マッカーサーと9条、オバマ外交の全面破綻

(1) マッカーサー書簡「憲法9条発案者はGHQではなく幣原喜重郎元首相」
(2) 北方4島「ポツダム宣言受諾でロシア領:同宣言にソ連参加資格なく日本領」
(3) オバマのアジア回帰政策は破綻(環球時報
(4) シリア停戦に関してロシアと米国が断交
(5) ロシアは中東とアジアに軍事回帰、中国もロシア支持
(6) フィリピンのドゥテルテ大統領、米比同盟を危険視
(7) トランプを税金逃れと歪曲報道

※1 ◆は参照報道;①〜はその要点で、論旨明確化と背景説明を加えた「意訳」です。敬称略。
※2 ※で始まる文章は私見です。
※3 Web登録後も関連報道などを追記します。

………(1) マッカーサー書簡「憲法9条発案者はGHQではなく幣原喜重郎元首相」………

憲法9条を発案したのはGHQではなく幣原喜重郎元首相だと証言するマッカーサーの書簡が見つかりました。安倍首相が改憲のよりどころとする「押し付け憲法論」をひっくり返す新史料です。東大名誉教授の堀尾輝久氏に経緯や意義を聞きました。(日刊ゲンダイ
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/191251
平和憲法の根幹をなす9条を発案したのはGHQではなく、幣原喜重郎元首相だと証言するマッカーサー書簡が国会図書館から東大名誉教授の堀尾輝久氏によって発見された。1958年12月に憲法調査会(56〜65年)の高柳賢三会長とマッカーサーらによって交わされた書簡である。

マッカーサー「第9条のいかなる規定も、国の安全を保持するのに必要なすべての措置をとることを妨げるものではありません」

マッカーサー「本条は、専ら外国への侵略を対象としたものであって、世界に対して精神的な指導力を与えようと意図したものであります。本条は、幣原男爵の先見の明と経国の才とえい知の記念塔として、永存することでありましょう」。

④戦力放棄について幣原とマッカーサーの考え方には違いが※。
マッカーサー自衛戦争を肯定していたが、「侵略戦争は『自衛』を旗印に始まる、故に日本は自衛のための戦力すら放棄すべきだ」という幣原を理解したのだろう。

憲法調査会は岸内閣が発足した57年に始動した。岸元首相は生前、「憲法調査会で『日本国憲法は改正すべし』という権威ある結論を出させたかった」という趣旨の発言をしています。

⑥高柳は手紙を送り、学術的な調査であることや詳細な質問項目を伝えた。それでマッカーサーの書簡証言を得た。

マッカーサーは51年に米上院で9条は幣原発案だと証言。しかし、日本では「信用できない」とする識者が少なくない。憲法調査会の報告書にマッカーサー書簡の保存場所が明記さていなかったことから、信用できないとされたのだ。

➇高柳「幣原首相は、新憲法起草の際に戦力と武力の保持を禁止する条文をいれるように提案しましたか」
マッカーサー「戦争を禁止する条項を憲法に入れるようにという提案は、幣原首相が行ったのです」(46年1月24日マッカーサー・幣原会談)。

マッカーサー「首相は、わたくしの職業軍人としての経緯を考えると、このような条項を憲法に入れることに対してわたくしがどんな態度をとるか不安であったので、憲法に関しておそるおそるわたくしに会見の申込をしたと言っておられました」。

⑩高柳は憲法調査会の活動のまとめの段階で「憲法第九条――その成立経過と解釈」という論文を発表している。61年のことです。マッカーサーとの往復書簡をベースに、「9条は幣原発案と見るのが正しい」と結論付けている。


………(2) 北方4島「ポツダム宣言受諾でロシア領:同宣言にソ連参加資格なく日本領」………

北方四島、帰属譲らず=戦略対話前に日本けん制−ロシア(時事)
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016100500783&g=pol
➀ロシア外務省のザハロワ情報局長「北方領土問題についてロシアの立場は一貫しており不変だ。(四島は)第2次大戦の結果、ロシアに帰属しており、ロシアが主権を持つことに疑問の余地はない」と声明
②日本国会で4島一括返還か2島先行返還か、安倍首相と野党間で質疑がありこれにロシアが回答。

※日本の国会と全マスコミは日本会議歴史観に染め上げられている;日本会議「日本が受諾したポツダム宣言と降伏文書にソ連は参加資格無し。不可侵条約に違反して日本に参戦したからだ。故に北方4島はポツダム宣言8項の対象外」という歴史観。ロシアが受け入れるはずがない。ただし土地売買なら。

