日中韓の外相会談での安倍政権の歴史認識問題とアジア投資銀参加問題

(1) 日中韓の外相会談開かれ、安倍政権の歴史認識問題が直接的に追及された
(2) アジア投資銀 日本、不在のままでいいのか
※①〜は報道の抜書要点です。


……(1) 日中韓の外相会談開かれ、安倍政権の歴史認識問題が直接的に追及された……

日中韓外相会談 中国、70年談話けん制(毎日)
http://mainichi.jp/shimen/news/20150322ddm003010049000c.html
①ソウル市内の共同記者会見場。日中韓外相会談を終えた韓国の尹炳世外相と岸田文雄外相が成果を淡々と述べた後、雰囲気が一変した。
②『近年、日中、日韓が歴史認識の問題で困難にぶつかり、3カ国の協力は大きく妨げられた』。中国の王毅外相は身ぶり手ぶりで訴え、会見後に岸田外相と握手した際も硬い表情を崩さなかった。
③王外相が歴史認識問題を取り上げたのは、首相の「戦後70年談話」が念頭にあるためだ。「日中韓外相会談は歴史を議論する場ではない」(外務省関係者)という日本側の事前の目論みは外れた。
④日中外相会談(21日)で、岸田外相は『安倍首相は歴史認識に関する歴代内閣の立場を“全体として”引き継いでいる』と理解を求めたが、王外交部長は『日本がどのような態度で歴史に向き合うかに注目が集まっている』と述べ、安倍政権の歴史認識を中国だけでなく国際社会が注視していると指摘。
⑤日韓外相会談(21日)で尹外相は『慰安婦問題』に改めて言及した。岸田外相は早期の日韓首脳会談実現を求めたが、「適切な環境のもとで早期に開催できるよう努力を続ける」との合意にとどまった。韓国も歴史認識問題では日本に譲歩する気配がない。
⑥今月来日したドイツのメルケル首相は安倍首相との会談で『過去の総括は和解の前提』と述べ、慎重な言い回しながら、日本と中韓との関係に触れた。近隣国の懸念を払拭することに岸田外相はまた失敗した。依然と全く同じ“全体として踏襲”としか言えないからだ。

日中韓、「歴史を直視」明記 3年ぶり外相会談 共同発表文(朝日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11663620.html?ref=pcviewer
①共同報道発表文の骨子
・3カ国協力メカニズムが回復に向かうことへの期待を表明
・歴史を直視し、未来に向かうとの精神の下、3カ国が関連する諸課題に適切に対処
原子力安全、テロ対策、災害管理、環境などでの協力拡大
朝鮮半島での核兵器開発を容認できないことを再確認。6者協議の再開に向けて努力を継続
日中韓首脳会談を開催すべく引き続き努力

日中韓修復、厳しい道 3年ぶり外相会談(朝日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11663577.html?ref=pcviewer
①『日中、日韓関係は歴史認識問題によって困難に陥ってきた。歴史を正視し、未来を切り開くことだ。歴史を正視することが、すでに3カ国の共通認識になったのだ』
②21日夜、ソウルで開かれた日中韓外相会談後の共同記者会見。中国の王毅外相(外交部長)は、そばの岸田文雄外相には目もくれず、共同報道発表文に歴史認識に関する文言が盛り込まれたことを挙げ、こうたたみかけた。
③会談前日の20日夜、王外相は『歴史問題は避けて通ることはできない』と記者団に語った。この問題を大々的に取り上げる方針がすでに決まっていることをうかがわせた。
④中国はまた、今年を反ファシズム戦争勝利70周年と位置付け、「中国は戦後国際秩序の擁護者だ」(王外相)とアピールする戦略をとり、日本を牽制。王外相は中韓外相会談で、9月の抗日戦争勝利記念日での行事に韓国の朴槿恵大統領を正式に招待した。(プーチン大統領は共同開催者として出席)。
⑤日中外相会談でも、全体の半分強が歴史に関するやりとりに費やされた。

・・・今年は、中国は抗日戦勝70周年記念、韓国は韓日国交回復50周年記念の年。両国は安倍談話がどんな歴史認識と反省とそのための行動を宣言するかを注視している。

安倍談話が歴史認識を「全体として引き継ぐ」程度でさらりと流し、「積極的平和主義」による「繁栄」だけを前面に押し出してバラ色の幻影を投射するなら、中韓と日本の政府関係は一層深刻な事態を招くだろう。

「侵略し」「耐え難い被害を与えた」と認識し、中韓など被害国民に「深く謝罪する」というキーワードを省略しなければ事は足りるという読みも甘くなった。

侵略と虐殺の歴史認識を具体的に歴史教科書に書き込ませるのか、深く謝罪するに値する具体的行動はなされるのか、産経等を筆頭とする極右マスコミの歴史歪曲報道を法律で禁止するのか・・・それを中韓は注視している。

……(2) アジア投資銀 日本、不在のままでいいのか……

アジア・インフラ投資銀行に日本も参加すべきだ。日米は中国主導の同銀行が杜撰な審査で拙速な多額融資が途上国に行われれば、被融資国が破綻し、日米が牛耳るアジア開発銀行や米国が拒否権を持つ世界銀行IMFの融資も焦げ付いて被害を受けるとの懸念を振りまいてきた。

