アジア安全保障会議で中国袋叩きを期待した朝日中国総局

※敬称略 ◆は参照報道

アジア安全保障会議シンガポールで閉幕。この会議は日米が働きかけて始まった軍事会議である。今回の会議で日米豪にASEAN各国が中国軍を『袋叩き』にして、中国軍が譲歩して自粛するだろう。

経済力で米国と肩を並べ、急速に軍備を近代化している中国が自らを世界平和に責任を持つ大国と自負するのなら、『国際法』を遵守は自明の理・・・と朝日記者は日米側に感情移入を深めながら、期待感をもって取材に出張したことが窺わせる記事である。

◆埋め立て、軍事目的認める 南シナ海、中国が続行を表明 アジア安保会議(朝日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11784695.html?ref=pcviewer
◆強硬中国止められず 南シナ海、埋め立て「続行」 沿岸国にじむ無力感(朝日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11784651.html?iref=reca

彼女の期待は見事に裏切られた。中国軍の孫建国・副総参謀長(海軍上将)はカーター米国防長官と中谷防衛相からの南沙諸島での埋め立てと基地建設停止要求を完全に撥ね付けただけでなく、『航行の自由を脅かすというが、それを言う裏には別の目的があるのだろう』と余裕ある態度で反発した。

米国の言う航行の不自由は全くない。あるとしたら米軍の勝手なパトロールの自由にすぎず、中国を挑発し軍事に財政を使わせて中国経済の息の根を止める作戦ができなくなるからだ、と示唆した。

中国と対峙してきたはずのベトナムは4月に共産党総書記を北京に派遣し、習近平首席に直接謝罪している。フィリピンのアキノも中国経済に依存する同国の貧化から、いつまでも日米の尻馬にのって中国と対峙しているわけにはいかなくなっている。

中国軍の孫建国・副総参謀長は言い放っている;『南中国海の部外国が難癖をつけてくる、関係国は中国・ASEANが進めている≪南中国海行動規範≫のもとに結束し関係国間で利害調整し≪同準則≫を確定すべきだ』と。ASEANの8国は中国寄りの穏健策を主張し、ベトナムもフィリピンも黙り込んだ。

米国の戦争立案機関である戦略国際問題研究所CSISの職員が「中国の支援を受ける小国は南シナ海問題では中国に反発できない。中国はウィンウィンの協力関係を築くというが、中国以外にどこの国が勝つのか」「中国の主張は国際法のどこに根拠があるのか」と追及し、中国の反発を強めた。

朝日記事が日米ネオコンに感情移入していると書きましたが、その根拠は(1)日米が主張するTPPのような罰則を持つ海洋条約を作れ (2) 南沙諸島を占領し軍事基地を作り出したのはベトナムとフィリピンであり中国は対抗して急速建設を始めたという歴史的事実に頬かむりしているからだ。

そもそも、米国は身勝手である。海洋法を遵守せよ、海洋法の解釈は米国の判断に従えと中国に要求しているが、その米国自身が米議会の反対で国連海洋法条約にいまだ加盟していない。

中国と対峙すれば、中国への輸出と投資で国家財政を回復させたいオバマのアジア回帰政策は無に帰する。中国を怒らせたらウクライナもISIL対策もさらに泥沼化する。だから、米国はフィリピンとベトナムに中国対峙をさせようと躍起になっているが、それには自衛隊の南中国海進出が不可欠だ。

日米の軍事政策は南中国海周辺国に軍拡競争を招き、軍事衝突の危機が高まる。だから中国軍は『南シナ海を不安定にしているのは軍用機や艦船を送り込む米国の方だ』(趙小卓上級大佐)と反論する。

朝日記事の結びは;「経済発展と軍事力増強を背景に自信をつけた中国は、米国に対しても、これまでにない強硬姿勢に踏み込んだとみられる。中国が南シナ海での実効支配の既成事実化を進め、軍事利用にもつなげていくことになれば、地域の緊張はさらに高まる」。