日本会議はアジア太平洋戦争を個別の二国間協定の状況で敗戦か否かを定義;
 ➊日本は米国には宣戦布告したから敗戦である
 ➋中国には宣戦布告していないから敗戦では無い
 ➌ソ連とは不可侵条約解消期限の前にソ連が宣戦布告したから、ソ連は一方的侵略国。

日本会議は降伏文書とポツダム宣言受諾の対象国から中国とロシアを除外するが、米英仏蘭豪露中は「日独伊枢軸国」と「連合国」戦争だとし、中露も連合国戦勝国の権利を有するという立場で真っ向から対立。

独ソ不可侵条約に違反するナチスのロシア進撃は日本帝国による軍事牽制で可能になった。故に日ソ不可侵条約を破棄する権利ありとする。これは米英ロ首脳によるヤルタ会談で決定され、ソ連が戦力を欧州戦線から撤収し、満州に移動させるのに必要な7月末まで対日戦線を持続すると決定された。


………(3) オバマのアジア回帰政策は破綻(環球時報)………

◆Obama’s rebalancing strategy is difficult to continue and inherit. @POTUS(環球時報
http://bit.ly/2dYoh4Y  pic.twitter.com/515sTfvXOF
オバマは、ブッシュが造り陥った中東の泥沼を放棄し、アジア回帰を始めた。
②米国の強欲金融がもたらした西側世界の金融恐慌(リーマンショック)から逃げ出し、世界経済成長の牽引力となっているアジアに回帰しようとしたのだ。

③だが、オバマの8年間は口先だけの中国との協調であった。
オバマの軍事政策は中国を牽制して人民解放軍の近代化を阻止することによって、財政難に喘ぐ米軍の覇権を維持しようとした。
オバマ外交政策は中国を包囲して、中国とASEANの分断を画策する邪な同盟主義であったから、アジアの平和は危機に晒され、経済成長が阻害された。

⑥TPPは米議会が批准を拒否し、アジア軍事回帰は財政崩壊がそれを拒否するだろう。
➆トランプが大統領になれば、TPPもアジア回帰も放棄される。
クリントンが大統領になっても、オバマの遺産相続は重荷となって、彼女の行動を縛るだけだろう。
オバマのアジア回帰政策は破綻している。

⑩カーター国防長官がサンディエゴで「アジア向け軍事力の近代化と抜本的強化を促進する」と叫んだが、虚しい雄たけびだ。

◆【#イエメン】首都で葬儀の列に空爆、140人死亡 サウジアラビア主導の連合軍が攻撃か(ハフィントンポスト日本版)http://huff.to/2cZNTCA
サヌアを実効支配している反政府武装組織フーシは、サウジアラビア主導の連合軍による空爆だとして非難したが、連合軍側は関与を否定。
※反政府武装組織幹部の葬儀を空爆された。米国に支援される湾岸産油国同盟の空爆以外には考えられないし、これまで無数にこの種の空爆が行われていきた。

◆Western-backed coalition under pressure over Yemen raids(ロイター)http://reut.rs/2efX1Dc
➀西側(米英仏日)に支援された有志連合国によるイエメンの空爆が批判に晒されている。

◆Two missiles fired at a US warship off the coast of Yemen but missed it, a Pentagon spokesman says.(CNN)
http://cnn.it/2e2FStD  pic.twitter.com/NJcDMiRuKP
ペンタゴン「イエメン沖を哨戒する米イージス艦に向かって2発のミサイルが発射されたが、命中せず海に落ちた。米艦は誘導ミサイル防御兵器を装備しており、安全である」。


………(4) シリア停戦に関してロシアと米国が断交………

◆US suspends bilateral contact with Russia over Syria(RT)
http://on.rt.com/7qx6  pic.twitter.com/7VNWOBdZXD
➀米国政府はシリア停戦に関してロシアと断交
②シリア停戦合意を破棄し、停戦を進めロシア空軍との連携要員をシリアから引き上げた。

オバマは、アルヌスラ=アルカイダは反アサド軍「穏健派」であるとして、彼らを支援しアサド軍を殲滅しようとしている。

だが、アルヌスラは反シリア軍の主力で、ISと連携ないしは要員が出入りして区別できない。自由シリア軍なるものも事実上存在せず、アルヌスラの中の派閥が米英の人権監視団体に対して名乗る名称である。

米軍はアルヌスラと同盟関係; アレッポ市街のアサド政府軍陣地を、空からは米軍が空爆し、地上ではアルヌスラ軍が攻撃。アサド軍に多数の戦死者。アサド軍陣地はアルヌスラに占領された。 カーター米国防長官は「誤爆」だと嘯いたが、ロシアは「米軍とISの通信を傍受し公開」した。

