輸出による高度成長が不可能になった日本と中国の違い

「中国が不況だ、世界経済に迷惑をかけた、被告席に座れ、非難の嵐を素直に受け止め、世界が命令する構造改革を実施せよ、経済政策の透明性と経済統計の出鱈目さを直ちに是正しろ」というマスコミ報道がG20に関して日本国内で闊歩している。

それが実態とは正反対であったことを昨日報告しましたが、今日もまた中国の「GDP7.3%に減速、貿易総額5.5%減少、長期停滞の恐れ」などと報道されている。そこには恣意的に中国を罵倒したい動機が報道にあふれている。それで今日は、少し日中経済を比較して明日を占えられたらと。

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輸出による高度経済成長は「経済侵略」と見做され、暴力的な排外行動に直面し、輸出国の高度成長は飽和する。

1980年代初頭の二回のオイルショックを乗りきった日本企業は、経済成長率が10%から5%前後に下がったものの、多品種・高品質化に成功し、貿易収支の大幅黒字は維持され、米国が絶えられる限界を超えた。

だが、日本はなんら有意な政策を発案しない。1985年プラザ合意で日本の経済侵略に悩む先進国が円レートの極端な切り上げへと強調する合意が成立した。為替レートは300円/$から240円を経て100円を切るまでに人為操作された。日本企業は完成品の輸出で1億国民を養えなくなった。

だが、日本の国家規模からすると巨大ともいえる内部留保を国家と企業が蓄えており、その財源で不動産投資などの金融商品と不動産関連に投資する「財テク」がもてはやされた。本業の製造業とはなんら無関係な株や不動産や新たな金融商品に投機し、空前の利益を上げた。1988年ころである。

日経平均は3万円を突破し、不動産は自ら居住することのない高額マンションに投機され、その財源は金融からの無差別な融資に頼っていた。不動産価格は高騰し、そして不動産商品が枯渇するほどになった。民間投機筋は政府に要求しだした「旧国鉄の広大な都心操車場(汐留と梅田)を売却せよと」。

汐留や梅田等の売却は政府の抱える「150兆円もの借金」を2割軽減する可能性があった。政府も乗り気になる。不動産業界は銀行などと結託して不動産バブルを起こした。東京に住む会社社員が1000万の元手で6千万を借り、転売益だけを目的とする梅田北開発のマンションを買い漁った。

私が住んでいた千葉県柏市の住都公団分譲マンションの価格は、当初新築1400万/戸が1990年には中古にもかかわらず5500万円に暴騰した。都心までの通勤には1時間45分かかる。汐留操車場跡地も数兆円と言われるようになった。

政府は土地バブルの崩壊を恐れ、不動産投資の「総量規制」を行い、汐留と梅田の売却をバブル退治後に延期した。この規制と延期はバブルを一挙に崩壊させた。1991年のことである。私の中古マンション価格は5500万から1600万に暴落したというよりも、「正常化」した。

以後、日本は長期停滞(失われた30年)に入った。産業はアジアや米国やEUに空洞化し、海外子会社への部品供給を除く完成品の輸出は1/3に激減した。

産業は一斉に空洞化した。日本の工場から輸出すれば「経済侵略」として暴力的に排除されるから、海外に工場を建設し、現地住民を大量に雇用して生きながらえるしか無くなったのだ。それは現在も変わらない。変えようが無い。

海外への空洞化は、日本の企業の給与所得税法人税を激減させる。年功賃金制の終身雇用は夢と消え、社員の賃金は頭打ち、定年前の早期退職が常態化し、社員採用を激減させて、派遣社員季節雇用などの不安定雇用で労働配分率を劇的に低下させて、企業は日本工場をかろうじて維持した。

それでも海外子会社を含む日本企業の連結決算は堅調で多額の内部留保。それで円安どころか、70円/ドル台の極端な円安へと振れて行った。企業の単独決算は悲惨で希望も見出せなかったが、アジアへの空洞化が巨額の利益を現地であげていたのだ。それは中国の高度成長による内需倍増の恩恵だった。

日本工場で高度部品を作り、アジアの子会社に輸出し、そこで完成品に組み立て、中国に輸出する。空洞化先のアジア各国にも雇用による経済効果があり、それなりにASEAN経済も成長する、という構造が2005年から最近まで続いていた。

