憲法9条完全形骸化、日本政府は戦争法を手中にした

※敬称略。◆や【写真】は報道、①〜はその要点

憲法9条は完全に形骸化し、安倍政権は「戦争義務法」を手中にした、次の段階である9条改正は「本格ファシズム体制」しかない。今回の集団安保法制の閣議決定憲法を無視した抑止力で中国を封じ込める目的なら、次の9条改正は中国を殲滅できる軍国になる。

大日本帝国もドイツ・イタリアと枢軸国同盟を結成し、集団的自衛権を行使した。日本はソ連を東から軍事牽制し、ソ連軍を偽満州帝国国境に張り付けて、西でのドイツによるソ連侵略を可能にしていた。それは今回安保法制でも完全に可能である。

安倍と外務省は愚かだ。自衛隊単独で中国とロシアに軍事対峙するには、国防予算を現在の3.5倍に増額しないと軍事バランスは取れない。つまり、現状の予算4兆8840億円を19兆7400億円に増額。このとき名目GDP比は3.5%になる。

さらに、軍事費と戦力の関係は、名目ではなくIMFの使う購買力平価に比例する。購買力平価換算すると、自衛隊予算は34兆3440億円でないと軍事バランスが取れない。名目GDPの5.8%=国税収入の7割が軍事費という大日本帝国を凌駕する超軍事国家。

自衛隊予算34兆円などありえない。外務官僚は米軍に肩代わりさせよう考える。しかし、29兆円相当を米国に負担させることも到底不可能で、5兆円相当が限界。自衛隊在日米軍の合計が10兆円規模となるが、中国とロシア(の1/3)の半分しかない。

だから、異様なほどに敵哨戒兵力に依存し、反撃では戦略核をちらつかせる「抑止力」しか言えなくなる。つまり局地戦闘も不可能なのだ。

【軍事予算】IMF購買力平価換算(名目)
抗日戦勝同盟(中国+露/3):2862億$(1645億$)
日 米 同盟(日本+米/3):2083億$(2070億$)

中 国:2406億$(1408億$)名目GDP比1.3%
ロシア:1370億$( 712億$)名目GDP比3.8%
日 本: 419億$( 407億$)名目GDP比0.9%
米 国:4990億$(4990億$)名目GDP比2.9%
日米地位協定予算(防衛省予算外)2044億円―17億$を加えるとGDP比1.0%
※米国には州軍が存在し、GDP1%とすると、合計で3.9%になりロシアと同率

また、米軍に中国対峙させると、オバマのアジア回帰政策が失敗する。少なくとも米国企業が中国市場で失う機会損失は数十兆円になる可能性がある。ドイツやフランスやイギリスが漁夫の利を得るからだ。

米国が中国市場で失う機会損失を安倍はTPPでの国富贈与と自衛隊員が全世界の米軍戦闘地域で流すだろう血液で支払おうとしている。

経済力でも日米はBRICSなど非同盟国に差をつけられており、欧州は全て中国に靡いている。ほとんど孤立状態である。

AIIBに加盟申請した主要8国と非加盟を貫いた日米の名目GDPはAIIB加盟が27兆$に対して日米は22兆$と拮抗する。しかし、物価と為替レートが乖離している中国やロシアやインドと比較するにはIMFの使う購買力平価GDPを使う必要がある。

