習馬会;大陸依存経済と若者就職難の狭間で

※敬称略 ◆は参照報道、①〜はその要点

【写真】习近平与马英九在新加坡实现历史性握手(環球時報
http://world.huanqiu.com/photo/2015-11/2808860.html#p=1

習近平氏、「両岸関係の平和的な発展の成果を再び失うな」(CRI)
http://japanese.cri.cn/2021/2015/11/07/301s243103.htm
①中国大陸の指導者•習近平氏と台湾の指導者•馬英九氏の会談は7日午後、シンガポールで行われました。

習近平氏は次のように述べました;
・両岸関係は道をどう選ぶかに直面している。歴史悲劇の再発を防ぎ、両岸関係を平和的に発展させてきた成果を無にしない道を進むべきだ。それによって、両岸同胞たちが平和的で安定した生活を継続し、子々孫々が共に美しい未来を享有できる。

・両岸関係の発展過程から学び、歴史の試練に耐えられる選択をしなければならない。両岸の中国人には自らの問題を解決できる能力と知恵があり、世界や地域の平和と安定そして繁栄により大きく貢献することを、行動によって世界の人々に示さなければならない。

・双方は、『九・二共通認識』を堅持し、共通する政治的基礎を固め、平和発展の道を堅持し、両岸の交流と協力を深化させ、それによって両岸同胞の福祉を増進し、中華民族の偉大な復興と栄光を共に享有するよう努力することを希望する。

馬英九総統と習近平氏の会談始まる 笑顔の握手で友好関係を強調(フォーカス台湾)
http://japan.cna.com.tw/news/apol/201511070008.aspx
①次の世代の幸せのために国際社会が期待し、維持しなければならないものとして、台湾と中国大陸対話の原則、「92年コンセンサス(九二共識)」の強化、敵対状態の緩和、交流の拡大、両岸ホットラインの設置、共同で取り組む中華の振興を上げた

※『九二共識』(Wikipedia
中国側窓口機関海峡両岸関係協会と台湾側窓口機関海峡交流基金会が1992年に香港で行った協議に由来し、「大陸中国と台湾は一つの中国」という共通認識を指す。ただし、双方の認識には差異がある;
・大陸中国=双方とも『一つの中国』を堅持する」(一中原則)
・台湾=『一つの中国』は堅持しつつ、その意味の解釈は各自で異なることを認める(一中各表)
92年協議での妥協=『一つの中国』は堅持しつつ、その解釈権を中台双方が留保(棚上げ)で妥協。

※最近の両岸関係(Wikipedia
2000年に政権交代した民進党陳水扁政権は中国との対話を望んだが、李登輝に影響された独立志向を消すことができず、江沢民胡錦濤政権からは相手にされなかった。それでも民間交流は活発化し、定期便が就航し、台湾で人民元決済が可能になったが、陳水扁らの金銭スキャンダルが相次ぎ政権崩壊。

2008年に馬英九国民党政権が復活すると両岸関係は急速に親密化し、中国資本の台湾投資解禁、金融協力、メディア交流、軍事フォーラム、共産党地方幹部の訪台団派遣、中国の司法試験の台湾人受験者への開放など、各方面で中台交流が急速に進んだ。

いまでは、台湾の輸出額の4割が中国を占め、中国進出台湾企業は10万社、中国在住台湾人は100万人(台湾の全人口は約2300万人)、年間往来者数は年間500万人を超えるといわれるまでになった。

2010年、両岸経済協力枠組協議 (ECFA) 締結。中国側が539品目、台湾側が267品目(貿易額で合計約167億ドル)をゼロ関税とするもので、実質的な中台自由貿易協定 (FTA) 。台湾側にかなり有利な内容。

チベットウイグル問題ではダライ・ラマ訪台で強烈な反発を浴び、ラビア・カーディル世界ウイグル会議議長の台湾入国も拒否するに至った。

台湾人の根強い“反中”感情にも変化が。2010年世論調査では、「非友好国」ランキングと「最も親しくすべき国」の両項目で中国が第一位になった。中台交流を支持する世論が強まった。