中国経済は12%台の高度成長に乗り、民主党政権末期に日本の名目GDPを抜き、米国に次ぐ世界第二の経済大国となった。中国は米国の1/3となおも大きな差があったが、それは生活必需品の物価水準に見合う為替レートには程遠い管理相場の結果であり、実際には米中の差は縮まっていた。

IMF世界銀行は名目GDPも実質GDPも使わず、参考でしかない。使うのは生活必需品の物価水準と賃金水準を一致させる理論上の為替レートを使う。それを購買力平価GDPと呼んでいる。2014年に購買力平価GDPは米国を僅かに抜いた。2015年IMF予想は中国が米国の1,1倍に。

中国と日本が世界第二を競う時代は過去の記憶になった。2015年のIMF予測では、中国は米国の1.1倍、中国は日本の4.2倍の経済規模である。東証が下落しても世界に影響は全く無いが、上海が下落すると東証もNYも欧州もASEANも世界同時株安になる時代に入った。

1年前に上海総合株価指数は2000ポインだったが、今年6月中旬に5100ポイントに暴騰した。中国GDPは10⇒8⇒7%と減速し、6%ではないかと心配される1年であったから、これは投機によるバブルでしかなかった。

日米のゼロ金利と空前の金融緩和によって、巨額の借金財源が中国や日本やASEANの市場に乱入した。日本のアベノミクスは紙屑印刷政策に過ぎず、民間投機筋への際限なき資金提供と、その後始末の買い支えと日銀と年金基金運用機構とそして日本郵政が各々何十兆円かの規模で買い支えた。

百兆を超える民の財を、その将来の予定財産も含めて、投機屋にあてがって株式市場をバブルさせ、国際市場の低利率を見せかけた。それは大規模不況の対策として、金融業の崩壊を阻止区的で、ごく短期間だけ市場介入を許される政策であったが、1年過ぎても2年過ぎても、新産業興隆政策は現れない。

新産業興隆政策が現れなければ、金融業界を救済する緊急の政府介入は、その負担が倍になって返ってくる。金融の臨時的救済は、そのあとに新産業の勃興によって返済することが前提だからだ。アベノミクスが一の矢二の矢三の矢で、三矢が新産業興隆政策だが、それが何もない。

そもそも、第一の矢は新産業興隆政策であるべきだ。オバマは第一の矢にクリーンエネルギ新産業の勃興掲げ、金融政策は第二第三の矢だった。第一の矢に即効性はなく、失敗によるやり直しの可能性もなる。その時に第二第三の矢を緊急医療として準備するものだ。だが、安倍全く逆順だった。

そこにもアベノミクス立案者と促進者たちの知的退廃と人格崩壊を感じさせる。結局アベノミクスは、良くても20年前と同じ、最悪は、経済の行き詰まりを周辺国の犯罪に転嫁して国民感情を誤らせて、攻撃的で周辺国民を愚弄して已まないファシズムにしかなりようがない。

それが戦争になるかどうかは、WWⅡでの欧州と今の極東の地勢的並びに地形鄭状況が異なる。ドイツは国境が陸続きで、人の情報の往来は阻止できなかった。海に面する距離が短く、防衛には不利だが、侵略は極めて簡単だった。

当時、ドイツと英国とフランスは経済規模が拮抗していた、人口も国土面積も似たようなものだった。それにドイツ国境海ではなくは大陸の隣国であった。今日の日本は・・・四周は海でそのことは兵100万に相当する防衛戦力で、そして狭い国土、狭隘な平地、人口過密、教育水準、天然資源無し。

こんな日本を侵略する国などあろうはずがない。米国すら占領維持を不可能とみて天皇を利用した。まして中国をや、北朝鮮が日本侵略? 寝ぼけている妄想に過ぎない。だかしかし、日本には特攻も玉砕や餓死をも厭わないだけでなく、奇襲攻撃で勝てば略奪と強姦と虐殺と放火を楽しむ国民性がある。

