日米が世界から無視される日

(1) 英中“黄金時代” 7兆円超の経済協力
(2) イラクもロシア・イランの軍事支援を期待
(3) 南中国海に米軍が侵入する予定期限が過ぎた
(4) 中国海軍少将の警告(環球時報社説)
(5) 国連核廃絶会議で中国が日本の現在の核兵器開発環境と過去の化学兵器及び細菌兵器の大量使用を非難
※敬称略 ◆は参照報道、①〜はその要点

習主席の英国訪問後には、オランド仏大統領とメルケル独首相が相次いで北京を訪問する。批准がすすまないであろうTPPを横目に、英独仏韓が中国への傾斜を強めている。

経済でもユーラシア経済圏と上海協力機構の結束が強まり、ロシアと中国の二大国にベラルーシ中央アジア4国ならびにモンゴルに加えて、印度、パキスタン、イランも加盟。イランはロシアと開発銀行を設置する。中国が進める「一帯一路」経済ベルト建設は欧州全域からASEANや韓国まで広がる。

軍事でも、ロシアのシリア反政府軍空爆にイランが5千人の特殊部隊を投入し、イラクもロシア・イランと合同で総合作戦本部をバクダッドに設置した。中国は南中国海問題を話し合うASEAN国との会合を行い、衝突リスク回避策と漁業協定ならびに海底資源共同開発の協議を行った。

ネオコンと揶揄された豪州のアボット政権が崩壊し、穏健で中国との関係を重視する政権が誕生した。おなじくネオコンと揶揄されたカナダのハーパー政権が総選挙で惨敗し、トルドー新首相はオバマに電話で「IS戦闘からの撤退」を通告した。


………(1) 英中“黄金時代” 7兆円超の経済協力………

◆英中“黄金時代” 7兆円超の経済協力で合意(テレ朝)
http://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000061001.html
①中国と英国が首脳会談で7兆円を超える投資協定。原発高速鉄道ジェットエンジン製造、病院などが含まれる。英国は中国人のビザ期限を2年間に延長。中国はロンドンで国債を発行(約1000億円、年利3.1%)

エリザベス女王が馬車で習夫妻を迎えに行き、一緒に馬車でバッキンガム宮殿に、女王がホストの晩餐会後、習夫妻は宮殿に宿泊。今日も女王主催の送別の宴が行われる。キャメロン首相は3日間フルアテンド。英国政府は、中国の人権侵害非難と南中国海基地建設非難を完全に封じ込めた。

◆英中がエネルギー協力拡大 英BP、LNG契約1.2兆円(日経)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM22H1P_S5A021C1MM0000/?dg=1
①BPは21日、中国の国有エネルギー大手2社との協力拡大を発表した。電力大手の中国華電集団に液化天然ガス(LNG)を供給する最大100億ドル(約1兆2000億円)の契約を締結。中国石油天然気集団(CNPC)とは中国のシェールガス開発で提携する。


………(2) イラクもロシア・イランの軍事支援を期待………

◆ロシアに空爆要請ならイラクへの支援縮小 米が示唆(テレ朝)
http://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000061010.html
①米軍のウォーレン報道官「ロシアがイラク空爆を行えば我々はイラクに対して何をするか厳密に審査しなければならない」と、イラク政府がロシアに支援を要請しないよう牽制。

イランは5千人の特殊部隊をシリアに派兵して、シリア軍と共同でロシア軍空爆ターゲットを地上から指令している。

イラク政府はロシアに同国内の空爆を依頼する可能性がある。そのためにバクダッドにロシア・イラン・イラク共同で総合情報センターをバクダッドに設置した。


………(3) 南中国海に米軍が侵入する予定期限が過ぎた………

◆米軍、人工島12カイリ内へ 南シナ海派遣決断、中国主張に対抗(朝日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12028042.html?ref=pcviewer
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12027933.html?ref=pcviewer
①自国の領海という中国の主張を認めず、航行の自由を行動で示す狙い。

