米ミサイル駆逐艦が南中国海で中国の人工島に接近

(1) 予告報道から通過報道
(2) 中国外交部記者会見
(3) 環球時報新華社の論評
(4) WSJワシントンポストの報道
(5) BBC、ロイター、FT、RTの報道
(6) 日本政府に関する報道
(7) 中韓日首脳会談への影響
(8) 三位一体=TPP、安倍中央アジア3兆円、米『航行の自由作戦』
(9) (再掲)中国牽制;ASEAN分断にフィリピン、上海機構分断にトルクメニスタン
※敬称略 ◆は参照報道、①〜はその要点

………(1) 予告報道から通過報道………

◆U.S. destroyer to pass islands in South China Sea within 24 hours(CNN)
http://cnn.it/1Weq1WJ
①米軍は南中国海の中国人工島に駆逐艦を発進させた。今夜、通過予定。哨戒機2機が上空から誘導。オバマの許可は出ている

・・・この24時間前の報道が中国への「経済専管水域の可能性がある公海に軍艦を進めます」という事前通告のつもりなのだろう。B52に「尖閣海域」通過させたときも事前報道を行い、非武装だと報道していた。この言動で「釣魚が中国領土であると主張する」ことを米国は否定しなかったことになる。

◆米艦、中国人工島沖12海里に進入=国際水域と主張(時事)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201510/2015102700161&g=int
横須賀基地を母港とするイージス艦ラッセンが27日午前に、滑走路建設が進むスービ礁に侵入。横田の哨戒機P8AとP3も空中哨戒
②米国は「公海だ」と主張
③中国の反発は必至

横須賀のイージス艦と横田のP8が南中国海に侵入し、米軍が比律賓と越南に占拠させ軍事基地化している10島の直接防衛任務に就いたとみられる。最悪は米中間が途絶する可能性。そうなると中国、ASEAN、日本のGDPは一挙に20%縮退するかも。米国も恐慌リスク。オバマは愚か

◆米駆逐艦、中国人工島12カイリに(朝日)
http://www.asahi.com/articles/ASHBW2JGSHBWUHBI006.html
①米海軍が派遣したのは、横須賀米海軍基地のミサイル駆逐艦ラッセン
オバマの許可が出て、ラッセンは南中国海の全12島を占拠する比律賓、越南、マレーシア、台湾の海洋基地防衛任務に就いた。

◆Foreign Ministry: China monitored, followed and warned US warship near China's artificial islands in the SouthChinaSea(CCTV中国中電視台のツイート速報)
①外交部発表:中国軍は米軍を監視した、米海軍のイージス艦を追尾し、南中国海の中国人工島の近くで退去警告した。

◆美军要闯我岛礁 外交部:奉劝美勿轻举妄动(環球時報
http://mil.huanqiu.com/observation/2015-10/7847563.html
①12海里の領海を侵犯されたとのロイター報道から、状況を収集している。いずれにせよ米国は軽挙妄動を慎め。


………(2) 中国外交部記者会見………

◆外交部发言人陆慷就美国拉森号军舰进入中国南沙群岛有关岛礁邻近海域答记者问(新華社
http://news.xinhuanet.com/mil/2015-10/27/c_128363288.htm
中国外交部報道官の陆慷は、米軍艦に中国南沙諸島侵入について記者質問に答えた;

①「米軍艦は中国の許可なく南沙諸島に侵入し、中国の暗礁島に接近した。中国は法に基き米艦艇を監視し追跡し警告した。米軍艦の行為は中国の主権と安全を脅し、暗礁島の人員と施設の安全に危害を及ぼし、海域の平和と安定を損なった。中国側はこの威嚇に強烈なる不満と断固とした反対を表明する」

②「中国側が再三強調したように、中国は南沙諸島と近隣海域に争う余地の無い主権を持つ。中国の南中国海での主権はポツダム宣言による権利と長期の歴史過程で形成されたものであり、歴代中国政府はこれを堅持してきた」

③「中国側が進める自国領土で建設は、主権範囲内での事であり、いかなる国家とも関係がなく、影響も及ぼさない。各国は国際法の民間船航行の自由と、軍艦及び航空機の事前許可による無害航行を実行すべきだ」

④「中国側は南中国海で国際法に準拠して一貫して各国の民間船の航行の自由を尊重してきた。だが中国の主権を侵害する不法占拠や軍艦・軍機の偵察と示威行動は中国の主権と安全を損なう」

