学者ら74人が「戦後70年総理談話について」声明

※敬称略 ◆は参照報道、①〜、(1) 〜はその要点


◆「安全保障関連法案に反対する学者の会」の代表150人が会見(毎日)
http://mainichi.jp/select/news/20150721k0000m040039000c.html
①抗議声明「衆院での採決強行は国民の意思を踏みにじる立憲主義と民主主義の破壊だ。現政権は国民世論を無視した独裁政治。違憲の法案を強行する安倍政権は学問と理性、知的な思考そのものを無視している」に賛同署名した学者は20日現在、1万1218人
②会見した150人の学者
『首相が有事だと思えば戦争できる、とんでもない法案』
『危険きわまりない現政権には即刻退場してもらいたい』
ノーベル賞を受けた物理学者の益川敏英さん(京都大名誉教授)
『安倍政権の支持率は急速に落ち、国民も危険と認識し始めている。政権に鉄ついを下さなければならない』
④法学者の高山佳奈子京都大教授
『米軍の負担の一部を日本が肩代わりした方がいいという意見が諸外国にあるが、憲法を無視していいという国際世論はない』

◆学者ら74人の「戦後70年総理談話について」声明全文(朝日)
http://digital.asahi.com/articles/ASH7K4CMVH7KUTIL027.html

 ■日本が1931年から45年までに遂行した戦争は国際法上違法な侵略戦争

満州事変から日中戦争は、日本の国家存立危機にかかわる生命線を中国東北地方、内蒙古、北支に設定し、その確保は「個別的自衛権」の行使であると強弁して開始された侵略戦争である。

第二次世界大戦は、ロシアを侵略したいナチスドイツと、清国を侵略したい日本帝国が、軍事力学的利益において一致し「枢軸同盟」を締結し、「集団的自衛権」を名分に据えて、ロシアと清国に侵略戦争を開始したので、欧米が「連合国」を結成して世界大戦になったものである。

(1) 1931年に始まる満州事変が1928年の張作霖爆殺事件以来の関東軍の陰謀によって引き起こされたものであったことは、確定された歴史事実。
(2) 当時の日本政府はこれを自衛権の行使と主張しましたが、国際連盟はその主張を拒否した。
(3) その後の日中戦争、太平洋戦争を含めた1931−45年の戦争が名目の如何と関係なく、その実質において日本による違法な侵略戦争であったことは、国際法上も歴史学上も国際的に評価が定着。
(4) 日本が侵略されたわけではなく、日本が中国や東南アジア、真珠湾を攻撃し、三百万余の国民を犠牲とし、その数倍に及ぶ諸国の国民を死に至らしめた戦争がこの上ない過誤であったことは、否定のしようがない。そしてまた、日本が台湾や朝鮮を植民地として統治したことは、紛れもない事実。
(5) 安倍総理は、「侵略の定義は定まっていない」などと国会答弁しているが、そうした発言は、日本が1931年から遂行した戦争が国際法上違法な侵略戦争であったという、国際社会で確立した評価を否定するものとの疑念を生じさせ、日本に大きな不利益をもたらす。

 ■同盟国側は第一世界大戦の惨禍を受けて反省した。日本も第二次世界大戦の過ちを犯したことを潔く認めるべきだ。

(6) 植民地の奪い合いによって20世紀前半の国際社会は、第一次大戦の甚大な惨禍を経験した。その反省として、1928年の不戦条約を代表とする「戦争の違法化」が重ねられて来た。日本も締約国であった同条約は自衛以外の戦争を明確に禁止しておりました。
(7) しかし、日本帝国は1931年に「自衛権の行使」とうそぶいて、満州を、1937には中国全土を侵略。ナチスドイツは1938年にチェコポーランドを、1941年にはロシアを侵略し、日独が1928年の不戦条約に挑戦する第二次世界大戦になった。

第二次世界大戦に勝利した連合国は、戦争の被害者1億人の惨禍にもかかわらず、日独に極めて寛大な態度を示し、侵略戦争を再発させない国内制度を要求して、植民地の独立を認めた。ドイツにおいては「ファシズムと闘う民主主義」を憲法基本法改憲不可)とし、日本では憲法9条第二項を制定させた。

(8) 戦後国際社会は一貫してこうした認識を維持してきたのであり、これを否定することは、中国・韓国のみならず、米国を含む圧倒的多数の国々に共通する認識を否定することになる。
(9) 戦後70年にわたって日本国民が営々と築き上げた日本の高い国際的評価を、日本が遂行したかつての戦争の不正かつ違法な性格をあいまいにすることによって無にすることがあってはならない。
(10) 歴史においてどの国も過ちを犯すものであり、同盟国側は第一世界大戦の惨禍を受けて反省した。日本もまたこの時期の後に過ちを犯したことを潔く認めるべきであります。そうした潔さこそ、国際社会において日本が道義的に評価され、わたしたち日本国民がむしろ誇りとすべき態度である。

 ■戦後日本の復興と繁栄は、日本に対する寛大な態度と支援の賜物であることを忘れるな。

(11) 戦後復興は日本国民の努力のみによるものでなく、講和と賠償放棄など、戦後日本の再出発に寛大な態度を示し、日本の安全と経済的繁栄をさまざまな形で支え、助けてくれた諸外国の日本への理解と期待によるものでもあった。こうした海外の諸国民への深い感謝の気持ちもまた示されるべきだ。