オバマ大統領は9月下旬、中国の習近平(シーチンピン)国家主席との会談でも「米国は国際法が許す場所ならどこでも航行し、飛行する」と強調。一方、習氏は「南シナ海の島は昔から中国の領土だ」と述べて対立した。

③習氏が米中首脳会談で一歩も譲らなかったため、オバマ政権は会談後に12カイリ内に派遣する方針を決めたという。

9月末に米軍報道官が述べた『準備は終わった。2週間以内に進撃する、大統領の指示をまっている』。その2週間が過ぎた。

米軍が行動を起こさなければ中国に馬鹿にされたと批判が米国内に起こり、菲国と日本の信頼を損ない、両国が軍事行動に走る可能性も。中国軍も侵入した米軍を撃退しなければ、同様の批判が沸き起こる。この状態こそ米国務省ネオコンの目論見。ケネディキューバ危機と同じだ。

国際法上、外国の領海での軍艦の航行については、偵察活動などを行わない「無害通航」である限り認められる。

「無害通航」とは、事前に航行プランを通達し、国旗を掲げ、武器弾薬ミサイルを外すか封印して、潜水艦は浮上航海することを指す。

⑤これに対し、中国は1992年に定めた領海法で、外国軍艦が領海内を航行するには、中国政府の許可が必要と定めた。そのため、中国側は米軍が中国の許可なく南沙諸島の12カイリ内に艦船を派遣すれば「重大な、一種の軍事行動だ」(中国軍関係者)として、警戒行動を起こすことになる。

⑥米艦船が派遣されれば、中国軍は「(1)中国領海であると警告し、警告に従わない場合は(2)追尾(3)進路妨害(4)強制排除の対応を海空域でとることになる」(中国の軍事研究者)と指摘する。強制排除では警告射撃を行い、退避しないときは撃墜かミサイル攻撃する。

2001年に海南島沖の12海里付近で米軍の電子偵察機EP3が連日偵察に侵入したため、中国空軍が(1)〜(3)を実行し、空中衝突した。中国の戦闘機は墜落し、米軍P3Eは海南島に不時着して墜落を免れた。EP3は2月間抑留され、駐機料請求書付きで返還された。

2009年には海南島の沖合で米軍の調査船が中国軍から警告されたのちに進路妨害を受け、米イージス艦が出動する事態があった。

2013年には空母遼寧が青島軍港から海南島の空母埠頭に移動したが、これを日米軍が執拗に追尾し、海南島近海で遼寧艦隊を米イージス艦が遮る行動を繰り返したため、中国のミサイル艦が米艦を強制停船させた。米軍はあと数十メートルで衝突と言っている。

2013年末に中国が東海航空識別区を設定し、フライトプランの事前提出を要求。米軍はB52をグアムから沖縄に飛行させ、「尖閣」上空と通過するデモンストレーション。しかしB52は完全無害飛行を宣言し、低速で国旗を出した。米軍は「釣魚」が中国領土であると間接的に認めた結果になった。

今年に入ってからも、シンガポールに配属した最新鋭のステルス戦闘艦を南中国海の建設現場に侵入させようとした。この時は、中国軍が事前に察知して、中国のイージス艦シンガポール出航直後から追尾し、南中国海で追いかえした。

・・・米軍は領海内や接続水域の航行の自由を主張するが、国際慣例には無い。領海内は当然として、接続海域でも軍艦は事前通告し、武器弾薬を降ろし、国旗などを掲げ、潜水艦は浮上して航行する義務がある。航行の自由とは民間船だけの話なのです。

※南中国海は「公海」だから日米の軍艦も軍機も自由通行の権利があるとのご意見・・・領有権主張で対立のある「公海」では、民間は自由通行ですが、軍の軍艦や軍機と政府の艦船と航空機についての国際法と習慣法は、国籍明示、武器不携帯、偵察行動しない、潜水艦は浮上する、が条件になっています。