⑤「中国側には断固として自国領土の主権と安全と海洋権益を護る合法的権利があり、いかなる国家の挑発にも、中国側は断固として対応する。私達は引き続き厳密に海域の海と空を厳格に監視し、必要に応じて全て措置をとる」

⑥「中国側は米国政府に要求する; (1) 今回事態の責任を明らかにするための厳正なる交渉 (2) 米軍は過ちを認め謝罪し態度を改め問題行動を中止せよ 中国の領土主権と安全を損なう挑発を繰り返すなら、中米関係は深刻に損なわれ、アジアの平和と安定をも損なわれる。全ては米軍の責任だ」中国外交部


………(3) 環球時報新華社の論評………

◆外交部回应美军舰将进我南海岛礁领海:奉劝美方三思(環球時報
http://world.huanqiu.com/exclusive/2015-10/7847453.html
①「領海内側から中国軍艦が米軍軍艦に並走して押し出し、衝突してでも追い出す。大型駆逐艦や早期警戒機、無人機を投入すべきだ」

②環球時報記事の読者コメント欄は「赤裸々な米帝の挑発行為だ、断固排撃のみ」で溢れている

◆【写真】1988年苏联军舰撞美国军舰回顾(環球時報
http://mil.huanqiu.com/gt/2015-10/2806705.html
①1988年にソ連駆逐艦が米海軍軍艦に体当たりして、退去させた写真集を掲載。米海軍がまた来たらこうすればいいと。

◆国际时评(社説):美国南海荽耀武力不负责任(新華社
http://news.xinhuanet.com/mil/2015-10/27/c_128363260.htm
①米軍艦が南中国海の暗礁島の12海里に侵入した。米国人は国際世論で騒ぎたて、遥かな南中国海で威嚇し、波風を立てる西太平洋のならず者。中国人民は憤っている。責任の全ては米国にある。

②南中国海では当事者でない米国が介入しています。南中国海の平和と安定は容易ではなく、中国が各方面と調整に努力し、その成果を出すと米国は軍艦を侵入させて和平をかき乱すのです。平和で静寂であった南中国海で波を荒れ狂わせようとするのです。

③中国外交部長の王毅は言った「私たちは事実と向かい合って調査している。私達は米側に熟考の上での行動をするようご忠告申し上げる。軽々しく行動しないでください、わざとごたごたを起こさないでください」

④周知のように、中米双方は様々な層で南中国海問題について意思の疎通を維持しており、米側は中国側の原則的立場を明確に知っている。

⑤太平洋の最重要な2国家として、海の平和を守るために、中米双方は共に建設的な働きかけを発露し、両国の人民に幸福をもたらすのみならず、力強くアジア・太平洋地域に世界平和の安定的な発展をも促進するはずでした。

⑥先月、中米の両国指導者は南中国海問題について建設的な疎通を維持するという共通認識を成立させた。オバマ大統領はその時「双方は、意見の相違を認識しあい、問題を管理する能力があると信じ、南中国海問題などで良性の循環を展開するために、対話によって全てを調整する能力がある」と表明した。

⑦米国大統領のその発言が耳に残っているにもかかわらず、米国が南中国海の暗礁島にまで軍艦を侵入させたことに不思議な思いを隠せない。このような挑発的な挙動は南中国海とその地域の平和と安定に責任を負わないだけでなく、国際大義と米国自身の矛盾の両方に対する深刻な開き直りだからだ。

⑧南中国海の「航行の自由」を米側は大義名分としているが、それは「偽りの命題」である。周知のように、南沙諸島は2000年前の昔から中国領土で、中国側は歴史と法律の原理の根拠を十全に持っています。そして、南中国海の各方面は共に努力しており、全体情勢は安定的なのです。

⑨南中国海は中国の貿易と交流が行き来する重要な通路。中国はいかなる国家よりも南中国海の平和と安全を必要としているのです。それで中国は、ASEAN国家との全面的で実質効果のある《南中国海各方面の行動宣言》を成立させ、その原則下に《南中国海の行動規範》を制定する協議を進めます。

⑩中国は南沙の一部暗礁島に自衛のために駐屯する施設の建設を行っている。いかなる国家にも影響を及ぼさないものである。歪曲しないで欲しい。

⑪それは島に駐屯する人員の業務と生活条件を改善する目的の建設であり、それに相応しい国際公共サービスを提供して、南中国海の航行の自由と安全を守ることにも役立つのです。