中国贔屓と揶揄されようと、言っておく;南中国海の安全管理を中国中心にすれば、海域は安定し発展の海になる。領土問題も時間をかけて話し合われ、解決する。海域の緊張を高めるのは日米の軍事介入である。中国による実効支配の既成事実化を非難するが、「尖閣」で釣魚の実効支配が覆された逆恨みだ。

中華主義と日本人が揶揄し恐れているらしいが、領土拡張に走り巨大な版図をもつ超大国となった中国の帝国は全て蒙古族鮮卑族が中国を征服した王朝である。魏、隋、唐、清が中国を征服した非中華国である。中華民族の政府は漢までの古代と、宋と明とそして現代中国である。

中華民族の政府は内政と貿易に熱心で軍事力に金を使わない。侵略されても耐えて、侵略者の中国化に努力を集中する。中国を征服した蒙古と鮮卑は「騎馬民族」であり、侵略と略奪と虐殺をその信条として、征服地の治世に関心をもたない。そして日本の政治権力は「騎馬民族」の末裔らしい。

騎馬民族の末裔である安倍らは、習近平の中国も自分たちと同じ侵略、略奪、虐殺を行うに違いないと思い込んでいる。それが日本の表層をなす偽右翼の国粋主義であり、とんでもない思い違いの不幸の始まりでもある。

現代中国は蒙古族鮮卑族に征服された国家ではなく、純度の高い中華民族国家である。経済活動に関心が強く、軍備による財政圧迫を毛嫌いし、侵略は拒否する。しかし、やられたことにはやりかえす、相手と同じ方法で同じ程度に。島の実効支配も航空識別区もパトロールも軍事演習もその通りである。

………

安倍/中谷の国会答弁 「日本が攻撃されていなくても、他国が攻撃されそれが日本の存立危機事態なら、日本は参戦できる」「日本の参戦は厳密な基準に基づき総合的に判断され、国会の承認を得て遂行される」

批判;結局は、アメリカが世界の各地で軍事的ちょっかいをしているから、それが反撃されたら日本も参戦したい、それを首相のフリーハンドにしたいのだろう。厳密な判断基準などその存在を聞いたことがない。

尖閣」で中国が攻めてきたら米国が日本を守るために参戦してくれるに違いない、それをより確実にするために、米国をして尖閣参戦に尻込みさせないためにも、「積極的平和主義」なる米軍戦闘を自衛隊員の血を持って貢献する必要がある・・・これが安倍の本音。


(参考)∞∞∞∞∞∞中華民族中国征服王朝の差∞∞∞∞∞∞∞

……… (1)中華民族を1300年間支配した内蒙古朝鮮族鮮卑)と日本………

「世界の歴史4 古代の中国(堀敏一)」講談社がつんどく状態だったので読んだ。数千年前から唐帝国までの歴史である。それで思わぬことを知らされた。中国の歴代帝国の多くは漢民族ではなく朝鮮・モンゴル族の帝国であったというのだ。

①3400年前に成立した殷と周に始まり、2800年前に始まる春秋時代という乱立政権時代、2400年前の戦国時代を経て2200年前の秦、漢帝国までは漢民族の王朝であったらしい。

②ところが、1800年前の五胡十六国時代から、魏の南北朝時代朝鮮族遼東半島鮮卑族)が黄河流域(中原)を支配した乱世であり、中国を統一した隋、現在の中国よりも広い版図(朝鮮半島の2/3、ベトナムの1/2)の大帝国を作った唐も鮮卑族であったという。

③つまり司馬遷が「史記」に記録した時代と「三国志」の時代をもって、中華民族の帝国は消滅。消滅させたのは、内モンゴルから遼東半島に本拠を持つ鮮卑という朝鮮族が南下し、黄河から揚子江まで広がり、西方から侵略した匈奴という胡人(トルコ族)をも従属させた。それが五胡十六国時代

北魏の始祖、拓跋珪(太祖道武帝)は内モンゴルを本拠としていた鮮卑である。

⑤1450年前に隋帝国を創立した楊堅(文帝)も鮮卑族で魏の十二代将軍の一人、宇文泰を先祖としている。

⑥彼は、朝鮮族の二十倍もの中華民族を統治するために、言語と風俗を取り入れ、「均田法」で豪族を衰退させ、統治させる官僚に優秀な中華民族を抜擢するために「科挙」を用いた。