そして、購買力平価GDPでは、AIIB加盟主要8国が43兆$に対して日米は22兆$と、倍の差が付いてしまった。逆転の可能性は無い。

【中国の「一帯一路」経済政策と「AIIB」金融政策の背景をなすGDP規模】
・・・IMF購買力平価GDP(国連統計名目GDP
AIIB加盟(主要):43兆3487億$ (27兆1803億$)
・・・中国+インド+ロシア+ブラジル+インドネシア+ドイツ+フランス+イギリス
AIIB非加盟(主要):22兆1696億$ (22兆0352億$)
・・・米国+日本
【2014年GDP順位】
順位.国  名:IMF購買力平価GDP( 国連統計名目GDP
 1.中   国: 17兆6173億$ (10兆3803億$)
 2.米   国: 17兆4189億$ (17兆4189億$)
 3.イ ン ド:  7兆3759億$ ( 2兆0495億$)
 4.日   本:  4兆7507億$ ( 4兆6163億$)
 5.ド イ ツ:  3兆7215億$ ( 3兆8595億$)
 6.ロ シ ア:  3兆5645億$ ( 1兆8574億$)
 7.ブラジル:  3兆2638億$ ( 2兆3530億$)
 8.インドネシア:2兆6761億$ (   8886億$)
 9.フランス:   2兆5807億$ ( 2兆8469億$)
10.イギリス:   2兆5489億$ ( 2兆9451億$)

安倍晋三は安保法制閣議決定後の会見で、「平和主義」を連呼しながら、中国との軍事的対峙を米軍に依存して「中国抑止力」とすることを隠さなかった。彼が主張した「三つの軍事的脅威」は国際テロ、戦闘機スクランブル激増、北朝鮮ミサイルを上げたからだ。

北朝鮮は脅威を賑やかに見せかけるためのダミーに過ぎない。米国憲法は外国に対する軍事支援を領土紛争がなく、当該国が実効支配している場合に限定している。つまり、尖閣竹島も米軍は血を流さない。中国は核兵器保有するからなおさら戦争はできない。

安倍の国際テロうんぬんは、テロ戦争で米軍が流す血を自衛隊員に肩代わりさせることをもって、5兆円相当の支援―核の傘と空母機動部隊―の対価を支払う目的である。

ところが、安倍会見では、テロ戦闘に参加することは『絶対に無い』と言い切った。安倍の虚言癖から、『絶対に無い』は『積極的に有るようにする』を意味するが、当面米国は激怒するだろう。米議会や米国大学での演説を全て否定したからである。

オバマ政権はイランとキューバと歴史的和解に進み、更にロシアに謝罪に近い妥協を申し込んだ。ケリー国務長官は北京とソウルに飛んで、安倍の米議会演説に対する米国政府の解釈と具体的対応を非公式に説明して、中韓の不信感と怒りを払拭するだろう。

安倍が安保法制閣議決定後の会見で何度も『絶対に無い』と言い切った背景が、彼の虚言癖でないとするなら、これが米国政府が解釈した安倍演説の意味であると牽制されたからであろうか。

ケリーによる中国と韓国への説明は、公表できる部分は安倍会見と同じになり、非公開の部分では、安倍の虚言癖や偽装癖に対する嫌悪を共有し、対策を議論するのだろう。豪州安倍訪問時にアボット首相が漏らしている『安倍はもう大丈夫。米豪で説教したから』。

だが、米豪が『もう大丈夫』という説教の内容は、安倍の狡猾な偽装癖に苦しめられた中韓を納得させないだろう。外交儀礼を取り除いた直截的表現と具体的政策で安倍が非礼を詫びない限り両国が納得することはない。


………不安、恐怖、抗議………

◆安保法案閣議決定:反対市民、列島各地でデモ、集会(毎日)
http://mainichi.jp/select/news/20150515k0000m010123000c.html
戦後70年を経て、日本の安全保障が大きな転換点を迎えた。安全保障関連法制が閣議決定された14日、全国各地でさまざまな声を取材した。
①官邸前
・「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」主催の抗議集会。参加した市民ら500人が「憲法9条を壊すな」と訴えた。
・銀座では法案に抗議する女性たちのデモ行進もあった。
・官邸前で声を上げた千葉県柏市の教員、田宮高信さん「未来の子供たちのためにおかしな法律を残すわけにいかない」。
横浜市港北区から駆けつけた主婦の小野洋子さんと三毛ふみのさん「一人一人が集まって世論になる。自分たちのことだと想像力を働かせて」。
・札幌市内でも市民ら約300人が「安保法制撤回」のシュプレヒコール。専門学校生の女性「戦争が現実味を帯びてくるようで、怖くなり参加した。身近な人が死ぬ未来にしたくない」。
山形市の市役所前、市民や市議ら約40人が額に汗を浮かべながら抗議の座り込み。山形県平和センターの佐藤克副議長「日本が戦争する国になるかどうかの瀬戸際だ」。
・昨年7月の集団的自衛権行使容認の閣議決定を巡り、違憲だとして無効確認などを求める集団訴訟を準備する三重県松阪市山中光茂市長(39)「国民が戦後守ってきた国の方向性を無視している。暴走を止めないと、取り返しがつかなくなる」と危機感。