だが、その懸念は日米が自らの顔に唾を吐きかけたに過ぎない。途上国や欧州を破綻させたのは世界銀行IMFであり、破綻国に自己責任を迫るだけで、必死に救済したのは中国だったからだ。杜撰な審査と言っても、中国には欧米金融で経験を積んだ人材や、香港とシンガポール金融が控えている。

◆(波聞風問)アジア投資銀 日本、不在のままでいいのか 吉岡桂子(朝日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11663659.html?ref=pcviewer
①欧州は約50年前、日本が総裁を務めるアジア開発銀行(ADB)に出資している。
②その「ドイツが中国が設立するアジア•インフラ投資銀行(AIIB)に興味を持っているようだが、G7の参加はありえない。米国がそんなことはさせない」。
③日本政府は中国との覇権闘争にのめり込み、選択肢を閉ざし、銀行運営の透明性や融資先国の経済を破綻させない厳格な審査等の問題点を指摘し続けた。
④だが結果は致命的敗北だった。中独は17日に初の財政金融対話を開き、ドイツは中国が主導する国際開発金融機関、アジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を明らかにした。英国、フランス、イタリア、ルクセンブルク、スイスと参加表明が相次ぎ、流れは明確だった。
⑤アジア、オセアニア、中東、中央アジア、欧州の30カ国以上が集い、年内に運営が始まるなか、外から批判を繰り返しても力を持たない。米国でも、金融機関は新銀行を商売の「種」とみて接触し始めた。
⑤ドイツ・ハノーバーで開かれた情報通信技術の見本市が物語るように、中国は大事な商売相手である。人民元市場の誘致も各国で競い合う。新銀行は債券の発行や事業の受注で自国の金融市場や企業に商機をもたらす。
⑥タリサ・ワタナゲート・前タイ中央銀行総裁『日本は入ったほうがいい。経験をいかして中国と協力し、インフラ建設を支えてほしい』。
⑦日本政府も批判一辺倒から脱し、関与のあり方を考えるときだ。

◆AIIB「加盟して意見を」 タリサ・ワタナゲート前タイ中央銀行総裁に聞く(朝日)
http://digital.asahi.com/articles/ASH3N62DLH3NULZU00D.html
①日本はもちろんアジア•インフラ投資銀行AIIBに入ったほうがいい。入らないにしても、経験をいかして中国と協力し、インフラ建設を支えてほしい。
②日本は、経済規模で日本の2倍以上に拡大した中国にライバル感情がある。中国主導が心配なら、加盟してアジアの国々と意見を言う方が有効。中国が総裁や本部を独占することも問題視していますが、途上国からみればIMF世界銀行アジア開発銀行ADBも同様に先進国の一部の国の独占です。
アジア通貨危機のとき、日本の財務省は地域でお金を融通し合う「アジア通貨基金(AMF)」をつくろうとしましたが、パワフルな大国、米国に反対されてできず、残念でした。AIIBについても米国の消極的な姿勢が、日本の判断に大きな影響を与えているはずです。
④日本はアジアよりも先進国の一員であるイメージを重視しているようにも見えました。中国の成長やAIIBへの参加で、日本がアジアの一員であるという心構えが強まるなら、悪い話ではないとも感じます。
⑤日本と中国は不幸な歴史が過去のものになるように努力してほしい。日本の国家を代表する首相がわざわざ靖国神社に参拝し、被害者の傷口を深めることに、私は賛同できません。アジアの他の国の人たちもきっとそうでしょう。
⑥中国や韓国とは違う意味での日本の過去への強いこだわりを感じます。地域の大国である日本と中国は、歴史問題のわだかまりを含む外交関係の悪化が、地域の経済的な案件にまで影響を及ぼさないようにする責任があります。

◆AIIB「二つの大国でバランスを」 シンガポール国立大学リークアンユー公共政策大学院教授黄靖氏に聞く(朝日)
http://digital.asahi.com/articles/ASH3N62DMH3NULZU00F.html
①アジアの国々は日本に入ってほしいと考えています。理由は簡単です。地域の二つの大国に競争してバランスをとってほしい、と。
②中国自身も日本が入る方が入らないよりは利益があると考えて、誘ってきました。日本の経験や技術、そして新銀行の格付けもあがり資金調達にもメリットがあるからです。経済規模に応じて出資するので、日本の出資比率は中国の1/3程度になる。
③日米が反対しても、AIIBはできます。好むと好まざるとにかかわらず中国がさまざまな領域で世界的な役割を果たし始めたことも事実です。
④アジアのインフラ建設に米国がお金を出せるわけでもありません。であれば、日本は参加し、内側からAIIBの運営に圧力をかけながら、自らの経験や技術をいかして経済的な利益も享受するという考え方は、一理あるはずです。
習近平政権の外交の軸となる「一帯一路」戦略の一環です。中国は「シルクロード経済ベルト」と「21世紀海上シルクロード」という言葉を用いて、中国につながる道路や鉄道などインフラ整備を進めています。独自の組織はシルクロード基金、そして多国間でつくる国際開発金融機関がAIIBなのです。⑥中国の発展に脅威を覚える国があるなかで、自らも出資した国際機関からの融資なら受け取りやすい。インフラ建設という長期にわたる事業を通じて、協力関係を維持する作用も期待しています。