⑫事を荒立てたい人が世界に居るが、中国人は事なかれ主義ではない。習近平主席は最近ロイター通信の取材を受けて、南中国海の諸島は昔から中国領土で、これは祖先が残したものです。いかなる人であろうとも、中国の主権を侵害することを、中国人民が承諾することはありえない。

※この時事評論の日本語版を新華社が掲載した;
◆時事評論:米国の南海での武力誇示は無責任な行為
http://jp.xinhuanet.com/2015-10/28/c_134757819.htm


………(4) WSJワシントンポストの報道………

◆「米国の言葉は、いよいよ軍事行為に変わった」
→中国が南シナ海、重大局面迎えた米中の覇権争い(WSJ
http://on.wsj.com/1PRF1tJ

◆U.S. destroyer passes island in South China Sea(CNN)
http://cnn.it/1Weq1WJ
CNNの画面に進軍ラッパが鳴り響いている。オバマキューバ危機のケネディにあやかろうとしている。

◆China says U.S. naval destroyer sailing close to Chinese-built island damages peace and stability(WP)
https://www.washingtonpost.com/world/china-says-us-naval-destroyer-sailing-close-to-chinese-built-island-damages-peace-and-stability/2015/10/27/25b254b4-7c7a-11e5-beba-927fd8634498_story.html?tid=sm_tw
①北京発――中国政府は、米軍の行動は違法、危険であり挑発的な行為と弾劾して次のように述べた;
「中国は米海軍のイージス艦ラッセンを監視し追尾し、スプラトリー群島のSubi岩礁に接近した時点で領海侵犯になると警告した。しかし、米国防総省は、任務は完遂され事故は起きなかったと言った」

[米国軍艦は、中国が築いた島の12マイル以内に帆走する]
https://www.washingtonpost.com/world/us-warship-sails-within-12-miles-of-chinese-built-island-in-south-china-sea/2015/10/26/a178497b-7033-4e4c-a328-0f3c980cf193_story.html

②米国政府の意図は、南中国海の航行の自由をデモンストレーションすること、そして中国が環礁の周りに築いた人工島は領土領海と認めないと示威することにあったと軍事専門家は言う。

③それはまた、北京が海洋に膨張する政策を進めることに神経質な同盟国を安心させることが目的である。誘導ミサイル駆逐艦USSラッセンは、海軍哨戒機(P8とP3)に誘導されて接近したと、匿名の米政府高官が話している。

④ワシントンでは数ヶ月間にわたって検討と立案が行われ、それを意図的にリークすることによって、中国を怒らせた。9月末には、「オバマ大統領の許可が出れば、2週間以内に12海里への侵入を行う。環礁を埋め立てた人工島を領土領海領空と認めることを、どんな国でも決して許さない」と声明。

⑤米国務省のルーカン報道官は「中国の政府の許可を求めることはない。中国は監視し警告してくるだろうが、米軍は無視する」と付け加えた。

⑥中国外交部副部長は米国大使マックス・ビューカスに公式の抗議をおこない、「米国軍艦による行動は中国の主権と安全を侵害する恐れがあり、島に駐在する人員の安全が脅かされ、当該海域の平和と安定を損なう。危険な挑発的な行動という悪事を直ちに取りやめなさい」と米国に勧告した。

⑦南中国海では、12ある島の全てを比律賓、越南、マレーシア、台湾が占拠し、ブルネイ岩礁を占拠。しかし中国はその全てを2千年前からの中国領であると主張し、それらの国に返還を要求している。米国はその要求を取り下げと主張するが無関係国の不法な干渉で中国への侮辱と反論した。

⑧2014年に中国は大規模な島嶼開拓計画を実行に移し、米国および領土を主張する国との関係を壊したとそれらの国は主張する。

※As island expands, so do diplomatic complications
http://www.washingtonpost.com/business/economy/chinese-maneuvers-in-the-south-china-sea-complicating-matters-for-obama/2015/09/11/21e9472e-588b-11e5-b8c9-944725fcd3b9_story.html

⑨今週の海軍の任務は、先月ワシントンを訪問した習近平主席が誓約した「北京は島を軍隊化しない」と実地確認することも意図されている。

⑩フィリピンに近いSubi岩礁は満潮時に水没する環礁であったが、中国は大規模な浚渫と埋め立てをおこない、現在では滑走路を建設できる大きさに変化した。

⑪国際戦略研究所CSISの一部門である「アジア海上透明度イニシアチブ」によると、衛星写真でSubi岩礁には指令塔と複数の衛星アンテナが設置されたと発表した。

⑫満潮時に水没する島を人工島に造成しても領土主張はできない、水没環礁の周囲500m内だけが安全地帯であること、そう米軍は解釈した。

⑬中国はFiery Cross環礁ですでに滑走路の工事中であり、Mischief環礁でも建設される可能性があると専門家は言う。

【写真】Photos: China’s rapid island-building strategy continues
http://www.washingtonpost.com/graphics/world/south-china-sea/