②基地周辺
陸上自衛隊大久保駐屯地京都府宇治市)で、中東のゴラン高原にPKOで派遣された経験がある30代の元自衛官「他国軍が攻撃される可能性があるのに助けに行けないのはジレンマだった」と安保関連法案に理解を示す。
陸自の演習場や駐屯地のある滋賀県高島市で、弁当を駐屯地に届ける飲食店男性「災害救助などで自衛隊は身近な存在だが、戦闘に参加するとなれば印象が変わるかもしれない」。
陸自中部方面総監部のある兵庫県伊丹市、隊員らがよく訪れる酒店の店主「顔なじみの隊員の苦労が増えるのではないか。日本が貢献できることをしてほしい」。
・米軍の高性能レーダーが配備された京都府京丹後市自衛官OBの男性(73)「北朝鮮や中国が黙っていない以上、集団的自衛権は必要で、自衛隊員は命を投げ出す覚悟が求められる。でも実際には生活のために隊員になった者も大勢いる」と心配。

③沖縄
・沖縄の本土復帰を記念する「5・15平和行進」の結団式が14日、那覇市で。参加者約600人は安保法案に怒りの声。「きょう安倍政権は戦争法案を閣議決定しようとしている。集団的自衛権を認めていない憲法9条を覆し、戦争への道を突き進もうとしている」。
・「平和フォーラム」(東京都)の藤本泰成事務局長が壇上で訴えると、会場から拍手が湧き上がった。
・日本の米軍基地の7割が集中する沖縄、自衛隊と米軍の活動が一体化し、沖縄の基地負担がさらに増す。
沖縄県職員組合の下地哲治さん「沖縄で生まれ育ち、厳しい沖縄戦と戦後を生き抜いてきた祖父母や両親の思いを背負っている。政府は沖縄の声に耳を傾け、軍事力ではなく平和外交を進めてほしい」。
・埼玉県平和運動センターの沢田武司さん「自衛隊が海外で活動範囲を広げることには反対だ。日本まで戦争に巻き込まれかねないという危機感を持っている」。

◆「戦争はさせない」 首相官邸前などで抗議活動」(TBS)
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2491809.html

【写真】日500名市民在首相官邸前集会抗议新安保法制(環球時報
http://world.huanqiu.com/photo/2015-05/2776182.html
今日の首相官邸前での安保法制抗議集会の写真を環球時報が報道した


………閣議決定後の安倍会見………

公明党の北側の顔見て連想する・・・日蓮立正安国論」は「中国(元)が攻めてくる、国民総動員令で大軍拡し安全保障」という国家社会主義ファシズムだ。そして安倍晋三は以前とは全く異なる「上皇」状態にある。人事を先にすすめて、有無を言わさぬ体制を作り、あとはやりたい放題、世論も報道統制で何も知らない。安倍が怖いのは米国だけしかない。

◆政権、安保政策を大転換 法案閣議決定、国会審議へ 首相「脅威に切れ目なく」(朝日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11754142.html?ref=pcviewer
◆安保関連法案:閣議決定 安保政策の歴史的転換(毎日)
http://mainichi.jp/select/news/20150515k0000m010096000c.html
①安倍政権は14日夕、戦争中の他国軍を後方支援する新たな恒久法案と、集団的自衛権を行使できるようにする武力攻撃事態法改正案など安全保障法制の関連11法案を閣議決定した。

