日本報道の嫌中誘導が集団的自衛権を容認させる

(1) 朝日は産経並、米国新国家軍事戦略の報道
(2) 安倍の対中嫌悪が露骨な防衛白書、それにおもねる米軍
(3) 南中国海問題は日本マスコミの誇張
(4) 米中蜜月とは言えないものの、相当に率直な意見交換

※敬称略 ◆は参照報道、①〜はその要点


………(1) 朝日は産経並、米国新国家軍事戦略の報道………

米軍統合参謀会議が4年ぶりに発表した《新国家軍事戦略》の報道で、朝日報道の反中嫌中が露骨になった。中国軍脅威を誇大に報じ、軍事的脅威を煽っている。その内容はかの産経に近く、ワシントン・タイムスという統一教会に買収された新聞とそっくりである。

◆美未确定中国军事战略意图 日媒起劲渲染(環球時報
http://world.huanqiu.com/exclusive/2015-07/6835662.html
①最近の米国は絶え間なく南中国海問題で中国を非難するが、その一方で米国の新《国家軍事戦略》の中国に対する言葉遣いは明らかに緩やかになってきた。“VOA”(短波放送)は2日、米軍は中国を国際秩序に対する挑戦者に入れていないと説明した。

②それにもかかわらず、日本メディアは米国の新《国家軍事戦略》の中国関連を選び取り誇張し歪曲した解釈で煽っている。「米国は中国とロシア、イラン、朝鮮などを『国際秩序に対する重大な挑戦者』だ」と。最も過激に煽ったのは産経新聞朝日新聞である。毎日新聞共同通信は冷静な報道であった。

③《朝日新聞
・米統合参謀本部は1日、米軍の運用方針などを定めた「国家軍事戦略」を発表した。米国の安全保障を脅かす国家として「中国」を挙げ、南シナ海での岩礁埋め立てなどが「国際的なシーレーンにまたがった軍事力の配置を可能にする」と警戒感をあらわにした。
・米国の安全保障を脅かす国家として、ロシアやイラン、北朝鮮、中国を列挙。「中国の活動がアジア太平洋地域で緊張を高めている」と指摘。宇宙やサイバー、海洋活動などに「憂慮」を示しつつ、「中国と建設的、協力的、包括的な関係を追求する」としてきたが、今回はより批判的なトーンを強めた。
・こうした事態に対処するため、訓練や演習を通じて同盟・友好国の能力を強化する方針を示し、具体的な対象にNATOや豪州、日本、韓国との連携を挙げた。特に国際秩序維持のためにアジア太平洋地域に米軍を重点配備するとし、豪州や日本などとの協力を強化する方針を示した。

④《産経新聞
米国が日本と全世界規模の職業軍人人脈を作り上げたと、有頂天になっており、得意げでもある。
・米国は新国家軍事戦略で日本、豪州、韓国、比律賓、泰などとの軍事同盟強化を強調し、アジア太平洋リバランス戦略の最高パートナーとして認定した。

⑤しかし、毎日新聞東京新聞が報じる《共同通信》配信
・米軍の統合参謀本部は1日、軍の運用指針を示す「国家軍事戦略」を発表、米軍の優位が低下し始めたとの認識を示し、先進的安全保障能力を持つパートナーとしてNATOなどと並び日本を明記、関係強化を訴えた。
・同戦略は「同盟国とのネットワーク強化が(安全保障上の)努力の中心だ」と強調。米国の厳しい財政事情を背景に、同盟国への依存を強め、一体的運用を重視する姿勢を示した。日本の安全保障関連法案の論議にも影響しそうだ。同戦略の発表は2011年以来。

⑥張軍社氏
・米軍の対中国軍政策の二面性が現れている。日豪からの予算と兵士の血を提供するという軍事支援なくしてアジア軍事リバランスどころかペンタゴンの維持すら困難になっている、それはロシアとの軍事対決に重大な影響すると告白している。二枚舌と言ってもよいが、中国からの非難を恐れている。
・米軍は依然として中国軍の意図を正確に認識できず、ぐらついているのだ。中米間の共同戦略を強化し、相互信頼を重視し、嫉妬から来る邪推を減らし、双方の核心利益を尊重すべきだ。
◆安全保障脅かす国に「中国」 米軍事戦略、4年ぶり改定(朝日)
http://digital.asahi.com/articles/ASH722HNTH72UHBI00R.html
◆米軍:日本との同盟強化重視 国家軍事戦略を発表(共同/毎日)
http://mainichi.jp/select/news/20150702k0000e030210000c.html

◆谁是美国的“威胁者” 俄罗斯威胁放到首位(環球時報
http://world.huanqiu.com/exclusive/2015-07/6835660.html
①《ワシントン・タイムズ》※WPとは違う統一教会支配下の新聞で、米国の「産経」
・過激組織イスラム国はますます強力になり、勝手気ままに軍事行動する能力を持ち、最終的には米国に危害を及ぼすだろう。
・米軍はロシア等の“国際準則に挑戦する修正主義”への対峙を強化しなければならない。
・それに加えて、朝鮮とイランの核兵器とミサイル技術開発を阻止しなければ、近隣を脅すだけでなく、結局は米国本土にまで脅威を及ぼすだろう。
・これらの国は極めて挑発的で、安全保障に対する重大な危機をもたらすから、米軍は同盟国と協力して積極的な阻止行動を起こすべきだ。必要なら、これらの国家首脳の暗殺も躊躇すべきでない。