更に、「尖閣」「釣魚」が対立する東中国海問題は、ポツダム宣言8項により「中国の一地方である台湾」に地籍があり、日本側が議論する権利はポツダムの受諾により放棄しています。南中国海の12島も1937年に大日本帝国が版図に入れ、ポツダム宣言受諾で放棄したの「尖閣」と同じ扱いです。

それからポツダム宣言8項は、❶日本が軍事的威嚇や戦争で奪った領土返還する(カイロ宣言)と➋日本の領土は北海道、本州、四国、九州の4島に局限され、付属する島の帰属は連合国が戦利品として獲得する権利がある、日本はその主権を主張できない、からなっています。

※米軍が南中国海の「軍艦と軍機の自由通行」に拘る根拠は国際法上まったく有り得ません。米軍の目的は、南中国海北部にある海南島の中国海軍基地を常時監視する状態を再現することなのです。海南島には中国のミサイル原潜4隻と空母2隻が同時接岸できる軍港が2年前に完成しています。

ミサイル原潜は1万トンを超え、黄海や東中国海の水深百mではまともに潜航できません。しかし南中国海には2千m級の深海があり、それでミサイル原潜の基地ができたのです。

空母「遼寧」は訓練空母であり対潜対空対艦防御を外しており、装甲も軽量化したので大戦争では強力とはいえません。中国は正規空母4隻の計画を持ち、2隻の建造が大連と上海で始まっており、来年進水、配備は2017年と言われています。核空母の可能性もあります。電磁カタパルトですから。

海南島の海軍基地を米軍は頻繁に偵察。米中両軍の直接衝突は少なくとも4回(2001年米EP3と中国戦闘機空中衝突、2009年米軍スパイ船強制停船、2013年空母遼寧艦隊が米イージス艦強制停船、2015年米イージス戦闘艦が追い返された)発生。いずれも海南島海軍基地の周辺海域です。


………(4) 中国海軍少将の警告(環球時報社説)………

10月15日の環球時報(人民日報のワールドニュース新聞)社説を開くと「この記事には有害なものは含まれます。開かないことをお勧めします」とマカフィーが警告してくる。でその社説の全訳;
◆杨毅:奉劝美方莫在南海莽撞(環球時報)社説
http://opinion.huanqiu.com/opinion_world/2015-10/7763337.html
楊毅:米側にご忠告申し上げる「南中国海での挑発行動は無鉄砲ですよ」

①米軍は最近絶えまなく「南中国海の人工島環礁の海域に軍艦を侵入させる」と騒ぎ、ホワイトハウスは米軍と同じことをオオムのように繰り返す。これは私達に高い関心を呼びおこさざるを得ないが、米国は何をしたいのか?

②南中国海問題の本質は中国の領土主権と海洋権益が侵犯されたことにある。中国は国家利益を守る正当権利を持っており、いわれなき中傷には断固反撃するでしょう。

国際法の“先占原則”により、中国は古来から南中国海の曾母暗沙以北の海域の島に主権を持ち、その海域には相応の権益を保有しています。

④1947年に、中国政府は南中国海に11段線を公布し、その内部の島と海域における主権と権益の保有を宣言し、いかなる国家からも異議がだされなかった。

⑤1960年代後期に、南中国海周辺のいくつかの国家が中国の島と暗礁を横取りし始めましたが、中国政府は善隣友好の原則を貫き、“主権は中国にあるが、論争には応じ、共同開発を同時に進める”という主張をしました。しかし2〜3の国家は拒否しないばかりか、逆に輪をかけて激しく攻撃し始めた。

⑥周辺国が不法占拠を強化し、中国との海上衝突も辞さなくなったのは、米国が“アジア・リバランス”戦略を開始してからあり、米国に扇動されて、中国に対して絶え間なく挑発を繰り返すようになった。同時に米軍は戦力増強し、それらの国家と軍事協力し、南中国海に緊張を生み出した。それが根本だ。