憲法9条に基づく専守防衛を根幹としてきた自衛隊のあり方が変わり、戦後の日本の安全保障政策が大きく歴史的に転換することになる。

③米軍への後方支援など、自衛隊の海外活動も飛躍的に拡大される。安倍は「厳格な歯止めを掛けた」と強調するが、いつもの騙しの手管だ。

④積極的平和主義に関する安倍の断言;
「もはや一国のみでどの国も自国の安全を守ることはできない時代だ」
「不戦の誓いを将来にわたって守り続けていく。そして国民の命と平和な暮らしを守り抜く。この決意のもと、平和安全法制を閣議決定した」
アルジェリアやシリアなどでのテロで日本人が犠牲になった。私たちはこの厳しい現実から目を背けることはできない」
「かつての湾岸戦争イラク戦争のような戦闘に自衛隊が参加することは、今後とも決してない」、
イスラム過激派組織イスラム国(IS)掃討作戦への自衛隊の後方支援参加もありません」。

集団的自衛権の行使が必要だと安倍が断言:
以下が、今危険極まりない、国家を殺める可能性がある重大な転換が緊急であると安倍が述べた内容だ。
北朝鮮の数百発もの弾道ミサイルは日本の大半を射程に入れている。国籍不明機に対する自衛隊機のスクランブルの回数は10年前と比べて7倍に増えた。日米同盟が完全に機能することを世界に発信することで抑止力はさらに高まり、日本が攻撃を受ける可能性は一層なくなっていく」
「日本近海で米軍が攻撃される状況は、私たち自身の危機だ」
武力行使の新3要件による厳格な歯止めを法案に定め、極めて限定的に集団的自衛権を行使できることとした」
「切れ目のない対応をしっかり整えていくこと、(日米の)同盟関係がしっかりしているということは、抑止力につながっていく」
「他国軍への後方支援など自衛隊活動の拡大でリスクが高まるとの懸念を払拭するために、隊員の安全確保は当然のこと。明確な仕組みを設ける」
「だが、自衛隊発足以来、1800人の隊員がさまざまな任務で殉職している。隊員は危険を顧みず職務を完遂することを宣誓したプロフェッショナルだ」
つまり自衛隊員は死ぬために奉職していると安倍が述べた。今のところ「特攻」を命じる必要はないが、過酷な戦闘に果敢に挑戦し、敵を殲滅してこそ、平和がある。それが積極的平和主義の神髄なのだと言っている。

閣議決定された関連法案は、武力攻撃事態法・周辺事態法(重要影響事態法案に名称変更)、国連平和維持活動(PKO)協力法などの改正案10本を束ねた一括法案「平和安全法制整備法」と、国会の事前承認があればどこでも素早く自衛隊を紛争地に派遣することを可能にする「国際平和支援法案」の二本立て。

⑦日本の平和
・武力攻撃事態法改正案では、日本が直接攻撃を受けた場合ではなくとも、日本と密接な関係にある他国が武力攻撃され、「日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険(存立危機事態)がある」と政府が判断すれば海外で武力行使ができる。
・日本周辺有事を想定していた米軍支援のための周辺事態法は、日本への影響が甚大であれば、「地球規模」で米軍などを支援できる重要影響事態法案に改定された。
・武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」で米軍艦船などを防護したり、外国船舶や艦船を臨検するための規定は自衛隊法改正案に盛り込まれた。
・政府は14日の臨時閣議で、武装勢力が離島を占拠した場合などで速やかに自衛隊に出動を命じるため、電話による閣議決定海上警備行動や治安出動を認めることも決めた。

⑧国際社会の平和
・国際社会の平和が脅かされた際に他国軍を後方支援する「国際平和支援法案」を新設。
・国連平和維持活動(PKO)協力法改正案は、武器使用基準を緩和
・治安維持活動や人道復興支援でPKO以外の活動への参加も可能とした