⑦さらに、小作人から奴婢まで平等に田畑と宅地を与えるために、黄河流域の大規模な治水工事と開墾、杭州から長江(揚子江)と淮河を経て黄河流域の長安および北京を結ぶ大運河を完成させた。そんな最中に小野妹子の遣隋使が派遣された。

⑧隋は鮮卑の同族が支配する朝鮮半島高句麗に三度出兵したが成功しなかった。その出兵が隋帝国の庶民(胡族、中華民族)を疲弊させ、不満が募って農民蜂起(水滸伝)が頻発し、隋は崩壊した。

⑨中国を再統一したのは山西大原の地方官李淵(高祖)であり、国名は唐。李淵鮮卑族西魏の八柱国の一人李虎を先祖とする鮮卑族であった。鮮卑族は女性の権力が、公的制度とは裏腹に、極めて強力で、則天武后とイ(偉から人偏抜き)后が有名で、政治介入しなかった皇后は楊貴妃だけとも。

律令制度(刑法、行政法)を治世の支柱に置き、均田制と租庸調を完成させた。均田制は田畑の国家支給、租庸調は支給した田畑に比例した税金で、祖(稲)、調(布織物)と公共事業の労役(庸)である。日本の大宝律令(701年)で大々的に導入された制度である。

⑪盛唐期の版図は雄大であった。西は現在の中国人民共和国の新疆を超えてアラル海に達し、南はネパールを含むインダス川北岸まで、南東は雲南からベトナムまで、北はモンゴルからシベリアのアムー河口に達し、朝鮮半島は最南部を除く3/4を版図としていた。

⑫隋唐の後も元帝国はモンゴル族、最後の清も女真族で、398年北魏建国から現在までの1600年のうち、中華民族の統一帝国は明の280年間だけ。残る期間はほとんど朝鮮・モンゴル族に支配されたことになる。純粋の中華民族は「覇権」を嫌い、実生活に役立つ利と理を優先するからだ。

⑬ただし、両族共に巨大な人口の中華を統治するために漢人を官僚に使い、自らも華人化したので、現在では殆ど区別できない。東北地方(含む大連など遼東半島)は旧朝鮮族地域で、北京を含む華北も同様である。現代中国になって混血が進み、純粋の朝鮮・モンゴル族少数民族化している。

⑭白村江で日本軍を大破した唐と高句麗も同族の鮮卑系であり、百済をめぐる内部抗争の面もあった。唐が中国全土を支配したから、「中国」が朝鮮半島を侵略したと記述されるが、朝鮮族の内部抗争だったのである。ちなみに百済も日本(朝廷を含む日本人の6割)も朝鮮族である。

「中華は覇権を求める民族」だとするのは誤りだろう。版図を拡大した王朝は、大日本帝国を含めて、すべて朝鮮・モンゴル族の王朝であったからだ。それにしても、紀元後の歴史の殆どの期間を朝鮮・モンゴル族に支配させ続けたのだから、中華民族は「覇権」を好まない民族と言えるだろう。

安倍晋三も、彼を支える官僚とマスコミも朝鮮・モンゴル系である。だから「覇権意識」が濃厚であり、全アジアの軍事制覇(八紘一宇)で惨敗したが、経済で覇権を握って「優越民族観念」を自己満足させた。日本人にしみ込んだ中国人蔑視は積極的で持続的な教育なくして根本的に治癒される可能性はない。

しかし経済が成長拡大しきって飽和し、国内人事も沈滞するすると、高度成長する中国に「覇権を奪われる」という強迫観念が前面に出てくる。日本が覇権を追求したように、中国も覇権を拡大するに違いないと思い込んでいるからだ。そのニュアンスは朝日を含めた報道に常に顕れる。

中国との覇権闘争を煽る安倍晋三と日本マスコミの言動が、アジアの人々を嫌悪させる原因は、全てを「覇権の命運」でしか考えず、そのイデオロギーを押し付けようとする差し出がましさに起因している。