⑭中国は「建設は民間使用のために設計され、南中国海の航行の自由に影響しない」と言い、ワシントンの中国大使館は「航行の自由」の概念がこじつけられて軍事的威嚇に使われている、米国は挑発的な全ての行動を控え、平和および地域の安定性維持に努めるという、責任を全うすべきだ」と言った。

CSISの中国軍事専門家ボニー・グレーサーは「米海軍の行動が中国の建設を止めることはないだろう。フィリピン、ベトナム、マレーシア、台湾はすでにSpratlysに滑走路を持っている。それが中国に建設を促進させる動機になっているからだ」と説明する。

⑯退役将軍で中国人民解放軍大学のYang Yiは「今回の米軍行動は中米関係を著しく損ない、中国は人工島の建設を加速し、更に軍事基地化する大義を与えることにしかならない」と忠告し、「無謀で危険で無責任な行動だ。米軍は大口をたたく兄貴と癇癪持ちの餓鬼という心性を露呈した」と指摘し、「もしもその心性が常態化するなら、アジア地域での軍事紛争は避け難いが、米国は軍事紛争への道を歩み始めてしまった」と嘆いた。

⑰環球時報は述べた「中国はこの悩み事を静かに受け止め、理性的に処理しなければならない。米軍の戦闘艦が通り過ぎて消えてしまったのならそれでよし。だがもし戦闘艦が何か別の行動を起こすために留まるなら中国軍は電波妨害を実施し、上空で戦闘機を旋回させ、軍艦を追突させて退去させることも必要だろう」。

※Chinese activity in South China Sea poses complications for Obama
http://www.washingtonpost.com/business/economy/chinese-maneuvers-in-the-south-china-sea-complicating-matters-for-obama/2015/09/11/21e9472e-588b-11e5-b8c9-944725fcd3b9_story.html

⑱「パトロールは来週も継続する。これは、一回限りのイベントではなく、常態化された任務である。中国に特有の任務でもない。また、ベトナムとフィリピンがSpratlys環礁に建設した軍事基地も米海軍の指揮下に入ることになる」と米国防総省の匿名高官がロイター通信社に言った。

⑲国際危機グループの中国研究主任者Yanmei Xieは「そのような行動には計算違いと偶然の衝突のリスクが付き纏うが、何もしないこともまたリスクを発生させるだろう。それは危険な工作であるけれども、リスクのない処方箋などあり得ない」と付け加えた。

⑳「一方的な行動に対して何もしないことおよび黙認の積み重ねは海の国際法を無視する状況を産み出すだろう。それは地域の安全を補償する者としての米国の信頼性を徐々に蝕み、アメリカの同盟国の間に、米国の約束と抑止力に対する疑念の種をまくだろう」


………(5) BBC、ロイター、FT、RTの報道………

◆海军官员:美国是找借口打乱我步伐 南海或陷入恶性循环(環球時報
http://world.huanqiu.com/exclusive/2015-10/7854203.html
①ロイター;
ペンタゴン匿名高官「今回の米軍行動は南中国海で中国が主張する主権に挑戦する一連行動の“序幕”。数週間あるいは数か月間に更に何度も侵入行動を起こし、同時にベトナムとフィリピンが南沙に建設した軍事施設も防衛巡視する。この軍事行動は経常的であり、“中国だけに対する軍事行動ではない”」

しかしロイター通信は「今回の軍事行動は米国が南中国海での中国の主権主張に対する最も重大な挑戦だ。中国を刺激し強烈な反発を湧き起こすだろう。米軍巡航は中国人民の主権意識を増大させ、北京政府は更に多くの、おそらく6か所で、軍事基地建設を加速させる結果を生むだろう」と予測。

②WSJ;
「中国のネット利用者の反応に躊躇が全くなく激烈。「退去を命じ、応じなければ開戦だ」「進撃し戦闘し撃沈せよ」「打倒美(米)帝国主義」などのコメントが並び、「私達は今後5年間我慢したほうが良い。5年後には経済も軍事も米国を抜く。その時を待って戦いに備えればよい」が混じる。

