資本主義壊れ民主主義も終焉、舞台は「海から陸に」移る

※1 ◆は参照報道;①〜はその要点で、論旨明確化と背景説明を加えた「意訳」です。敬称略。
※2 ❶〜や※で始まる文章は私見です。

◆水野和夫氏(法政大学教授)「資本主義が壊れ民主主義も終焉を迎える」(日刊ゲンダイ
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/205997/1
➀無限に貪欲な資本主義が行き詰まった先に、ゼロ金利テロリズムの“常態化”があり、資本主義が壊れ民主主義も終焉を迎える。その先にあるものとは――。

②民主主義とは「誰もが自分の欲求を追求してよい」という体制。しかし、人々の欲求は「無限」。「無限」の欲求に応える生産力がなければ、民主主義のもとでの社会秩序は維持できない。

③だからこそ、生産力増強に適した資本主義が、民主主義とともに両輪となって近代システムは続いてきました。しかし、こうした近代システムそのものが限界に達したのです。利潤率の近似値である長期金利が、「ゼロ」になっていることからも「資本主義の終焉」は明らかです。

④この変化を無視した末路が、東芝であり、オリンパスであり、三菱自動車。経営者が「3日で利益をつくれ」などと命令して、資本を無限に増やそうとした結果、コケてしまった。

神戸製鋼三菱マテリアル原発プラントの構造部品の規格を改竄し、JRは新幹線台車の破断寸前まで高速運転を止めませんでした。無理な高速回転の末路を象徴しているのです。

⑥そもそも資本主義は、資源国や途上国の犠牲のもとでしか成立しない「欠陥商品」。富を「中心」に「蒐集」した結果、「周辺」が犠牲になることへの異議申し立てが、アメリカでの9.11同時多発テロや近年の欧州でのテロなのです。

⑦その悲鳴を無視して資本主義を延命させたせいで、テロリズムによって先進国の社会秩序は危機に瀕しています。

⑧ところが、秩序維持をうたう政府は民主国家を放棄し恐怖をあおって治安を維持する「安全国家」(セキュリティー国家)に変貌し始めました。これぞ、まさに近代システムの終焉です。

➒フロンティアは消滅したか、最初から幻想だったのです。「安心安全」を警察が繰り出し、地域ボスも自慢げに吹聴する現代がその証明です。

⑩もはや一国単位では、リーマン・ショックに象徴されるようにグローバル資本の暴走にもテロリズムにも対抗できません。EUのような規模の地域帝国が「閉じた経済圏」を構築することが生存に必要なのです。

⓫資本主義と民主主義のペアは、天然資源と人間資源を消費することによって経済を拡大させて人間の欲望を充足させてきました。だが、その両資源も限界に達し、経済を「無限」に膨張させていくことは不可能になったのです。

⓬それでも利潤を得ようとする資本は、「より速く」、すなわち高速回転で経済活動を行うようになりました。GDPとは利用する資源の価値×その回転率だからです。利用する資源そのものの拡大の代わりに、現存する資源の回転率を上げることによって富を拡大せざるを得なくなったのです。

⑬しかし、経済の高速回転には大量の化石燃料が必要です、ビッグデータに必要なサーバーが大量の電気を消費するように(世界的規模のサーバーは中規模の水力発電所を必要とする)。そして、シェールオイルのような採掘効率の悪いエネルギーが注目されること自体、枯渇の一歩手前の証明です。

⑭エネルギー不足で「移動」「回転」が困難な時代、経済圏は「閉じてゆく」。エネルギーや食糧を自給しながら、大きく成長しなくても社会を維持できる「閉じた経済圏」(持続可能な自律的経済社会)を日本は構築しなければなりません。

⑮覇権国米国の影響から脱するべく、欧州はEUという「地域帝国」を構築しました。
・EUは「閉じた経済圏」を完成させ、
・ロシアや中国のつくるユーラシアの経済圏や、
・トルコが主導する中東の経済圏と
ゆるやかに連携するでしょう。

英米は「海の国」ですが、影響力を失い、「陸の帝国」の時代に移っていきます。
だとすれば、日本が手を結ぶべきは「陸の国」EU。
幸いEUの盟主・ドイツはゼロ金利国で、経済の成熟段階も、価値観も日本に近い。

⑰中国も「陸の国」ですから今後、欧州との関係を強化していくはず。ユーラシア大陸がひとつにまとまってから日本が「陸の国になりたい」と言っても手遅れ。ですから、「日本も陸の国と同じ方向を目指しています」というメッセージを発せよということです。

⑱育てなくてはならない人材は、壊れた既存のレールを修復する人たちではなく、どんな新しいレールを引き直すべきなのか、どちらの方向に進むべきなのかを根本から考えられる人たちです。求められているのは、幅広く、あらゆる学問を一通り学び、総合的に物事を考えるための教養です。

⑲「経済成長」至上主義から抜け出すべきです。それはもう幻想にすぎないからです。歴史の歯車が逆回転した今、経済も成長を追求しながら後退する「逆説」の時代に突入しています。今あるものが「無限」に続くという発想から、転換しなくてはならないのです。