世論調査の悪化だけが心配の安倍
「厳格な歯止めを法律案の中にしっかりと定めた。さらに国会の承認が必要となることは言うまでもない。極めて限定的に集団的自衛権を行使できることとした」
「それでもなお、米国の戦争に巻き込まれるのではないかという漠然とした不安をお持ちの方もいるかもしれない。そのようなことは絶対にあり得ない」
「法整備は不可欠だと確信している。世論調査などで反対が根強いことは知っており、国会審議を通じ分かりやすく丁寧に説明」する(から、国民はしっかり学び理解せよ)。

………安保法制は歴史的大転換………

①「しっかりと国会を通じて丁寧な説明をしていきたい」と首相自身がこう言わなければならないほど、集団的自衛権の行使容認を含む安全保障法制の整備について、国民の理解は進んでいない。

②「もはや一国のみで自国の安全を守ることができない時代」に入っているのも事実だろう。

③しかし、悪化した安保環境と今回の法整備がどのようにかみ合うのかについては、十分に説明されたとは言い難い。関連法案の整備が、かえって東アジアの安保環境を悪化させることになるのではないか、という危惧も消えない。

④安倍の本音は、「台頭する中国の軍事力を抑止」するために、日米同盟を強化し、それを後戻りさせない法整備を行うことにある。だが、首相は中国とどう向き合うつもりなのかについて語らず、外交と自衛隊の行動で語らせようとしている。

………今後のおもな日程………
<5月15日> 安保法制11法案を国会に提出
<19日> 衆院に法案審議の特別委員会を設置
<20日> 党首討論
<26日> 衆院で法案審議入り?
<6月7、8日> ドイツでG7サミット(主要国首脳会議)
<24日> 通常国会会期末、大幅延長?
<7月下旬〜8月上旬> 政権が法案成立目指す
<夏> 安倍首相が戦後70年談話を発表
<8月15日> 終戦の日
<9月> 自民党総裁

◆政治の責任、見失うな 安保法制閣議決定 政治部長・立松朗(朝日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11754144.html?ref=pcviewer
①平和国家を守るための強固な枠組みだった「憲法」の歯止めを緩め、その役回りを「政治」が引き受ける。安倍晋三首相の言う「安保政策の大転換」とはそういうことだ。

②14日に閣議決定した安保法制で、自衛隊ができることは大きく広がり、集団的自衛権の行使に踏み出す。「憲法があるからできない」ではなく、「政権」、そして国会が「する」「しない」を決める。

③これは憲法改正に等しい解釈見直しである。9条解釈変更を閣議決定してから1年。政治の場、特に国会で国のあり方について突っ込んだ議論はない。国民投票に問うべきほどの大転換が、このままさらりと成されていいはずはない。

④会見で「戦争法案といった無責任なレッテル貼りは全くの誤り」「戦争に巻き込まれる、という批判がまったく的外れであったことは歴史が証明している」と語った。

⑤しかし、憲法解釈を変更しないと本当に国民を守れないのか、しっかり論じられるべきだろう。

⑥例えば、中東のホルムズ海峡での機雷除去がある。経済危機を理由に集団的自衛権を行使していいのか、海外での武力行使専守防衛と矛盾する。政府の国会答弁は「できるかもしれないし、できないかもしれない」。議論材料を示す気さえないようだ。

⑦与党協議の最終局面で焦点になったのは「国会の事前承認」だった。しかし、政権の下請け機関と化した国会であれば、事前であろうと意味はない。こんな先例を作ったら、国会は信を失い、立ち直れない傷を負う。

◆(安全保障法制)「戦後改革」首相我が道 解釈改憲、一強体制で強行(朝日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11754062.html?ref=pcviewer
①2006年9月、戦後最年少で就任した安倍晋三首相は、「戦後レジームからの脱却」を政権最大のテーマに掲げた。第1次政権の発足前に出版した著書でその象徴として憲法9条を「集団的自衛の権利があっても行使できないのは『禁治産者』の規定に似ている」と酷評した。