◆Leaders of China, Taiwan meet for first time in six decades(ロイター)
http://reut.rs/1kzF2Gx
◆中台首脳が初会談=「一つの中国」確認−習主席「歴史の1ページ開く」(時事)
http://www.jiji.com/jc/c?g=int&k=2015110700204&utm_source=twitter&utm_medium=jijicom&utm_campaign=twitter
◆初の中台首脳会談 関係の平和的発展を確認(NHK
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151107/k10010297701000.html
◆中台首脳会談(TBS)
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2630605.html
◆「一つの中国」原則変えず、習主席(時事)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201511/2015110700269&g=int
◆国台办主任张志军:两岸领导人达成积极共识(環球時報
http://taiwan.huanqiu.com/article/2015-11/7931927.html
◆马英九提维系两岸和平繁荣现状五点主张(環球時報
http://taiwan.huanqiu.com/article/2015-11/7931590.html
◆马英九主持记者会 称会谈气氛“很融洽”(環球時報
http://taiwan.huanqiu.com/article/2015-11/7931879.html
①総括
国務院台湾事務弁公室の張志軍主任
「両岸の指導者は尊重しあう誠意の溢れた態度で率直に深く意見を交換した。双方は両岸の交渉を振り返り、平和的な発展の成果を総括した。両岸の指導者は共通認識を再確認した。習近平は『会談が歴史的に重要性な1ページを開いた。歴史に今日の会談がしっかりと記憶されるだろう』と述べた」

馬英九
「自分の任期は残り6ヶ月。誰が指導者になろうと、台湾と大陸の関係は変わらない。そのための環境ができた」「習近平を台湾に招待したい。それが一歩近づいた」

②会談の雰囲気
中国側「極めて率直な話し合いができた」

馬英九「握手する時、感激のあまり、力を入れて握手しました。いい雰囲気で、平和的な発展について意見交換ができた。習さんは実務的で率直な人だということが分かった」

③「一つの中国」
双方は、関係改善が平和発展につながるとアピールし、「一つの中国」を認め合う「92年合意」を中台交流の基礎として改めて確認した。

習金平「2人が会うことは歴史の1ページを開いた。何人も私たちを切り離すことはできない。私たちは家族なのだ。大陸と台湾は一つの中国に属し、両岸(中台)は一つの国家に属する」

馬英九「両岸の指導者が会談し問題を解決することを常態化し、“92共通認識”を基礎に、台湾海峡の現状平和を維持し、敵対状態を和らげ、平和的に紛争を処理したい」

④『一帯一路(シルクロード)』とアジアインフラ投資銀行(AIIB)
馬英九「台湾は中国主導のAIIBに参与し、中国の『一帯一路』構想に貢献したい」

習金平「台湾が中国の『一帯一路』構想に積極的に参加し、妥当な形式で中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に加盟することを歓迎する」

馬英九の5項目提案
馬英九「両岸関係は既に49年以来、最も平和で安定した段階にある」と表明し、高官レベルのホットライン設置や平和的な紛争処理など、中台の現状維持に向けた5項目を提示し、合意を得た。
1)“92共識”を強化して、現状の平和を維持
2)敵対を和らげ、平和的に紛争処理
3)「一帯一路」大学院講座の設置など両岸の交流を拡大し、相互利益のあるWIN-WIN
4)両岸の軍事ホットラインの設置
5)両岸は協力して、中華の振興に尽力

⑥台湾独立運動問題
習近平「台湾独立を訴える勢力は、敵意と対立をあおり、国家の主権と領土の保全を損ない、台湾海峡の平和と安定を破壊し、両岸関係の発展を妨げ、人々に災いをもたらす。台湾の各党派は92年共通認識を直視すべきだ。国を分裂させるいかなる行為に対しても両岸の同胞は絶対に許さない』

馬英九『両岸は1つの中国の原則を堅持すべきだが、その概念と認識についてそれぞれ主張が異なる』TBS
台北では500人ほどが参加した抗議集会があり、プラカード「ひとつの台湾、ひとつの中国」や横断幕「台湾独立」が見られました。NHK

◆台湾野党・若者ら反発 経済界は歓迎の声 中台首脳会談(朝日)
http://digital.asahi.com/articles/ASHC73H3RHC7UHBI00L.html
民進党蔡英文主席「対等性や尊厳が守られておらず、大部分の市民は失望した。台湾の民主や自由について語られることを期待したが、一切提起しなかった。両岸(中台)関係の将来に関する市民の選択に政治的枠をはめようとしたことは、非常に遺憾だ」と、「92一つの中国原則」再確認を批判。

②工業総会幹部は「会談の中身にそれほど新味があるわけではないが、会ったこと自体に意義がある」と歓迎。台湾の域外投資に占める中国の比率は60%まで増加。輸出額に占める中国向け比率も2014年には40%に上昇し、中国への経済依存は高まっているからだ。

③中国進出台湾企業は10万社、中国在住台湾人は100万人(台湾の全人口は約2300万人)、年間往来者数は年間500万人を超える

④製造拠点の中国への移転が進み、台湾では若者を中心に「雇用が奪われる」と不満が募る。昨年11月の統一地方選挙で与党・国民党の大敗を招き、台湾の独立を志向する最大野党・民進党が躍進する要因にもなった。