⑦中国は南中国海に人工島を造っているのではない。中国の領土上での補強工事である。その目的は駐島人員の生活施設を建設する必要と、防衛施設他を改善して南中国海を航行する船舶に便宜あたえ、安全を保証することにある。

⑧この絶対真理は厚かましくも非難すべきでないにも関わらず、米国などの国は派手な宣伝と中傷をおこなっている。私達は高度警戒の維持が必須となったこのような事実の歪曲と謬論に反駁する。

⑨「航行の自由権」を取り返すという主張は偽りの命題である。南中国海は西太平洋とインド洋を結ぶ海路であり、今に至るまで如何なる影響も受けず、中国は貿易船とエネルギー源輸送船の南中国海通過に依存する全ての国家に遅滞なき自由通行を認め、航海の安全を護ってきた。

⑩米日などの国は航行の自由権の問題だろ派手に宣伝しているが、南中国海の島における中国の主権と海洋権益を我が物にしたいのであろう。人に告げることのできない地縁政治の目的が背景にある。私達は必ずや、その欺瞞を暴くだろう。

⑪「南中国海の軍事化」非難は罠である。中国政府は一貫して「南中国海を協力と平和の海」と主張し、海域での科学研究プロジェクトを提唱し、開発を促進して、南中国海周辺国家の人民に幸福をもたらしている。

⑫米国が主張する「南中国海の軍事化問題」は、中国が領土内で進める工事を中傷して、国際世論を誤った方向に誘引するものであり、被害者である中国を被告席に座らせようとする極めて悪質な行動だ。

⑬実際には、南中国海を「軍事化」しているのは米国自身である。米国は数年来、絶えまく南中国海での軍事行動を強化し、軍艦と軍用機を侵入させ、周辺国と合同軍事演習を頻発させて、硝煙の匂いを充満させているが、私達は決して米国の威圧に屈しない。確固不動として私達の島の工事を完成させる。

⑭中国国家が領土保全と海洋権益を守る決意は疑う余地もなく、中国が国家の安全と国益を守るための軍事発展を見くびるべきでない。

⑮米国が軍艦と軍用機を、我が国は主権を持つ南中国海の島の領海と領空に侵入させるなら、❶私達はまず侵犯を警告し、➋中米関係を破壊し、地域の平和と安定を損なうなと忠告し、➌国家の領土保全と海洋権益を固める意志の表明だけではなく、更に強大な軍事力を整備するだろう。

中国人民解放軍三軍の将兵には自信と能力がある。中国国家の安全と国益を無謀にも侵犯する外国勢力に対して痛撃を与えることをもって対応するでしょう。▲(作者は海軍少将)



………(5) 中国が国連核廃絶会議で日本の現在の核兵器開発環境と過去の化学兵器及び細菌兵器の大量使用を非難………

◆中国、国連委で突然日本批判「プルトニウム大量保有」(朝日)
http://digital.asahi.com/articles/ASHBP3SCRHBPUHBI018.html
◆中国、国連委でまた日本批判 化学兵器「最も野蛮」(朝日)
http://digital.asahi.com/articles/ASHBR2J8CHBRUHBI00C.html
①核軍縮を審議する国連総会の第1委員会で20日、中国が「日本はプルトニウムを大量保有し、それは1350発の核弾頭の製造に十分な量だ」と日本を批判した。突然の「自説」の展開に日本は反論。議論の応酬になった。

②中国の傅聡・軍縮大使
「日本は(原子力発電所から出る)分離プルトニウムを国内で大量保管している。一部の政治勢力核武装論があり、ひとたび政策決定されれば、日本は核保有国になる。世界が記憶にとどめることを期待する」

「今年は反ファシスト戦争勝利の70周年」です。旧日本軍は化学兵器を「中国で1131回以上使った」、細菌兵器については「民間犠牲者は120万人に達し、広島と長崎の原爆犠牲者の4倍だ」。「人類史で最も野蛮で残虐な記録だ」と、中国の傅聡・軍縮大使が日本を批判。