③FT;
「米軍のイージス艦侵入(航行の自由作戦)は北京で始まった第18期第5回全人代を揺さぶる目的である」

④DW;
「中国海軍は恐らく米軍艦船の強制阻止のために追突や前方横切りを試みるだろう。これは軍事衝突のリスクを増大させる無謀な冒険だ。米軍が侵入させたのは小型艦艇ではなく、大型イージス艦だ。それは強烈な威嚇であり、中国がどのように対応したのか注視している」

⑤RT;
「現在は警告声明だけであるが、情勢は急速に悪化している。もし米国がこのような軍事侵略を常態化するなら、米国の中国脅威論が南中国海で局地戦闘を発生させ、更には中米が全地球規模で衝突するだろう」

⑥環球時報
楊毅海軍少将「米軍行動は中国の尊厳に対する悪質な挑戦。「航行の自由」などは民間船舶の話であり、軍用船や軍機には領海どころか経済専管水域でも「軍艦機の自由航行」は有り得ない。米軍の「航行の自由」は偽りの看板に過ぎない。米国には「大口をたたきたがる心理状態」と「子供の我儘」が同居している。米国は口実を探して私達の足並みを混乱させるが、私達の足どりは絶対に止まらず、黙って怒りに堪えることもなく、もし米軍が南中国海の内部攪乱を常態化させるなら、悪循環に陥るだろう」

◆'China no longer a Western colony & won't be bullied'(RT)
https://www.rt.com/op-edge/319958-china-west-us-pivot-asia/
中国はもはや西洋植民地ではない、そして苛められることはない

※寄稿者John Wightは米国人。ハリウッド映画会社で5年働き、9.11を機に反戦運動に身を投じた。現在は新聞(Independent, Morning Star, Huffington Post, Foreign Policy Journal等)に寄稿し、またBBCとRTのregular commentatorを務めている。

①世界の関心が中東とウクライナと米―露膠着の事態に焦点が合わせられていた間に、別の危機が、ワシントンが中国に突きつけた捜査令状によって、南中国海で醸成されていた。その領土紛争は数世紀前に遡るが、近年ますます神経質になった。

②南中国海の西沙諸島南沙諸島における領土紛争で高まった緊張――実際、満潮時に水没する環礁での――は特に、国、ベトナムシンガポールマレーシア、台湾、およびフィリピンなどの複数の国が論争に関係し繊細である。

③これらの島の海域は天然資源が豊富であると知られるようになって、その重要な恩恵を享受するための主権主張が絡み合っている。

④そうする間に、中国は、米国を呆然とさせる多くの、軍用機に必要な十分の長さの滑走路を含む人工島を中国は活発に建設している。

⑤この論争を広域地政学文脈から切り離すことは不可能である。米国経済とは対照的に、中国経済が成長するにつけて、ワシントンは米国の世界支配体制を思い知らせる目的で、北京を軍事的に威嚇することの言い訳に南中国海の地域紛争を利用している。

⑥近年米国が、日本、韓国、およびその他の南アジア衛星国をいかに軍事化させたかを考慮しなければならない。中国の軍事予算は今年約10%増加し1400億ドル(17兆円)に設定されているが、それに対応して中国に隣接する米国の同盟国も軍事費を増加させた。

⑦しかし、中国の軍事予算は、オバマ政権が2016年に使おうとしている軍事予算5850億ドル(70兆円)と比べて、非常に小さい軍事予算を維持しているのです。

⑧北京は、軍事予算の増加は主として装備の近代化のコストであり、空軍と海軍の装備近代化と巨大すぎる陸軍の統合効率化が不可欠なのだと、説明している。そして、中国経済の基盤が拡大するにつれて、その安全を保障する要求が高まるケースに該当もする。

⑨さらに重要なこととして、私達は、中国が西洋の植民地にされ、その後の1931年から1945年の14年にわたって日本に占領され、いうまでもなく日本の残忍さと野蛮さの結果として味わった屈辱が、中国人全体の精神の中に存在し続ける、深くて全国的な傷跡を考慮する必要がある。

⑩これらの全ての要因が、南中国海および東中国海※の両方で領土紛争を発生させ、やがて収まる兆候を全く示せないことに作用している。それらの領土主権を主張する中国の決定は、いかなる攻撃者も阻止し、その主権が侵犯されないことを保障することである。

