、台湾はすでにSpratlysに滑走路を持っている。それが中国に建設を促進させる動機になっているからだ」と説明する

⑦楊毅海軍少将は「今回の米軍行動は中米関係を著しく損ない、中国は人工島の建設を加速し、更に軍事基地化する大義を与えることにしかならない」と忠告し、「無謀で危険で無責任な行動だ。米軍は大口をたたく兄貴と癇癪持ちの餓鬼という心性を露呈した」と指摘し、「もしもその心性が常態化するなら、アジア地域での軍事紛争は避け難いが、米国は軍事紛争への道を歩み始めてしまった」と嘆いた。

⑧環球時報は述べた「中国はこの悩み事を静かに受け止め、理性的に処理しなければならない。米軍の戦闘艦が通り過ぎて消えてしまったのならそれでよし。だがもし戦闘艦が何か別の行動を起こすために留まるなら中国軍は電波妨害を実施し、上空で戦闘機を旋回させ、軍艦を追突させて退去させる」。

CSISの中国専門家は述べた「一方的な行動に対して何もしないことおよび黙認の積み重ねは海の国際法を無視する状況を産み出すだろう。それは地域の安全を補償する者としての米国の信頼性を徐々に蝕み、アメリカの同盟国の間に、米国の約束と抑止力に対する疑念の種をまくだろう」


………(5) 西側の論評;超大国米国の支配構造が、多極化体制に取って代わられた………

(ロイター)米国の軍事行動は中国を刺激し強烈な反発を湧き起こすだろう。中国のネットには「退去を命じ、応じなければ開戦だ」「進撃し戦闘し撃沈せよ」「打倒美(米)帝国主義」などのコメントが並ぶ。中国政府が軍事基地建設を加速させる結果にしかならない。

(FT、DW、RT)第18期第5回全人代を揺さぶる目的であるが、軍事衝突のリスクを増大させる無謀な冒険だ。現在は警告声明だけであるが、もし米国がこのような軍事侵略を常態化するなら、米国の中国脅威論が南中国海で局地戦闘を発生させ、更には中米が全地球規模で衝突するだろう。

(John Wight―Independent, Huffington Post, Foreign Policy Journal等に寄稿し、BBCとRTのregular commentator)
米国がベトナム、マレーシア、台湾、およびフィリピンを扇動して南中国海に醸成された軍事衝突の危機は、米国を呆然とさせる多くの、軍用機に必要な十分の長さの滑走路を含む人工島を中国に建設させる結果を生んだ。

米国経済とは対照的に、中国経済が成長するにつけて、ワシントンは米国の世界支配体制を思い知らせる目的で、北京を軍事的に威嚇することの言い訳に南中国海の地域紛争を利用したからだ。中国経済の基盤が拡大するにつれて、その安全を保障する要求が高まるが、中国の軍事費率は抑制的で日本並みだ。

もっと重要なことは、中国が西洋の植民地にされ、その後の1931年から1945年の14年にわたって日本に占領され、いうまでもなく日本の残忍さと野蛮さの結果として味わった屈辱が、中国人全体の精神の中に存在し続ける、深くて全国的な傷跡を私たちは考慮する必要がある。

米国が日本とフィリピンを手下にして中国を侵略し始めている。最悪は日本に蹂躙され強姦され虐殺された悪夢の再来だ。だが今の中国は米国に匹敵する経済力とアジアでの軍事力を持つに至った。いかなる人であろうとも、中国の先祖が残した主権を侵害することを、中国人が承諾することはありえない。

長期にわたって米国は世界を巨大なチェス盤として眺め、米国の経済利益や戦略的関心だけで自由に操れる単なる駒と諸国家を見做すことに慣れ過ぎてしまったのだ。

だが、中国とロシアの海軍が米国の沿岸水域で軍事訓練を常態化させ、中国が人民元の操作によって世界経済をコントロールするようになるまで、私達は、米国が従属国と地域に蔓延らせた偽善と二重基準に晒され続けるだろう。

中国が西欧の植民地から自立し、もはや苛めることのできない存在になったことが非常に明確である。過去30年間米国が楽しんできた唯一超大国の支配構造が、多極化世界体制に取って代わられたのだ。

この多極化世界の産婆役は、混沌ではなく諍いでもなく、全ての国と州の権利と利益を実現するための外交交渉と、妥協と、相互敬意に向けさせることだろう。米国が君臨する同盟国とそれ以外の国を下に見る二層構造を終わらせようではないか。

◆海军官员:美国是找借口打乱我步伐 南海或陷入恶性循环(環球時報
http://world.huanqiu.com/exclusive/2015-10/7854203.html
◆'China no longer a Western colony & won't be bullied'(RT)
https://www.rt.com/op-edge/319958-china-west-us-pivot-asia/