南京大虐殺慰安婦性奴隷も世界から非難されたから、歴史を歪曲改竄して、無かったことにし始めたが、もし非難されなかったら、アジアでの犯罪行為を自慢げな「英雄譚」か、中国人や韓国人を人間視しない「優越民族意識」の正当性を実証する例として同調を求める会話に終始していただろう。


………(2) 元帝国と明帝国………

中国脅威論は「日本と同じ言動を中国権力もする」という前提でしか成り立たない代物で、しかも現代中国が「朝鮮族モンゴル族元帝国と同じ」侵略と破壊と略奪しかもたらさぬという、ほとんど180度視野が歪んでいる嫉妬に苛まれたあてつけでしかないのです。

まあ、私たち日本人の6割ほどは朝鮮族で、その朝鮮族は残虐な暴君です。一方、中華民族はほとんど2千年間も朝鮮族蒙古族に国家支配を許すほどの政治権力志向に関心の薄い、従って、自立意志だけが存続の基盤でありえた民族であることを『日本報道は歪曲』しています。

習近平政権は紀元後の2千年間の大部分を支配した朝鮮・モンゴル族の中国帝国を範とせず、やっと280年間だけ中華民族の国をつくった江南(揚子江/長江の南)の明朝を範としている。明朝はモンゴル族元朝のような軍事的支配を忌避し、世界貿易にその活路を見出したからだ。

明朝の海軍大臣であった鄭和は、台湾を自由貿易地とし、元来密接な経済関係にあったベトナムを超えて、タイやインドネシア、そしてインドまで定期貿易航路を確立し、それを維持するために多数の中華民族を東南アジアから南アジアの貿易拠点都市に定住させた。それが今日の華僑の中心をなしている。

明朝の鄭和将軍が確立した中国と南アジアの経済共同体は、いま習近平政権で「海の21世紀シルクロード」として再現されようとしている。それを実現させると、日米欧が覇権を握ってきた世界金融体制を破綻の淵に落とし込むと日米は叫んだが、欧州は違う感想を抱いていたのだ。

明朝の鄭和将軍が構築した南アジア経済ベルトが、軍事的覇権を秘めていたかどう判然としないが、少なくともモンゴル族元朝朝鮮族大日本帝国のような『先軍後経』政策ではなかったといえる。

AIIBに参加申請した英仏独などには失礼な言い方かもしれないが、かっての植民地帝国欧州に、習近平の『先経後軍』が欧州植民地主義の全面的否定を回避する、居心地の良さを提供するといえるのではないか。

テレ朝経済部記者氏の『英仏独のAIIB参入は内部から中国覇権を打破するトロイの木馬』で、AIIBが破綻しても『損失が少ない欧州』はAIIB内部で存分に中国覇権を滅却させる敵地潜入特殊部隊といった主張は白日夢。ドイツは1兆円を出資する。これを捨てて良いと日本は身勝手に考える。

明朝の鄭和をなぞるなら、今のAIIBの目的は東南アジアと南アジアおよび中央アジアの既存經濟を破壊することなく、地域経済体を結ぶ経済ベルトとその経済ベルトに無数の産業特区を設置し、地域経済を活性化することにある。日米の世界金融体制がその実現を頑固に陰湿に拒否してきた因果なのだ。


………(3) 清帝国満州族鮮卑女真族)の中華支配………

この2千年間中国を支配した政治権力で中華民族の純度が高いのは⑴習近平政権⑵明国⑶宋国の順。あとは朝鮮モンゴル族による中華征服政権。侵略される度に中華民族は忍耐力と民族的反抗心を強固にした。習近平政権の中国はそんな中国の頂点に向かう。米国が太刀打ちなど不可能。好き嫌いではない現実だ。

もしも北朝鮮が消滅したら米軍はアジアに駐留する根拠を失う。安倍はそれで中国を代替の軍事脅威を必死の形相で露骨だが、肝心のアジア各国がそう思っていない。フィリピンとベトナムすら経済を中国に9割依存し、中国対峙は安倍からの賄賂を受け取った分のポーズでしかない。