※南中国海は1937年から日本領土であり、1945年に中国には返されず、最近になってフィリピンやベトナムが占拠してしまった。東中国海ではポツダム宣言8項を無視した日本政府が実効支配を主張している。

⑪米国は、論争に巻き込まれた中国の周辺国家の代理人として、いかなる皮肉の感覚も排除して、中国の行動は航行の自由と言う国際法に違反すると主張する。

⑫この主張は、少なくとも、誘導ミサイルで武装した駆逐艦イージス艦)USSラッセン西沙諸島に侵入させパトロールさせた、最近の挑発的軍事行動を正当化するために使われている。

⑬それに対応して、中国外交部は、北京駐在の米国大使を召還し、中国の主権を犯す明確な違反行為であると警告した。

⑭中国外交部は更に、報道官によって以下の声明を発した;「もし、なにがしかの国が、いくつかの小細工を行えば、中国の領土内での妥当で合法的な諸活動を阻止できると思うならば、それらの国には『妄想を捨てよ』と警告する。中国は、いかなる国の意図的な挑発行動にも決然と対処する」

⑮長期にわたって米国は世界を巨大なチェス盤として眺め、米国の経済利益や戦略的関心だけで自由に操れる単なる駒と諸国家を見做すことに慣れ過ぎてしまったのだ。

⑯だが、中国とロシアの海軍が米国の沿岸水域で軍事訓練を常態化させ、中国が人民元の操作によって世界経済をコントロールするようになるまで、私たちが喜んで北京を批判する洞察で楽しむことはないだろう。

⑰その時まで私達は、米国が従属国と地域に蔓延らせた偽善と二重基準に晒され続けるだろう。中国は西欧の植民地から自立し、もはや苛めることのできない存在になったことが非常に明確である。

⑱そしてまた、過去30年間米国が楽しんできた唯一超大国の支配構造が、多極化世界体制に取って代わられることも明白である。

⑲この多極化世界の産婆役は、混沌ではなく諍いでもなく、全ての国と州の権利と利益を実現するための外交交渉と、妥協と、相互敬意に向けさせることだろう。

⑳頂上に米国が君臨する同盟国とそれ以外の国を下に見る二層構造を終わらせようではないか。他の選択肢は、結局、考えるだに恐ろしいものでしかない。

◆US Navy destroyer passes disputed China islands(BBC
http://www.bbc.com/news/world-us-canada-34641131?ocid=socialflow_twitter
①米軍はマレーシア、ベトナム、フィリピンを引き連れて南中国海の全12島を占拠させてきた。それが対立の始まりだ。

◆U.S. Navy destroyer patrols near islands built by China in South China Sea(ロイター)
http://reut.rs/1O3U6sV
オバマは中国と一戦交える気になった? 口先だけと非難されて、追い込まれたという見方もある。

◆US plans to send destroyer to China’s artificial islands(RT)
https://www.rt.com/news/319787-us-destroyer-china-islands/#.Vi61w0QAQ2k.twitter
①米国の駆逐艦はフィリピンとベトナムが南中国海の島に建設した軍事基地の防衛の任にも当たっている

◆米艦航行 韓国は明確な立場示さず(NHK
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151027/k10010284621000.html
①韓国政府は、中国とASEAN国家が締結した《南中国海各方面の行動宣言》の原則下に《南中国海の行動規範》を制定する協議を進めている現状の尊重を訴え、米軍行動には明確な賛成を表明せず。

②フィリピンのアキノ大統領は大歓迎。(この男の為に紛争が起きたのだから)
③豪州政府「公海であるのなら国際法ではない。ただし、豪州は米軍行動に参加していない」


………(6) 日本政府に関する報道………

◆安倍政権、米と連携=事態緊迫なら難しい判断−南中国海(時事)
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol&k=2015102700904&utm_source=twitter&utm_medium=jijicom&utm_campaign=twitter
①中国の海洋進出を踏まえ日米同盟強化に主眼を置いた安全保障関連法を制定した安倍政権が事態の推移によっては難しい判断を迫られる可能性もある。

中谷元防衛相「現在のところ、具体的な対応を行う計画は有していない」
防衛省幹部「南中国海での自衛隊活動について、その準備もないし、能力もないし、意思もない」
海上自衛隊幹部「尖閣諸島問題を抱える東中国海の方がはるかに重要。南中国海への派遣は力の分散になり、現実性が低い」

③9月30日の公布から6カ月以内に施行される安全保障関連法で、政府が「日本の平和と安全に重要な影響を与える事態」と認定すれば、自衛隊による米軍への後方支援は南中国海でも可能。