◆中国インフラ銀:「独自基準で」融資や運営、既存機関批判(毎日)
http://mainichi.jp/select/news/20150323k0000m020088000c.html
①経済フォーラムが北京で開かれ、アジア開発銀行(ADB)の中尾武彦総裁が『ADBの審査は最適であるが融資能力を高めるために改革を進めている』と説明した。
②これに対してアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立を進める中国の楼継偉財政相は『ADBは改革するというが、最良なら改革は必要ない。ADBは官僚主義で(融資などの)手続きが煩雑だ。AIIBは途上国が主導する機関で、彼らの要求を考慮する必要がある』と反発した。
・・・ASEANと南アジアと中央アジアが必要とするインフラ投資は年間100兆円に達するが、日米が支配するADBはその1%強しか融資する能力が無い。中国がADBに出資し融資を拡大する提案をしたが、日米は被融資国を破綻させると拒否してきた。

◆中国外務省の洪磊報道官、韓日豪がAIIBに参加を検討していることを歓迎する(CRI北京放送)
http://japanese.cri.cn/881/2015/03/20/161s233902.htm
麻生太郎財務相の『アジアインフラ投資銀行(AIIB)の融資の審査方法などで透明性が確保された場合には協議する可能性はある』という発言に対し、洪磊報道官は『AIIBの設立は開放と包容の原則に基づいている。中国は参加意欲のある国を歓迎する』と述べた。
②『近、英国、フランス、ドイツ、イタリア、ルクセンブルク、スイスなどの国が創始国としてAIIBに参加する意欲を示したことに対し、中国は歓迎する。これらの国の参加はAIIBの開放性と包容性の証明。韓国や日本や豪州も積極的に検討している。中国は開放的な態度をもって各国の決定を待つ』
③『AIIBはハイレベルな秩序を構築し、それぞれの優位性を取り入れ、現有の国際開発銀行の良いやり方を導入する一方で、過去の失敗を避け、効果的な融資プラットフォームと多国間開発銀行となる』とも述べた。

アジアインフラ投資銀行(AIIB)参加国35国
東北アジア】2(中国、モンゴル)
ASEAN】10(インドネシアシンガポール・マレーシア・タイ・カンボジア・ラオスベトナム・フィリピン・ブルネイミャンマー
【南アジア】5(インド、パキスタンスリランカ・ネパール・バングラディッシュ
中央アジア】5(カザフスタンウズベキスタンキルギストルクメニスタンアフガニスタン
【アラブ圏】5(サウジアラビアクウェートオマーンカタール・イラン)
オセアニア】2(ニュージーランド、豪州)
【欧州】6(英国、フランス、ドイツ、イタリア、ルクセンブルク、スイス)

※参加検討中2国
カナダ(昨年参加検討表明したが、日米の強力な牽制で保留状態)
韓国(中国と交渉継続。課題は韓国の出資比率増と新銀行の統治体制)

アジアインフラ投資銀行(AIIB)もBRICS銀行もBRICS基金も設立の動機は同じ。中国などBRICS国は発展国の意見をくみ取る運営をアジア開発銀行世界銀行IMFに求め、相応の出資と人材の提供を提案しだが、米国を拒否権を行使した。
そのため、融資を受けらなないか、融資の条件に米国強欲資本主義の要求を呑まされて国家破綻に至る例が頻発し、中国を中心とするBRICSが独自の金融機関を設立せざるを得なくなった。
中国の銀行業務の経験の浅さを指摘するが、数千人の留学中国人が欧米銀行で経験を積んで帰国した。また、香港の金融はアジアの投資案件に詳しく、全世界から投資を集める経験も豊富な人材が揃っている。
AIIBにいち早く参加表明したシンガポールの金融も香港に劣らない経験と実力。それに英独仏スイスが加わる。審査の実力や経験で不足は全く無くなる。
中国とASEAN10国だけなら、中国の出資比率が6割に達して、中国の意のままに経営されると日本や韓国が懸念したが、今や参加国が30国を超え中国の出資比率も30%程度に下がるだろう。それは中国が望んでいたことだ。
日米は「中国が主導するAIIBが発展途上国に過剰な融資を杜撰な審査で拙速に強行して、被融資国を破綻させるだろう。被融資国が破綻すれば、日本が主導するアジア開発銀行や米国が拒否権を持つ世界銀行ならびにIMFの融資も焦げ付くが、それを中国が補償してくれるとでもいうのか」などと非難する。
だが、途上国を破綻させてきたのは米国が拒否権を持つ世界銀行でありIMFなのだ。米国の強欲金融が売りつけた不良債権で国家破綻寸前に至ったEU各国を中国は必死になって救済したが、日米は知らぬ顔をして、EUが立ち直ったらまた搾取してやろうと目論んでいたのはないか?