②だが、首相の唱える「戦後改革」に理解は広がらず、同年7月の参院選で大敗。その約2カ月後に退陣した。

③そして、安倍首相は第2次政権で「アベノミクス」を前面に打ち出し、表向きは「安倍カラー」を封印。13年夏の参院選で勝利すると、再び「戦後改革」路線に踏み出した。

内閣法制局長官に、集団的自衛権の行使容認派である小松一郎・元外務省国際法局長を据えた。さらに国家安全保障会議を立ち上げ、特定秘密保護法を成立させた。武器輸出三原則の「原則禁輸」を見直し、政府の途上国援助(ODA)で他国軍支援も認めた。

⑤首相は自民党一強体制を背景に法案の閣議決定を強行。

⑥今年4月下旬の訪米中、首相はワシントンで行った演説で「私の外交安全保障政策は、アベノミクスと表裏一体だ。デフレから脱却して経済を成長させる。社会保障の基盤を強くする。当然、防衛費をしっかり増やしていくことになる」。目指すゴールは9条改正だ。

⑦だが、「なぜ今、必要か」という理解が与党内でさえ十分に浸透していない面もあると、谷垣禎一自民党幹事長は首相に伝えている。

⑧3〜4月にかけて朝日新聞が行った世論調査で、自衛隊の後方支援の範囲が広がることについて「賛成」は39%、反対は50%。また、政権が集団的自衛権を使えるようにしたことには「評価する」35%、「評価しない」54%だった。

⑨「自衛隊が何でもできるような印象が広がっている」(政府高官)との懸念もあり、政府は今回の法案を「平和安全法制」と名付けた。騙しの上塗りである。

民主党枝野幸男幹事長は「ことさら『平和』を言うことは中身の危うさを象徴している」と批判。菅義偉官房長官は「法整備で抑止力を高め、国民の平和な暮らしを守ることが政府の役目。名称はぴったりだ」と反論。

※だが、安保法制が抑止力になるか中国軍に聞いたらどうなるやら。

⑪首相は会見で「自衛隊発足以来、1800人の方々が様々な任務で殉職されている。危険な任務が伴うことはもっと理解していただきたい」と訴えた。自衛隊員にも「特攻精神」を強要していると理解されても反論に力はないだろう。

自民党は他党の理解が得やすい「緊急事態条項や環境権」などで改憲前例を作り、その後に9条改正なども目指す「2段階」戦略で臨む方針。

⑬しかし、自民党関係者から「安保法制で集団的自衛権の行使ができるようになれば、憲法改正は必要なくなるんじゃないか。安倍総理はやるべきことを十分やった。もう急ぐべきじゃない」という声を聞く。※第二次安倍内閣は軍事クーデターに匹敵する。

■<考論>世界が「一人前」に見てくれる 古庄幸一・元海上幕僚長

⑭アフガン戦争でインド洋の給油活動をした時、護衛艦隊司令官だった。「やっとここまで来た。これで世界中が一人前と見てくれる」「隊員はみんな、国のために万一の時は命をかけることを誓っている。そのため訓練をしているし、装備もしている」

⑮「厳密な条文で縛られたら、現場は何もできない。柔軟性を持たせたうえで、これはしてはいけないという部隊行動基準(ROE)を整備すればいい」

■<考論>制約外れ、自衛隊の体質変わる 渡辺治・一橋大名誉教授(憲法
⑯この安保法制は「戦争法制」と呼ぶのが正確である。

⑰戦後日本は戦争責任を認めず、侵略戦争と植民地支配に正面から向き合わなかった。それなのに戦後の早い時期からアジア諸国に受け入れられてきたのは、二つの制約―自衛隊が海外で武力行使をしない/人を殺さない、があったからだ。

⑱「戦争法制」が成立すれば、アメリカの要請に応える形で、自衛隊は海外に出て、必ず人を殺すことになるし、戦死者も出る。自衛隊の体質は大きく変わる。日本の政治システムの中に現代型の軍部が出てくる。それは絶対に許してはならない。