 ■日本に対する諸外国の寛大な態度と支援は、日本側の強い贖罪感と悔恨の念に基づき、過ちを二度と犯さないという決意を信頼したからだ。

(12) 台湾、朝鮮の植民地化に加えて、1931−45年の戦争が大きな誤りであり、この戦争によって三百万人以上の日本国民とそれに数倍(約四千万人)する中国その他の諸外国民の犠牲を出したことへの強い贖罪感と悔恨の念に基づき、そうした過ちを二度と犯さないという決意が、戦後日本の平和と経済発展を支えた原動力だったのです。実にこの思いこそ、戦後の日本の平和と繁栄を支えた原点、文字どおりの初心であり、決して忘れ去られてはならないものでありましょう。

 ■「村山・小泉談話」を構成する重要な言葉が、「安倍談話」において具体的な言語表現によって明らかにされなければ、関係諸国に重大なる不信を生じさせる。

(13) 言葉の問題を含めて、「村山談話」や「小泉談話」を「安倍談話」をいかに継承するかは、これまでの総理自身の言動も原因となって、中国、韓国、米国などを含む、日本と密接な関係をもつ国々で広く観察され政治争点化しております。
(14) こうした状況下で「安倍談話」において「村山談話」や「小泉談話」を構成する重要な言葉が採用されなかった場合、これまで首相や官房長官が談話を通じて強調してきた過去への反省(の本音)について関係諸国に不信が生まれる。
(15) 安倍総理がしばしば強調される「村山談話」や「小泉談話」を「全体として継承する」ということの意味を、具体的な言語表現によって明らかにされるよう、強く要望する。

代表
大沼保昭 (明治大特任教授 国際法
三谷太一郎(東京大名誉教授 日本政治外交史)
吾郷真一 (立命館大特別招聘教授 国際法
浅田正彦 (京都大教授 国際法
浅野豊美 (早稲田大教授 日本政治外交史)
阿部浩己 (神奈川大教授 国際法
天児慧  (早稲田大教授 現代中国論)
粟屋憲太郎(立教大名誉教授 日本近現代史
石井寛治 (東京大名誉教授 日本経済史)
石田淳  (東京大教授 国際政治)
石田憲  (千葉大教授 国際政治史)
位田隆一 (同志社大特別客員教授 国際法
入江昭  (ハーバード大名誉教授 アメリカ外交史)
内海愛子 (恵泉女学園大名誉教授 日本・アジア関係論)
遠藤誠治 (成蹊大教授 国際政治)
緒方貞子 (元国連難民高等弁務官 国際関係史)
小此木政夫(慶応大名誉教授 韓国・朝鮮政治)
小畑郁  (名古屋大教授 国際法
加藤陽子 (東京大教授 日本近代史)
吉川元  (広島平和研究所教授 国際政治)
木畑洋一 (成城大教授 国際関係史)
木宮正史 (東京大教授 国際政治)
倉沢愛子 (慶応大名誉教授 東南アジア史)
黒沢文貴 (東京女子大教授 日本近代史)
黒沢満  (大阪女学院大教授 国際法
香西茂  (京都大名誉教授 国際法
小菅信子 (山梨学院大教授 近現代史
後藤乾一 (早稲田大名誉教授 東南アジア近現代史
斎藤民徒 (金城学院大教授 国際法
佐藤哲夫 (一橋大教授 国際法
篠原初枝 (早稲田大教授 国際関係史)
申惠丰  (青山学院大教授 国際法
杉原高嶺 (京都大名誉教授 国際法
杉山伸也 (慶応大名誉教授 日本経済史)
添谷芳秀 (慶応大教授 国際政治)
高原明生 (東京大教授 国際政治)
田中孝彦 (早稲田大教授 国際関係史)
田中宏  (一橋大名誉教授 日本社会論)
外村大  (東京大教授 日本近現代史
豊田哲也 (国際教養大准教授 国際法
中北浩爾 (一橋大教授 日本政治外交史)
中島岳志 (北海道大准教授 政治学
中谷和弘 (東京大教授 国際法
中見立夫 (東京外語大教授 東アジア国際関係史)
中見真理 (清泉女子大教授 国際関係思想史)
納家政嗣 (上智大特任教授 国際政治)
西海真樹 (中央大教授 国際法
西崎文子 (東京大教授 アメリカ政治外交史)
野村浩一 (立教大名誉教授 中国近現代史
波多野澄雄(筑波大名誉教授 日本政治外交史)
初瀬龍平 (京都女子大客員教授 国際政治)
原朗   (東京大名誉教授 日本経済史)
原彬久  (東京国際大名誉教授 国際政治)
半藤一利 (現代史家)
平野健一郎(早稲田大名誉教授 東アジア国際関係史)
広瀬和子 (上智大名誉教授 国際法
藤原帰一 (東京大教授 国際政治)
保坂正康 (現代史家)
松井芳郎 (名古屋大名誉教授 国際法
松浦正孝 (立教大教授 日本政治外交史)
松尾文夫 (現代史家)
松本三之介(東京大名誉教授 日本政治思想史)
真山全  (大阪大教授 国際法
三谷博  (東京大名誉教授 日本近代史)
宮野洋一 (中央大教授 国際法
毛里和子 (早稲田大名誉教授 中国政治)
最上敏樹 (早稲田大教授 国際法
森山茂徳 (首都大学東京名誉教授 近代日韓関係史)
山影進  (青山学院大教授 国際関係論)
山形英郎 (名古屋大教授 国際法
山室信一 (京都大教授 近代法政思想史)
油井大三郎(東京女子大特任教授 日米関係史)
吉田裕  (一橋大教授 日本近現代史
和田春樹 (東京大名誉教授 歴史学