④安倍首相は5月の国会審議で、南中国海情勢が緊迫化した場合「この法律を使えるようにする」と明言した。今回の事態に適用されれば、自衛隊は中国軍と対峙する米艦船に対し、水や食料の補給だけでなく、弾薬の提供や発進準備中の航空機に対する給油も行うことができる。

⑤さらに、米軍への後方支援活動中に、米中の本格的な武力衝突に発展した場合、米国への攻撃を「日本の存立が脅かされる明白な危険がある」と日本政府が見なせば、安保法が定める存立危機事態を適用し、集団的自衛権に基づく武力行使も有り得る。

⑥また、中谷防衛相は8月の国会審議で、南中国海での日米共同の警戒監視活動について「今後検討していくべき課題」と指摘している。

南シナ海での米艦巡視、「今後も引き続き実施」(読売)
http://www.yomiuri.co.jp/world/20151027-OYT1T50142.html?from=tw
※米軍は南中国海の環礁のうち、満潮時に海没していた人工島は「領土と認められない、公海だ」という大義を押し立てて、その環礁に接近した。この大義国際法なら日本も重大な影響がでる。埋立地が領土ではなくなり経済専管水域に変わるし、沖ノ鳥島は10年後には満潮時に水没し領土でなくなる。


………(7) 中韓日首脳会談への影響………

◆韓日首脳会談 日程確定せず=慰安婦問題めぐり駆け引きか(朝鮮日報
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/10/27/2015102704194.html?utm_source=twitterfeed&utm_medium=twitter
中韓日の三国首脳会談が行われる最終日の11月2日に日韓首脳会議を韓国が提案したが、安倍政権が難色。慰安婦問題で明確な謝罪とヘイトを規制する法整備や教育などの具体的行動を要求されるためだ。

◆中国外相、日本に歴史問題の対処求める(TBS)
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2621504.html
①「歴史問題にうまく対処できれば日中韓の連携は促進されますが、逆ならば停滞することになります」(中国 王毅外相)


………(8) 三位一体=TPP、安倍中央アジア3兆円、米軍『軍事航行の自由作戦』………

安倍は中央アジアで3兆円をばらまいた。同時に米軍は南中国海で軍事行動を起こした。ワシントンではインドネシア大統領にTPP参加と南中国海懸念表明をさせ、北京では全人代。11月には環太平洋首脳会議でオバマ習近平の対決か。米国は中国が南中国海から手を引くまで軍事行動を繰り返す。

米国がTPPを乗っ取った意図が露呈してきた。オバマのアジア回帰は二面作戦であり、TPPで排他的な経済圏で囲み、日本の企業投資と若者の税金を先食いしたばらまきによって、今度は中国の「一帯一路」経済圏を乗っ取る魂胆だろう。並行して「太平洋軍事条約」を強要し、中露を封じ込める作戦。

オバマは南中国海で中国が領海を主張する海域にイージス艦を侵入させた軍事行動を『軍事航行の自由作戦』と公式表明した。中国牽制が目的であるが、それを隠すために「全世界の如何なるところでも、必要があれは軍事介入する」とカーター国防長官が議会証言した。

日米がTPPによって中露を封じ込めるための大きな土台の構築に目途をつけたことで、オバマの鼻息が荒くなった。

TPPの次は『軍事航行の自由作戦』で米国に従わない国を海洋で威圧し、さらに『安倍のばらまき外交作戦』でASEAN中央アジアを中露から分断する。『TPP』『軍事航行の自由作戦』『安倍ばら撒き外交』は三位一体だ。

◆シリア情勢で外相級会合=イランも参加か(時事)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201510/2015102800146&g=int
①米国務省「ケリー国務長官が28日から11月3日までウィーンと中央アジア5カ国を訪問」⇒安倍の中央アジア3兆円ばら撒きを命令した国は、同時に南中国海で軍事牽制行動を開始。

◆米『軍事航行の自由作戦』、南シナ海で作戦継続=対中関係は「極めて重要」−米国防長官(時事)
http://www.jiji.com/jc/c?g=int&k=2015102800051&utm_source=twitter&utm_medium=jijicom&utm_campaign=twitter
①カーター米国防長官は27日、上院軍事委員会の公聴会で証言した;
「南中国海の中国人工島12海里への侵入は今後数週間から数カ月のうちにも作戦はあるだろう」
国際法が許すあらゆる場所で、必要があればいつでも、飛行、航行、作戦を行う」