◆日米、進む軍事一体化 安保法制閣議決定(朝日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11754041.html?ref=pcviewer
①米国は、自衛隊の活動が地球規模に拡大することを期待する。安倍晋三首相は米国の戦争には巻き込まれないと強調するが、米軍と自衛隊との一体化は格段に進み、歯止めは見えない。

②米国防総省のシアー次官補は13日、朝日新聞の取材に「国会で法案を通し、我々の防衛協力を拡大した新たなガイドラインでできる全てのことを、実行できるよう期待している」

③恒久法ができれば、米国は日本の支援を事前に想定することができ、「足かせが外れる」(米軍関係者)。

オバマ政権は破綻したアフガニスタンイラクでの戦争から戦闘部隊を撤退させたが、過激派組織ISへの軍事的対応などを迫られている。政府財政が破綻し、国防予算も圧縮を強制され中、世界規模での「積極的平和主義」を掲げる安倍政権の姿勢は大歓迎だ。

オバマ大統領は「我々は日本の軍事力に関し、すぐに大胆な変革を望んではいない」と。当面はIS掃討への支援などを日本に求めることはなさそうだ。しかし、オバマ政権は、「アジア太平洋地域での日米の軍事協力」拡大に特段の期待を寄せる。

⑥軍事、経済両面で中国が台頭するこの地域についてカーター国防長官は4月の講演で「地域の現状は変化する。国益を守るため、我々自身も変化しなければならない」と紛争リスクの潜在力が高いと強調した。

⑦米軍は小回りが利く最新鋭の沿岸海域戦闘艦(LCS)をシンガポールに配備し、今月、中国が埋め立て工事を進める南沙諸島周辺で偵察・監視活動に踏み切った。豪州やフィリピンにも海兵隊の部隊を新たに展開する。

⑧そんな過激行動を米軍が取れた背景は勿論、安倍首相が南中国海の沿岸国に航空機や艦艇などを提供し、中国に対抗させ。更に海自艦船がフィリピンのスービック湾から米艦艇支援に自衛艦と戦闘爆撃機を出撃させる環境と体制もできるからだ。

自衛隊が現在保有しているイージス艦は6隻。日本周辺海域における北朝鮮弾道ミサイルへの警戒監視は国民に危機を煽る俳優に過ぎないから、自衛隊幹部は「南シナ海でも日米協力の姿を見せる中国の進出を防ぐべきだ」と語る。

⑩「内向きになってきた米国の関与をつなぎとめるために私たちも汗をかかなければならない」と自衛隊幹部は力説する。

⑪海洋進出を強める中国に対抗するため、日本は尖閣諸島周辺の防衛の「後ろ盾」として米国を巻き込むことの対価が、平時の警戒監視活動や紛争地域での後方支援で米国に貢献することだ。

⑫抜本改正する「重要影響事態法」と、新法の「国際平和支援法」を使い分けることで、日本の平和と安全に影響を与える事態も、日本に直接関係しない国際紛争でも「後方支援なら、世界のどこにでも自衛隊派遣が可能になる」(防衛省幹部)。

⑬安倍首相は14日の記者会見で「米国の戦争に巻き込まれることは絶対にありえない」と断言した。しかし「絶対」という根拠について十分な説明はなかった。

◆安保法制の審議、論点は 国会で与野党対決、月内にも(朝日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11754033.html?ref=pcviewer
①国会審議で当面の論点となりそうなのは、(1)集団的自衛権の行使容認の是非(2)行使の際の「歯止め」は有効か(3)首相が行使を想定する事例は何か、またそれは適切か(4)自衛隊の活動の範囲――の4点とみられる。

集団的自衛権の行使容認の是非;
中谷元防衛相は「あくまで我が国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置として許容される。憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略には変わりなく、専守防衛の定義も変わっていない」と述べた。
・これに対し、民主党憲法によって権力を縛るとする「立憲主義」に反する、「安倍政権が進める行使は容認しない」と党見解に明記した。岡田克也代表は「憲法の解釈を時の内閣が幅を持ってできるなんて立憲国家ではない」と強く批判。
・維新の党の江田憲司代表も「ろくな国会審議もせず閣議決定憲法解釈を変更し、与党だけの密室協議で法案の中身を決めた」と指摘した。