◆Putin suspends plutonium cleanup accord with U.S.(ロイター)
http://reut.rs/2dDZqE2  pic.twitter.com/QGSth7BXzv
核兵器解体時に出る高濃度プルトニウムを処理してMOX燃料に転換する米露協定の実施をロシアが停止
プーチン大統領アメリカのロシアに対する非友好的な行動の結果、戦略的な安定を脅かす状況が生じている」。
※米軍による停戦合意を破るアサド軍への空爆と米軍・IS(含むアル・ヌスラ=アル・カイダ)の軍事連携をロシアが非難 ※オバマ(カーター)はアサド政府軍の直接攻撃を公然と主張し、両国対立深刻化。

安保理:シリア決議案否決 米英仏と露対立(毎日)http://bit.ly/2dL7unB
アレッポでの停戦と(ロシアの)空爆停止を柱とするフランスなどがまとめた決議案は常任理事国ロシアが拒否権を行使し、否決された。
※中国も拒否。米仏日はアサドを第二のフセインオバマではなく虐殺されたサダム)にしようとしたが、失敗。

◆Moscow 'doesn’t see any facts that US is seriously battling Al-Nusra' – Lavrov(RT)http://on.rt.com/7re2
➀ラブロフ「米国がシリアのアルヌスラ(シリアアルカイダ)と激しく戦っているっていうが、そんな事実は見たことが無い」 ※アルヌスラは米軍の傀儡であり、かつまたISと事実上の一体とも。

◆Russian President Vladimir Putin to meet Turkish counterpart in Istanbul on Oct 10: Al-Arabiya quotes Kremlin(CCTV)pic.twitter.com/0QXmqF7hPY
➀トルコのエルドアン大統領がモスクワを10月10日に訪問。
◆ロシアとトルコ、黒海経由の天然ガスパイプライン建設協定に署名(AFP)
http://www.afpbb.com/articles/-/3103900
➀両国はロシア産天然ガス黒海経由の2本のパイプラインでトルコと欧州に運ぶ「トルコストリーム(TurkStream)」建設の協定に署名した。1本はトルコ向け、もう1本は欧州向け。
②シリア北部アレッポ人道支援が行く届くように協力していくことで一致。

◆Russia sends S-300 missile system to #Syria to defend naval base(RT)http://on.rt.com/7r02
➀ロシアは対空ミサイルS-300をシリアに出荷した
②シリアのロシア海軍基地と地中海のロシア艦船を米軍機から防衛する目的である
③より高性能のS-400対空ミサイルは2015年に設置済で、シリア全土を射程に収めている。

◆Russia is ‘looking into’ opening up an airbase in Egypt by 2019(RT)http://on.rt.com/7rib
➀ロシアはリビア国境から100キロにある地中海岸の基地を再開する準備。
②この基地は米軍監視に1972年までソ連が使用。
③エジプトはその後米国に隷属したが、最近離反し、モスクワと親密化している。
④ロシアはシリア西部タルトゥス(地中海沿岸)にも海空軍基地。


………(5) ロシアは中東とアジアに軍事回帰、中国もロシア支持………

◆Moscow pondering re-launch of military bases in Cuba and Vietnam – MoD(RT)http://on.rt.com/7r8e
➀モスクワはキューバベトナムへの「ピボット」を入念に検討している。
キューバの電波諜報基地とベトナムカムラン湾海軍基地は2004年までロシアが租借していた。
③この二カ所の海外基地を再開する計画である。
ベトナム政府「カムラン湾ロシア海軍が再使用することに異議はない。ロシア海軍が他の第三国よりも優先される」
※先週、米国のイージス艦カムラン湾に停泊した。ベトナム戦争終結後初めてで、世界の注目がベトナム政府の立ち位置に注がれている。ロシアはベトナムに釘を刺した。

◆Opening Markets: Vietnam joins Russian-led EEU free trade zone(RT)http://on.rt.com/7r1y
ベトナムがEEU(ユーラシア経済共同体)に加盟する条約を批准し発効。EEUはロシアが主導し、ベラルーシアルメニアカザフスタンウズベクスタンが加盟。昨年から中国が主導する上海協力機構と合体協議が進んでいる。

◆#China supports #Russian position on #Syria & #Afghanistan – #Beijing(RT)
http://on.rt.com/7rgz  pic.twitter.com/F3hrA7wf7L
➀中国外交部の副部長「安保理事会の常任理事国として中国はロシアと結束して対処する。シリアやアフガンや米国がロシアと中国を射程にするミサイルの設置に対してだ。シリア北部の飛行禁止区域をフランスが提案したが、ロシアとともに中国、アンゴラベネズエラがNOを投票した」。