②シュルツ大統領副報道官も27日、記者団に;
「航行の自由作戦は、国際法下で全ての国に保障されている海と空の権利と自由、合法的な使用の保護に役立つ」と主張した。


………(9) (再掲)中国牽制;ASEAN分断にフィリピン、上海機構分断にトルクメニスタン………

安倍はネオコンに入れ知恵されるままに行動し、悲惨な孤立を招いたことを認識できない。むしろ大成功だとご満悦の様子すらある・・・

中国脅威論を吹聴しASEANを分断するために南中国海に対立を持ち込む。中国と対立しているフィリピンに軍事援助し自衛隊を派遣し、ベトナムにも核発電や新幹線やODAで中国から離反させるという。

フィリピンは中国や香港や台湾との経済関係がやせ細り、期待した日米からの基地使用料で外貨準備を支えようと期待したがそれも不可能だった。ベトナム共産党が北京に謝罪に出向いた。

今回の安倍の中央アジア訪問も全く同じ狙いである。ロシアと対立するトルキスタンに2兆2億円の経済援助をし、日本の同盟国にする。同国のGDPの半年分という巨額で。ウズベキスタンも100億円借款ロシアから分断する・・・安倍の狙いはロシア封鎖ではなく中国封じ込めであったはずだが?

お粗末な現状認識である。トルキスタンの輸出の9割は中国向けであり、日本が援助して増産する天然ガスも日本に送る術もなく、全量がパイプラインで中国に輸出される。ウズベキスタン上海協力機構の加盟国で抗日戦勝70年軍事パレードに軍を派遣し大統領も隣席している。

◆首相、中央アジア5カ国歴訪 資源確保・中国けん制狙う(日経)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS23H47_T21C15A0PP8000/?dg=1
阿呆の一つ覚え「中国牽制狙う」

◆首相「中国に毅然と対応」ウズベキスタン首脳会談で(朝日)
http://t.asahi.com/ikyw
中央アジア訪問中の安倍晋三首相は25日、ウズベキスタンのカリモフ大統領と会談し、「中国公船による領海侵入や一方的な資源開発など、中国の憂慮すべき活動は依然継続している。引き続き冷静かつ毅然と対応していく」と述べた。

※この発言は挑発的だ=「中国は中国海で侵略を強めている。それと同様にあんたがた中央アジアも侵略を受けている。日本の私等のように冷静に毅然と対抗すべきだ」と解釈されるだろう。上海機構の加盟国の元首にこれを言ったらおしましだ。

◆中国懸念を共有 日・ウズベキスタン首脳会談(テレ朝)
http://5.tvasahi.jp/000061211?a=news&b=np
①カリモフ大統領がそうした中国の進出に懸念を示し、「領海侵入や一方的な資源開発は憂慮すべき」と述べた安倍総理と歩調を合わせました ・・・安倍はフィリピンとベトナムを扇動してASEANを分断した。

今回もトルクメニスタンウズベキスタンを扇動して上海機構を分断しようとしている。そのために2兆3千億円を使う約束もした。だが・・・この報道は安倍に随行した産経並極右化著しき朝日記者の報道で、安倍のコメントだけを紹介している。ウズベキスタン大統領の意思とは異なるだろう。

トルクメニスタンに2兆円超の協力で合意 安倍総理(テレ朝)
http://5.tvasahi.jp/000061132?a=news&b=np
今回中央アジア訪問の目的はこの独裁国家。ロシアと対立している国。ASEANで唯一中国と対立するフィリピンに軍事支援しASEAN分断を画策したときと同じ手法を中央アジアでも

トルクメニスタンに2兆2千億円規模の経済協力。だがこの国のGDP4兆9千億円で人口僅か520万。GDPの4割に匹敵する経済協力でこの国家を買い取った。中央アジアの他の4国は全て上海協力機構(主として軍事協力)とユーラシア自由貿易圏(ロシア主導)に加盟しトルクメニスタンは孤立。

トルクメニスタンは孤立・鎖国状態。ただし豊富な天然ガスの5割は中国に送られてそれが国家財政を支える。天然ガス生産に2兆円を日本が出資しても、日本に輸送するルートが無い。中国に売るガスの増産に2兆円を差し出したことになる。同行した財界人は外務省や安倍のことはどうでもいい。

◆インフラ支援でODA9億円 日タジク首脳会談(日経)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS24H1J_U5A021C1PE8000/?dg=1