③行使の際の「歯止め」は有効か;
集団的自衛権を行使する条件として、政府は武力攻撃事態法改正案に
_A 日本の存立に関わるような明白な危険がある事態(存立危機事態)
 B 他に手段がない
 C 必要最小限度
――とする「武力行使の新3要件」を盛り込んだ。
・だが、民主は「政府の判断でいかようにも当てはめが可能で歯止めがきかない」と、「歯止め」の有効性に疑問を投げかけた。

④首相が行使を想定する事例は何か、またそれは適切か
安倍晋三首相は国会答弁で、
_A ホルムズ海峡での停戦前の機雷除去
_B 日本人を輸送する米艦の防護
――を集団的自衛権の行使例として示した。首相は、ホルムズ海峡の完全封鎖で原油価格が高騰すれば、日本国内で「経済的なパニックが起こる」などと主張。新3要件に当たる可能性があると主張する。
・これに対し、岡田氏は「備蓄もある。中東以外から油が来ることもある。経済的理由で該当すると言ったら何でもできてしまう」と批判。維新の党も足並みをそろえる。
・日本人を輸送する米艦の防護は朝鮮半島有事を想定するが、民主は「発生する蓋然性や切迫性に大いなる疑義がある」と批判。日本人が避難する際は民間の航空機や船舶などで対応できるとしている。

自衛隊の活動の範囲;
朝鮮半島有事を念頭に自衛隊が米軍を後方支援するための「周辺事態法」は「重要影響事態法案」に変わった。これまでの「日本周辺」という事実上の地理的制限がなくなり、支援対象は米軍以外にも広がる。
・民主は「周辺」の概念を廃止したことを「歯止めのない自衛隊の海外活動の拡大」と批判。他国軍を、自衛隊がいつでも後方支援できる恒久法「国際平和支援法」に対しても、期限を限り、目的を達すれば廃止される特別措置法で対応すべきだと主張。
共産党は関連11法案を「戦争立法」と位置づけ、反対姿勢を強める。志位和夫委員長は「従来の政府見解を百八十度転換する解釈改憲、立法作業を強行したことは立憲主義の破壊だ」
社民党も党声明で「『戦争法案』というべき内容。戦争を放棄した平和国家日本のあり方を根本から変えるもので認められない」と批判した。

⑥自民と公明は法案を審議する特別委員会(45人)を19日にも衆院に設置。26日の審議入りをめざす。委員の8割は与党議員で占める。自公は、1カ月程度で衆院を通過させ、7月末に法案を参院でも成立させる日程を描く。

⑦野党は、関連11法案を一括審議する方針に反発。民主の岡田氏「極めて問題だ。無理に束ねると論点が錯綜し、国民から見て分からなくなる」。維新の江田氏も「極めて手っ取り早く国会審議をすっとばし、数の力で押し切ろうという意図がありありだ」と批判。

共産党穀田恵二国対委員長「1国会で決めることではないという点では共闘が可能だ」。
だが、自民は、野党第2党の維新の党との修正協議も視野に入れ、野党共闘を分断策する。そのためのニンジンは最高顧問の橋下徹大阪市長が掲げる「大阪都構想」法整備の協力だ。

◆安保法制「議員の妻もわからなかった」 麻生太郎財務相呼びかけ「有権者へ説明、丁寧に」(朝日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11754037.html?ref=pcviewer
①麻生氏「皆さん方の奥様に『この問題で全然地元で説明できない』と言われた。安保法制を作った専門家中の専門家の兼原信克・内閣官房副長官補が代わりに説明した。だが、反応はやはり『全然わからなかった』だった」

②「それでもめげずに、後援会の方々に丁寧に説明されたし」麻生???????