………(6) フィリピンのドゥテルテ大統領、米比同盟を危険視………

◆フィリピン、米との南シナ海警戒を保留 大統領発言受け(朝日)
http://digital.asahi.com/articles/ASJB86FJ4JB8UHBI01M.html
➀ロレンザーナ国防相は7日、比国軍と米軍が合同で予定していた南シナ海の海洋パトロールについて、実施を保留することを今月初めに米軍側に伝えたことを明らかにした(AP)。
ドゥテルテ大統領は9月に「海軍合同パトロールには参加しない」と発言し、米国の再駐留を認めた「米比新軍事協定」についても再検討をにおわす発言をしている。

◆米比の海兵隊員らが合同上陸訓練、400人参加(TBS)http://cgi.tbs.co.jp/n/C6tb
※「これが最後の米比軍事演習」両軍合わせて400人の上陸演習
ドゥテルテ大統領「➊南中国海での米海軍哨戒に不参加、➋陸軍上陸演習は今回が最後。理由は、中国を軍事刺激し中国との関係改善を邪魔する危険な行動だからだ」。

◆Philippines President Rodrigo Duterte launches new tirade against US, tells Obama "go to hell"(CNN)
http://cnn.it/2cQUI4w
◆Philippine leader tells Obama 'go to hell', says can buy arms from Russia, China(ロイター)
http://reut.rs/2dFOiWy
◆President of the Philippines: "You can go to hell, Mr. Obama, you can go to hell"(NYT)
http://nyti.ms/2dH0FH6
➀フィリピンのドゥテルテ大統領オバマの関係が最悪化
②麻薬マフィアと戦う兵器の販売要請を米国が拒否(無視)
③ドゥテルテ「オバマは地獄行きだ」「ロシアも中国も必要な武器を必要なだけ供与できると約束した」
◆ドゥテルテ氏、オバマ氏に「地獄に落ちろ」 米は懸念(日経)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM05H2Y_V01C16A0EAF000/?dg=1
※フィリピン南部で反政府ゲリラが麻薬密売を軍資金に活動
➊米特殊部隊がミンダナオ島に駐留し、結果的にゲリラを温存させ
➋米国政府がドゥテルテの麻薬対策を人道違反と非難
➌ドゥテルテはオバマに「米特殊部隊も麻薬密売反政府テロ集団対策に協力しろと要求したが、米政府が無視した」
➍米国高官「ドゥテルテは米特殊部隊と南太平洋問題を取引の材料に悪用している。こんなのは無視」
➎ドゥテルテ「ロシアと中国に武器援助の打診をした。必要なだけ供与すると回答があった」「米国と縁を切る」
➏米国政府「外交ルートでは何も言ってこない」「マニラで騒ぐだけだ」

◆フィリピン:大統領に「満足」76% 暴言連発も安定支持(毎日)http://bit.ly/2dy59Ao
※フィリピン南部の反政府ゲリラは麻薬密売を軍資金として蔓延り軍や警察など官僚にまで侵食し、従わぬものをテロで暗殺し、地方自治を破壊している。軍も警察もあてにできないからドゥテルテは民兵を組織化し20年間闘ってきた。その戦いを国民の76%が支持し、米国政府の非難を跳ね返した。


………(7) トランプを税金逃れと歪曲報道………

◆トランプ氏「私は鮮やかに税法使った」税金逃れの報道(朝日)http://t.asahi.com/k4bp
※この報道は露骨な人権蹂躙 日本も米国も法人税法繰延税金資産(借方;Deferred Tax Asset)の適用が一定条件で認められ、適用を誤ると会計監査で不適切決算と指摘される。トランプを非難するが、合法かつ適切。前提となる「欠損」が偽装であると立証する義務がマスコミに。

1992年に不動産と株バブルの崩壊時に日本の銀行が、不良資産を一括償却し巨額赤字決算を行い、同時に一括償却額を「繰延税金資産」に計上し、翌年からの黒字営業にもかかわらず長期間納税を免れたのも、この法人税法が根拠。巨額損失を隠蔽せず公表させるための褒美ともいえる。

不良資産を一括償却し(顧客の被害が軽減する)、繰延税金資産に計上できる一定の条件とは;
➊接待交際費など一過性は不可
➋再建計画が妥当で合理性があり企業存続に疑念が生じないと公認会計士が認めること
当時の米国不動産バブル崩壊で数千社が倒産したのは条件を満たさなかったからだ。

米国の不動産バブル崩壊時に、米国は20兆円を不動産購入者保護に投じた。同時に「繰延税金資産」に計上する条件を満たせなかった不動産会社は倒産し、経営者6000人が投獄されました。平均半年間の短期ではありましたが、じっくり反省できたでしょう。