⑤鄭永年シンガポール大学教授「経済面で台湾の中国依存は構造的。台湾の指導者の一存で変えられるものではない。その点で中国は自信を深めており、政権交代が起きても台湾独立が現実的な脅威になるとは考えていない。将来の統一を見据えつつ、民進党の出方を踏まえ現実的な対応を続けるだろう」

◆<馬・習会談>欧米から歓迎の声 外交部が各国に説明へ(台湾中央通信)
http://japan.cna.com.tw/news/apol/201511080006.aspx
各国報道「中国と台湾の政治的和解は世界経済にも平和と安定にも良い結果をもたらす」

◆Analysis: Historic meeting between China and Taiwan could lead to fundamental shift in relations(AP)
http://apne.ws/1MQh9HD
中国や日本で報道された内容とほぼ同じで、客観的に事実を並べ、最後に1月の選挙でどうなるのか? 蔡英文は92共通認識の存在自体を拒否しているが、それでは行きづまるが・・・という感じの報道

◆Taiwan opposition says only democracy can decide future(ロイター)
http://reut.rs/1Own84G
①台湾の野党民進党蔡英文党首が習馬会談を批判。が、趣旨曖昧、

※1月の台湾総統選挙で勝利が予想されている民進党蔡英文は大陸関係の公約を大きく修正する必要性に迫られている。

彼女は米国でオバマ大統領と会い、「台湾の独立性を米国が支持する、米国に支えられた台湾は大陸と独立性を維持しながら対等な関係を維持できる」と公約していた。

ところが、米国政府が「習馬会による歴史的関係改善を歓迎する。平和と安定に重大な利益をもたらす。一層の関係改善を期待する」と声明し、蔡英文の訪米成果報告に疑念が生じたからだ。

◆中台首脳会談を歓迎=一段の前進を促す−米報道官(時事)
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_date2&k=2015110800013
①米国務省声明「台湾海峡の両岸(中台)の指導者の会談と近年の歴史的な関係改善を歓迎する。米国は台湾海峡の平和と安定に重大な利益を有している。両岸が尊厳や敬意を重んじながら、関係強化と緊張緩和、安定の促進に向けて一段と前進することを促す」


◆米中の海軍が合同軍事訓練、大西洋で初(TBS)
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2631681.html
①中国のミサイル駆逐艦イージス艦)3隻がフロリダ沖で米海軍3隻と合同演習

11月4日◆ 两岸领导人习近平、马英九将在新加坡会面(環球時報
http://china.huanqiu.com/article/2015-11/7904421.html
中国共産党中央国務院の台湾事務弁公室の張志軍主任が、「両岸の指導者である習近平馬英九は11月7日にシンガポールで会談し、両岸関係を平和的に発展させるための意見交換をします」と発表。

②張志軍『今回の会談にあたっては、双方両岸のリーダーの身分と名義で実施すると、双方が相談して決めた。これは「1つの中国」の原則を具現化する協議が解決していない故の過渡的な形式です』

※参考までに過去の両岸リーダーの会談歴を記します:
2005年4月29日―“胡連会”―中国共産党胡錦涛総書記と国民党の主席の連戦と会見
2008年5月28日―初めて“胡呉会”―胡錦涛総書記と国民党の呉伯雄主席の会見。この会見で双方は「中国は一つ」という共通認識に達し、12月に両岸の基本的な直接交流“三通”を実現させた。
2009年5月26日―第2回“胡呉会”―両岸の経済協力を強化するための協議を決めた。
2010年6月29日、海峡両岸関係協会が海基両会ECFAを締結、両岸の経済協力が新段階に。
2013年2月25日―“習連会”―習近平総書記と国民党名誉主席の連戦が平和的統一の促進を協議。
2013年6月13日―“習呉会”―習近平総書記は国民党名誉主席の呉伯雄が率いる国民党訪問団と会見し、呉伯雄は国民党主席の馬英九からの習近平総書記に対する挨拶を伝え、習近平も呉伯雄に馬英九への挨拶を伝えた。
2015年5月4日―“習朱会”―習近平総書記は朱立倫主席が率いる国民党大陸訪問団と会見し強調した;『今両岸関係は新しい重要な結節点上にある。両岸関係はどの道を進むべきか、両岸のすべての政党と社会の各界の前で、中華民族と国家の未来および億万民衆の幸福について私達は真剣に考える必要がある。国民党と共産党が交流を強化し、経験を総括して、道を開き革新すべきで、共に両岸運命共同体を建設しなければならない』
2015年9月1日〜3日―連戦は招待に応じて“抗日戦勝70周年記念”の閲兵式に参加―習近平総書記は北京を訪問した台湾各界の代表と会見。
2015年新11月7日―“習馬会”―中国共産党のリーダー習近平と国民党のリーダー馬英九シンガポールで会談と予告発表。これは国共内戦以来で初めての歴史的な両岸リーダー会談である。