竹島尖閣」はポツダム宣言受諾で議論の余地ない非日本領。安倍は代わりに南中国海を紛争海域にしているが、切り口を変えてみると、南中国海問題を起こしたのはベトナムとフィリピンによる不法な実効支配に始まっている。

ベトナムは中国人の国で、その京族は中国の中原から南遷した由緒ある中国人で、フィリピンもアキノ一族も経済界も中国渡来人で占有されている国だ。戦争大好き、虐殺嬉しがる蒙古・朝鮮族の1500年にわたる中国支配の難民がベトナムとフィリピンとも言える。

経済合理主義だから安倍が無尽蔵に金をくれるなら、多少芝居をしてもいいかなという程度であり、北京はそれをよく知っている。AIIB加盟申請もベトナムとフィリピンは躊躇なく真っ先に申請し、北京はそれを歓迎して受け入れた。

安倍はマスコミを使って、中国内部の民族間葛藤を拡大させ、アジアの中国人国(経済では例外なし/政治でもフィリピン、ベトナム、タイ、シンガポール)と北京間の葛藤を煽って宣伝に務めている。こういうことをしたら、日本の「国益」なるものは毀損しかないから、それは『自虐行為』だ。

ペンタゴンを支配するネオコン官僚もオバマ政権のアジア「経済」回帰を失敗させようと、しかし恐る恐る中国挑発を繰り出す。日米軍に対抗して中国が航空識別区を設定したら、B52に白旗を掲げさせて「尖閣」通過など茶番劇で、先週の南中国海中国軍基地建設に向かおうとした小型戦闘艦も同じだ。

その米軍行動を質問された米国務省報道官は「南中国海の自由航行が犯され、米国の死活問題」と言ったが、その海域を通過する米国民間船など皆無。だが問題にしないと安倍が日米安保を手抜きし、米軍財政を覆すから困る/あるいは中国のミサイル原潜が深い同海域に集中するから警戒が、でしかない。

中華民族は戦争を嫌う。依怙地なほどに農耕民族であり、田畑があらされることを嫌う。北方の朝鮮族モンゴル族遊牧民族で極端に戦闘好き、侵略好きであり、この2千年間中国はその7割の期間を両族による侵略支配を受けてきた。中華民族の国と言えるのは明国くらいしかない。

中華民族老荘の『無為』と経済体制の緻密化と活性化に力を注ぎ、政治は朝鮮・モンゴル族の支配を覆そうとはしなかった。代わりに政治支配する両族の「中華化」を進めて無害化した歴史だ。度重なる朝鮮・モンゴル族内部の抗争葛藤の混乱期すら、中華民族は経済体制の高度化から気を逸らさなかった。

中国を政治支配する朝鮮モンゴル族の内部葛藤と分裂の混乱の度に、中華民族の忍耐力と自活経済を高度化する結束力が高まり、政治や外交はともかく、経済生活への外国の介入を排撃する中華式民族主義が深まり高度化してきたと言える。それは2千年以上の歴史の積み重ね、米国など脚元にも及ばない。

私が最近まで10年間奉職した中国系企業でも北方系と中南方系の極端な違いを経験している。北京の子会社は日本本社を飲み込もうとする。それは経営方針や商品開発で鋭く対立した。だが長江流域以南の子会社は融和的で日本の長所を学ぼうとしていた。日本マスコミの中国脅威論に騙されてはならぬ。

現在の北京政府はその8割が北方系ではなく、本質的に戦争を嫌うひとたちなのだ。しかし、安倍がそんな北京政府を反安倍に向かわせたことは、融和的であった中華民族の全てが反日化する原因を安倍が作り続けていると反省したほうがいい。

北京政府は言う「私たちは安倍ら日本極右の言動に心を煩わされるほどの暇はない。中国14億人の生活を守り向上させ不満を減らすことで手一杯だからだ。だから、安倍の露骨な挑発には、同程度の反応をしておけば十分である。あとは日本人が自ら清算すればいい」と何度も言っている。

