安倍晋三、防衛白書で中国を挑発

※敬称略 ◆は参照報道、①〜はその要点

◆中国ガス田施設、東シナ海に16基 日本政府が写真公開(朝日)
http://www.asahi.com/articles/ASH7Q4KDYH7QUTFK00D.html
◆中国の資源開発けん制、交渉再開促す狙いも ガス田写真公表(日経)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS22H3K_S5A720C1EA1000/?dg=1
①政府が東シナ海での中国によるガス田開発の証拠写真を公表したのは、一方的な資源開発をけん制するためだ。安倍晋三首相が9月訪中を検討するなど日中関係が改善に向かっていることを踏まえ、ガス田共同開発をめぐる交渉再開に向けた前向きな対応を促す狙いがある。

②日本は重なり合う日中の排他的経済水域EEZ)の解決策として中間線による境界画定を主張している。それに配慮したのか、施設は中間線に近い中国寄りだ。しかし、中国が中間線による境界画定を認めたわけではない。日本からみれば一方的な開発であり、受け入れられない行為だ。

③日中は2008年に東シナ海ガス田の共同開発で合意したものの、沖縄県尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件後、交渉は中断している。

福田内閣胡錦濤主席が08年6月にガス田の共同開発をめざすことなどで合意したが、麻生政権になり頓挫し、菅直人政権で香港漁船が突入・船長逮捕・強制送還を経て、野田政権で石原と「尖閣公有化」。更に「第二次安倍内閣成立」で、胡―福田合意は自動消滅。日本側の重大なる約束違反故に。

この記事は倒錯している。交渉開始を拒否してきたのは日本政府である。安倍が日中首脳会議に応じてもらうために、「4つの共通認識」を約束し、その中の筆頭に「日中基本4文書の遵守」が入っている。

その中の日中国交回復共同声明と日中平和友好条約で日本はポツダム宣言8項すなわち、日本は島の主権の帰属を連合国に全て委ね意義を唱える権利を放棄する条項である。釣魚(尖閣)主権の帰属問題は「古来からの領土」とは無関係に、連合国内(この場合は米国と中国)だけで決める条約である。

福田内閣はそのポツダム宣言8項を基本要素とする日中国交回復共同声明と日中平和友好条約の順守を再確認したので、胡錦濤星間はガス田の共同開発を提案した。だがそれを日本側に放棄させたのは石原慎太郎であり、それに応じたのが野田佳彦であり、更に戦争直前まで険悪化させたのが安倍晋三である。

◆外交部の陸慷報道官は日本が発表した2015年版「防衛白書」について(新華社
http://jp.xinhuanet.com/2015-07/22/c_134435730.htm
◆日本の防衛白書の対中非難について 中国側は断固たる反対を表明(人民日報)
http://j.people.com.cn/n/2015/0722/c94474-8924286.html
①記者質問
・7月21日、日本内閣会議が2015年版「防衛白書」を審議して採択し、また発表した。その中では中国に対する非難が何箇所もあった。中国側はこれにどう評価するか。

②中国外交部の陸慷報道官
・日本の新版白書は再び事実を顧みず、中国の通常の軍事力発展と海洋活動にとやかく言い、悪意をもって、いわゆる「中国の脅威」を誇張し、人為的に緊張をつくり出しているとした。中国側は強い不満と断固とした反対を表明する。
・次の四点を強調する。
第一に、中国は平和発展路線を堅持し、防御的国防政策を遂行しており、戦略的意図は透明だ。
中国による正当な国防能力の発展はいかなる国の脅威にもならない。中国は中日友好の促進を堅持し、中日間の4つの基本文書を踏まえた中日関係の発展を堅持する。
第二に、中国は一貫して国際法と関連のある国内法に基づき、正常な海洋活動を展開している。
・東中国海の係争のない中国管轄海域で中国側が石油・天然ガス開発活動を行うのは完全に正当で、理にかない、合法的だ。
南沙諸島での建設活動は完全に中国側主権の範囲内であり、いかなる国にも影響を与えず、いかなる国も標的にせず、非難の余地はない。日本が悪意をもって地域情勢の緊張を誇張し、南中国海問題に干渉したことは地域の平和・安定を脅かし、中日間の政治、安全保障面の相互信頼を深刻に損なった。
第三に、釣魚島(日本は尖閣諸島と言う)は古来より中国の固有領土である。
中国側が釣魚島周辺の中国領海でパトロール、法執行を行うのは法にのっとった主権の行使である。中国側は引き続き必要な措置を講じ、領土主権を断固として守る。日本側はいかなる非現実的な幻想も抱くべきでない。同時にわれわれは、対話と協議を通じた問題の適切な解決を一貫して主張している。
第四に、地区と世界の平和と安定を維持するのは大の流れであり、人々の望みでもある。
日本側は軍事分野で第2次大戦後かつてない行動を取り、歴史問題でネガティブな動きを見せ、数多くの日本国民を含む地域各国の人々の懸念と反対を招いている。われわれは日本側に対して、人為的に緊張を作り出し、摩擦や対立を煽ることを止め、地域の平和・安定にプラスの事を行うよう厳粛に促す。

③日本側は平和的発展路線を歩み、専守防衛政策を遂行すると公言しながら、新安保法案を強行可決し、軍事政策を大幅に変更し、集団的自衛権の行使を実現しようとしている。日本側のこうしたやり方は二枚舌である。われわれは日本側の軍事行動に対する評価を進め、状況を見て必要な反応をする。

◆中国の脅威を誇張、日本防衛白書の3つの目的(人民日報)
http://j.people.com.cn/n/2015/0722/c94474-8924413.html
①2015年版防衛白書閣議了承された。「東中国海での中国による石油・ガス田開発活動に抗議し、その中止を求める」との記述と、南中国海での中国の建設活動の写真も。

②今月上旬に与党自民党防衛省起草の白書の了承を拒絶した。その理由は「中国についての記述・批判が甘い」というものだ。最終的に了承された防衛白書自民党内の意向に添って追加された。

自民党が海洋問題を利用していわゆる「中国の脅威」を誇張する背景には、3つの目的がある。
•日本は釣魚島(日本名・尖閣)係争の存在を否定し、交渉を拒絶する一方で、日本は南西諸島の部隊強化に熱を上げている。釣魚島から約150キロ以内の与那国島に監視部隊と水陸機動団の配備が含まれた。

•日本は釣魚島「国有化」を強行し、紛争を激化させた。日本側は白書で中国側公船および航空機による釣魚島海空域での権益維持のパトロールを「安定を破壊するもの」と誹謗し、南中国海では中国の建設活動を非難し、「国際社会」の懸念と称し、東中国海での中国の主権権益を奪う行為を策応している。

•米国の哨戒機は中国の南中国海の島・礁を故意に飛び越えた。米軍高官は哨戒範囲を南中国海まで拡大するよう日本を唆し、フィリピンなどを軍事支援するよう日本を後押しした。日本の防衛白書が南中国海について声高に叫ぶ目的は、さらに踏み込んだ係争介入への地ならしだ。

④今回の防衛白書発表は新安保法の衆院強行可決と重なった。猛反対する国民の声を前に、中国の「脅威」へと国民の注意をそらすことで、下落し続ける内閣支持率を救う目的である。

防衛白書は、日本の直面する安全保障上の試練を詳述したと言うより、「普通の国軍国主義化」という安倍政権の目標実現への助走と言った方がよい。

⑥日本側の事実と異なる非難に中国は反対する。日本のこの行動は地域の平和と安全に無益であり、中日関係の大局も損なう。