日本本土が侵略されることは100%無い、太平洋戦争の敗戦のように日本自らが崩壊し、なおも降伏しない場合を除いて。日本右翼のタカ派はそれを承知で、「安心して中国侵略」の夢を見る。しかし、中国は遥か海の向こうであり、台湾も朝鮮半島樺太も日本の版図ではない。

現代中国は日本の11倍の人口と20倍の国土を持ち、購買力平価GDPは4倍以上、戦力は先端兵器分野で互角だが、総力戦と核戦争段階では10倍上100倍もの格差。侵略戦争どころではない。1月でひねりつぶされる。せいぜいが無人島の攻略戦闘というビデオゲーム以上ではない。

これらが、経済で負けた悔しさを経済上の英知で挽回する術もなくなった日本の屈曲し嫉妬し逆恨みし徒党を組んで仕返ししようとする餓鬼の喧嘩が日本政治権力を覆った背景である。

日中の高度成長の飽和後の軌跡の相違に戻ります。
【高度成長が飽和し、経済侵略と攻撃された1985の後の日本の軌跡】
➊輸出量は減少したが、高品質、新機能商品の開発で貿易黒字を維持することに成功
➋経済成長率は3%を維持しており、政府はなんら有効な内需経済移行政策(新産業興隆政策)を発案実行しなかった
➌急激なる円高は企業の全面的な空洞化で崩壊を回避した
内需依存経済に転換するための新産業は全く見いだせなかった
➎産業への投資から逃げた資金が株と不動産のバブルを発生させた。政府は総量規制と旧国鉄資産売却の延期でバブルを崩壊させたが、金融は酷く傷つき再生に10年かかった。
➏国内工場を維持するには、生涯雇用と年功賃金の制度を破棄し、派遣や季節工やサービス店員などの不安で低賃金銀の雇用に全面移行するほかなかった
➐安倍が40%にも達する円安を強行したが、なんらの改善もなかった。GDP成長率はマイナスとなり、それがほぼ20年続いている。

【高度成長が飽和し、経済侵略と攻撃された2008の後の中国の軌跡】
➊訪米して中国製品叩き壊しデモに直面した胡錦濤は、即座に輸出主導の高度成長を停止し、内需依存経済への転換を決定し実行に移した。
➋GDP成長率を10%から8%へ、さらに7〜6%へと下げる年次計画を実行した。
内需依存経済に必要な賃金増加を5年間で約40%達成させた。
➍国内格差、都市と農村の格差を是正する所得配分政策に国家財政の15%を使った。
➎国内産業の外国進出を促し、それでも空洞化しないように新規産業興隆策を稼働させた。「一帯一路」経済ベルト構築政策である。
中国企業は外国に造成される工業団地に進出するが、中国国内では新経済ベルトのインフラ構築とその管理運営ならびにそこでの新規ビジネスによって、日本のような全面的空洞化を避けるものである。中国当局の対策は迅速で躊躇がなかった。
➐日本と同様に産業から逃げ出した投機資金が不動産バブルを起こし、2015年春に総量規制すると株式市場に逃げ込み、株バブルを発生させた。中国当局は尋常ではない規制を行い、2ケ月でバブルを終息させ、投機資金を撤退させた。

輸出経済による高度成長が飽和し、持続可能な内需依存経済に転換する時に、中国政府は日本の失われた15年を緻密に調査し、その反省をもとに2008年からの内需依存経済への転換を行った。

中国政府が、日本の失われた15年から学んだ項目で実施されたものは次の通り;
内需拡大には都市と農村の格差是正策と、給与所得の倍増が不可欠である。実際、この5年間給与は倍増に近い。
➋輸出企業は外国に移転し、現地雇用と納税をしなければならない。その促進策が必要であり、他方、日本のような全面的空洞化を避けるためには新産業の創出政策が不可欠である。それを両立させる政策として、ユーラシア大陸を網羅する「一帯一路」経済ベルト建設を立案し、銀行と基金を設立した。
➌輸出による高度成長が限界に達したと認定した中国は翌年には輸出経済を捨て内需経済に移行し始めた。日本は約十年放置されたが中国は翌年には実行に移している。
➍この迅速さが、経済構造転換開始時のGDP成長余力の差となっている。日本1〜3%成長、中国8%成長。日本がいきなりマイナス成長だが、中国は10%⇒8%⇒7%と軟着陸する余裕がでている。
➎中国の「一帯一路」は中国の発明ではない。数年前からIMFアジア開発銀行にアイデアがあり、ASEAN首脳会議関連でもAPECでも話題に上がっている。中国政府の貢献は、それらの意見を迅速に集大成し、自国経済の構造転換に組み込む工夫を見出し得たことにある。日本にはそれが全くない。