安倍は8割以上を反中国に割いているが、中国が「同程度に反応する」限り、その手間暇は中国にとって安倍の十分の一に過ぎぬ。安倍の好きな軍事的対峙もそれに必要な努力は、安倍側を1とすれば中国側は0.1に過ぎない。そう認識すれば安倍の愚かさがわからぬはずはない。


………………

自衛隊員のリスクは増えない』中谷防衛相。リスクが増えないのなら罨法法制は不要。演習などですでに1800人の自衛隊員が死んでいるから、安保法制で2〜300人死んだところで、大勢に影響なしと安倍や中谷は考えているのだろう。

イラクサマワ派兵で100人近い自衛隊員が不慮の死をとげているが、戦死者はゼロであり、これはフクシマ原発死者ゼロと同じ理屈だ。今後5年間で2〜300人戦死したら、戦死以外の不慮の死は数千人になるのかも?

しかし冷たいようだが、憲法違反を承知で入隊しておられる自衛隊員は、憲法違反の軍事介入で戦争を生起させ、拡大させるために戦闘をさせられる。いや、弾があたるまで撃ちかえすなと命じられて戦死者になり、それが安倍によって、本格戦争開始の大義に利用されるのかもしれない。

そして、「自衛隊員のリスク」論は何も生み出さないだろう。オバマは戦死者4千人に怯えてイラクとアフガンからの撤退を言い、米国民もそれを支持した。しかし、イラクとアフガンに対する大義の崩壊した大戦争の反省などする気はオバマにも米国リベラルにも無いだろう。つまりはまた繰り返す。

米国はイラクにもアフガンにも宣戦布告していない。攻撃する大義に挙げた証拠は悉く偽装か錯誤であったから、これらは『侵略戦争』である。米軍が何千人死のうと、問題外である。しかしイラクとアフガンでは直接間接に100万人が犠牲になったと言われている。犠牲者は誰を恨めばいいのか?

………………

「初代イラク復興支援隊長だった佐藤 正久参議院議員は、隣のオランダ軍が攻撃を受ければ、情報収集の名目で現場に駆け付け、あえて巻き込まれ、応戦するつもりだった」と公言している。佐藤正久は戦争屋であるから、弾の飛んでこない自衛隊陣地の蛸壺に籠る生活を嫌がったらしい。

憲法9条の改正に失敗しても戦争は可能だ。砲弾が飛び交う交戦国陣地かその前に自衛隊員を並ばせたら、砲弾にあたって死ぬ。死ねば、あとは正当防衛を掲げて攻撃に参加できると佐藤は主張している。佐藤が憲法改正に拘るのは、自衛隊員を逃げ出させないためでしかない。

イラク戦争は言掛りをつけた一方的な侵略戦争であった。佐藤議員はその戦争を正しい戦争と言ってはばからぬが、それは安倍の大東亜戦争聖戦論と同じ。安倍はポツダム宣言6項の『世界支配を目論んだ侵略戦争の犯罪者を永久に排除する』というくだりに気色ばんでいる。世界支配など言掛りだと。

最近まで流行していた「八紘一宇」という聖戦を賛美する4字熟語は「世界支配」ではないと安倍は思っているが、身勝手な屁理屈だ。大日本帝国は中国を占領し植民地でもなく、ジンギスハーンのような帝国を樹立できると豪語している右翼が多数であった。

だが、米国には勝てない。だからドイツと組んで世界支配を達成しようと目論んだのだ。日本は日本単独での戦争、それも宣戦布告した米英蘭豪だけとの関係に絞り込み、中国には「事変」はあったが「戦争」はしていないと開き直っている。だから、今回の安保法制で中国との全面戦争も可能だと言った。

「正当防衛」とか「国家存亡にかかわる緊急事態」とかをでっち上げればなんとでもなる。相手をして攻撃せざるを得ない状況に追い込めば、憲法9条の解釈変更で全面戦争が可能だ。だがそれは憲法前文や9条2項の精神を冒涜するものである。


………(4) 中華民族を征服した蒙古・朝鮮族の性格は中華民族と異なる………

モンゴル族を貶すわけではないが、ただ一度日本を攻撃してきた中國の王朝は元帝国であり、元帝国は中華を侵略し乗っ取った支配民族モンゴルであった。生粋の中華人民に近い宋、明は外国を侵略せず、防戦一方であった。今の中国も同じである。

中国が攻めてこないので中国の領土を侵略すれば中国が防衛に来るから日中戦争を開始できると、元都知事は考えたのだろう。佐藤正之の「駆けつけ警護戦闘論」と同じ穴のむじなである。

佐藤正之のサマワ蛸壺で思いだしたことがある。満州事変で満州帝国を作り、岸信介を首相格で送り込み、占領した内モンゴルで生産される阿片の売買益を英国から奪って軍事費にしながら、軍は次に北支事変を起こした。

北京の北に長城の東端がある。そこを超えて北京、天津、石家庄、太原、済南などの北支を占領する軍事侵攻であった。蒋介石の国民党軍が防衛にあたったが、敗戦に次ぐ敗戦で壊滅し、日本の関東軍は北支の都市を占領し、都市間の鉄道を確保した。

しかし、都市の城壁を一歩出ると、紅軍の遊撃隊があらゆるところで出没し、日本軍は手も足も出なくなった。それで都市の城壁内に籠ると、紅軍は都市間鉄道を破壊し兵站を途絶えさせ、都市内では労働者のストライキが頻発した。

弾も食料も尽きる、隊列を組まないと都市内も歩けない。それで日本軍は都市間鉄道の確保に都市を出た。すると四方八方から弾が飛んでくる。鉄道沿線に陣地を構えるとゲリラ戦の格好の餌食にされた。

日本軍は仕方なく鉄道沿線に日本兵1か2人が入れる蛸壺を20万個も掘ってそこに籠城させたが、食料と弾薬の供給に事欠いた。

北支で蛸壺に追い込まれた日本軍は、北支を捨てるかのように、長江流域の占領という博打にでた。ここでも大都市の蒋介石軍を悉く敗退させたが、都市の郊外では北支と同じ状況だった。百万個も蛸壺を掘るわけにはいかない。どうやって三回の食事を配給するのか、兵隊はどこで用をたせばいいのか?

そこで日本軍はいわゆる「三光作戦」を採用した。兵隊の日課は、部隊単位で午前索敵と戦闘、午後食材現地調達、夕刻調理、夜食事になった。ここまで日本は宣戦布告なき「事変」を連続して起こすことで戦闘をつないできたが、今回の安保法制でも完全に可能だ。

しかし「事変」によって日本軍は中国人3千万人を殺したことを忘れてはならない。人道主義を掲げるのならなおさらである。日本軍は兵隊を蛸壺に籠城させる。夜紅軍(八路軍、四路軍)が攻めてくる。抗戦すると紅軍はさっと引いてしまう。その繰り返しが極めて中国農村軍的で有効であった。

………………

大日本帝国が全面降伏したら蒋介石が紅軍をだまし討ちで5千人を殺し、内戦となった。蒋介石の国民党軍は迅速に都市部と鉄道を占領した。しかし、そのあとは日本軍と全く同じ戦況になって、国民党軍は台湾に落ちのびた。

内戦再開時の兵力は国民党軍420万に対して紅軍90万人であった。国民党軍は米軍から供与された豊富な近代兵器(爆撃機、戦闘機、戦車、大砲)を大量に保有していたが、紅軍には何もなかった。それでも完敗したことを中谷と安倍は勉強すべきだ。

近代兵器で武装した420万の大軍でも中国を軍事支配できない。核兵器も多弾頭ミサイルも戦闘機も爆撃機も軍事衛星もイージス艦も原潜も練習空母も保有する今の中国軍と対峙し軍事支配などできるはずがない。中国に島を取られるのではなく不当に実行支配したから、領海管理を始めた程度なのだ。

なによりも中華民族は(モンゴル族に征服されぬかぎり)他国を侵略しない。それは5千年の歴史が証明している。