結局、日本は内需依存経済に不可欠な対策を全く実施せず、逆に低賃金化、不安定雇用化、全面的空洞を進めて実質的なデフレを確固たるものにした。中国は内需拡大に必要な賃金倍増と都市から農村に所得再配分、空洞化対策として「一帯一路」建設を実施した。日本から得た教訓を活かしたのである。

欧米もASEANもロシアも中東もIMFすら中国の「一帯一路」建設に縋っている。他に新産業興隆策が見いだせないからである。安倍と自公は(民主党も)中国脅威論を反省し、中国の論理性と迅速性と原則の普遍化を学び、頭を下げて参入させてもらうべきだ。

そうすることによって、国境を事実上消滅させ、若者が自由に往来して生活の場とできる広大なユーラシア共同体に参加する夢が持てるのではないのか。



………世界の株価………

◆【欧州】前日終値 ドイツ△1.7% ロンドン△1.1%と欧州は株価上昇

◆【日経平均】8日株価終値 ▼2.9% 433円安の1万7427円(テレ朝)
http://news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/000058287.html
G20で麻生が中国を〝被告席”に座らせ、G17総がかりでやりこめたのではなかったのですか? 総裁選で野田聖子の立候補も公認権を武器に封じこめたのに、この結果

◆【上海総合】8日株価終値 △2.9% 90元高の3170元 5日ぶり反発(時事)
http://www.jiji.com/sp/forward?g=int%26k=2015090800813%26utm_source=twitter%26utm_medium=jijicom%26utm_campaign=twitter

◆【NYダウ】8日午前 △1.7% 275$高の16360$ と大きく反発して開始
U.S. stocks rebound from huge losses(CNN)
http://money.cnn.com/video/investing/2015/08/25/stocks-rebound-from-huge-losses.cnnmoney/index.html?iid=ob_quote_footer&iid=obnetwork(リアルタイム)
①NYのダウ工業平均株価が275$1.7%上昇して取引開始。
G20での中国に対する協調合意に安心して。
日経平均は433円下落して終了。これは麻生による国家信頼性喪失のダメージを憂慮)

………中国経済指標………

◆中国の輸出、2カ月連続減 景気減速、深まる可能性も(朝日)
http://www.asahi.com/articles/ASH9843HTH98ULFA014.html
1985年プラザ合意で日本は輸出半減、企業大規模空洞化。以後バブル大崩壊経て、穏やかな経済縮退を今も続ける。中国も2008年にその段階に政策を変更。輸出半減、輸入は微減。中国企業も一帯一路でユーラシア大陸に空洞化。正常です。

◆中国の貿易総額が6か月連続減少(TBS)
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2582158.html
減って当たりまえ。米国の暴力的ともいえる圧力に懲りた胡錦濤が、輸出経済を捨て、内需依存経済に移行し、最後の仕上げであるバブル退治と次の希望「一帯一路」経済ベルト建設に入っているのだから、「貿易総額が増えたら失政」になるのですよ。

………日本経済指標………

◆4月−6月のGDP改定値マイナス1.2%(テレ朝)
http://news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/000058311.html
G20で麻生が中国のGDP+7〜6%成長率を罵倒し構造改革を要求した。その日本はー1.2%。安倍政権ではずっとマイナスGDP。円安誘導でドルベール実質GDPは韓国に近づいた。

◆街角景気が大幅悪化 8月2.3ポイント、海外経済減速などで(日経)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDC08H0F_Y5A900C1EA1000/?dg=1
◆8月の街角景気、7か月ぶりに「横ばい」示す50を下回る(TBS)
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2582159.html
現状判断指数は49.3と先月と比べて2.3ポイント下落し、50を切ると不況・・・麻生はG20で「中国が49.8に下がった、世界に迷惑かけるな、構造改革しろ」と要求したそうな。日本は?