朝日、産経、ワシントン・タイムズの露骨な反中嫌中報道を打ち消す冷静な世界報道は多い;

②仏《ル・モンド》2日
・米統合参謀本部の新《国家軍事戦略》で際立つのは、ロシアによるクリミア半島併呑に対抗する軍事行動目標を掲げたことだ。イランと朝鮮の核も“脅威”の行列に入れられているが、切迫性は感じられない。中国も潜在的脅威と書いているが、安倍政権への悪乗りの部類。

③《AFP》
・米軍統合参謀本部議長のデンプシーが公表したこのリポートは“予期しない突然の軍事衝突の可能性”を指摘するが、米国と並んだ大国との戦争の可能性は低いと分析している。軍事技術ではまだ米軍に自信があるものの、衝突の危険性は増加傾向にあり、油断を許さないと言っている。

⑤米国《軍事時報
・今年の米国国家軍事戦略は、ロシアと朝鮮とイランを“世界平和に対する険悪なる脅し”と非難したが、中国にも言及し、“オバマ政権内部は中国の飛躍を支持し、中国を世界平和のパートナーと激励している”。
・同時に中国による最近の南中国海での行動を“アジア・太平洋地域を緊張させ”、“国際法に矛盾する可能性がある”と非難した。
・しかしその先の具体的行動は非常に穏健であり、“米国は引き続き中国と堅固な軍事関係を維持し、誤判断の可能性を減らしながら、中国に国際法によって紛争を平和裏に解決するように促す”。

⑥《環球時報
・明らかに米国の中国に対する位置付けは“経済同盟の中国”と“軍事対峙の中国”との間で揺れ動いている。

⑦中国外交部報道官、2日
・米側は中米元首会談で共通認識を達成すべきである。持続的な対話努力を通じて、中米の新型大国関係を完成させ、衝突でも対抗でもない相互尊重を醸成すれば、協力して平和を勝ち取ることができる。

◆美新军事战略预言大国战争 对中国调门变得缓和(環球時報
http://world.huanqiu.com/exclusive/2015-07/6835659.html
①私達は米側がリポート中で中国を平和と安全を実現するパートナーと位置づけていることに気付いている。

②しかし、中国の南沙島暗礁での建設を非難し、‘中国の脅し’と誇張していることに、私達は反対します。米側は中米2軍関係が穏やかに発展するよう努力すべきで、無責任な言い掛かりを停止すれば、地域の平和と安定に貢献できると知るべきだ。


………(2) 安倍の対中嫌悪が露骨な防衛白書、それにおもねる米軍………

フィリピンやベトナムなどが南中国海で基地を建設して実効支配を固めていることは一向に非難せず、それを抑制する中国海警と軍の兵士生活施設や滑走路建設には世界を動員して非難の限りを尽くす日本のご機嫌を米軍は損ねたくないのだろう。

◆日本の2015年版防衛白書の概要、中国の埋め立て活動を「高圧的」と勝手に批判(中国網)
http://japanese.china.org.cn/jp/txt/2015-07/02/content_35965818.htm
①日本のテレビ局
・1日発表された。防衛白書は南中国海における「(中国の)急速かつ大規模の埋め立て活動」への「強い関心」を示し、これは周辺諸国に対する「高圧的とも言える対応の継続」であり、日本の安保環境をさらに悪化させているとした。

共同通信社
・白書は中国の国防費が「1989年度から27年間で約41倍」になったと明記した。白書は釣魚島(日本名・尖閣諸島)問題を念頭に、沖縄県与那国町への沿岸監視部隊の配備や水陸機動団の設置などを紹介した。

東京新聞
集団的自衛権行使を可能とする安保関連法案の必要性を訴える狙いがありそうだ。安倍首相は集団的自衛権行使を容認する憲法解釈変更の理由に関し、安保環境が根本的に変化したと強調している。白書でも法案の解説を盛り込んだ。

◆中国の滑走路建設「認めない」南シナ海問題でカービー米国務省報道官、2日会見(共同/東京)
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015070301001068.html
①米国は「新しい現実」として受け入れない。中国による一方的な現状変更を断じて容認しない。

南シナ海岩礁滑走路、完成間近 ロイター通信が報道(ロイター/共同)
http://www.47news.jp/CN/201507/CN2015070201001031.html
①中国外務省は6月30日、埋め立て作業を完了したとし、施設建設を進めると表明している。

②米戦略国際問題研究所(CSIS)は南中国海の南沙諸島にある永暑礁で長さ3千メートルの滑走路の舗装が進み、駐機場や滑走路への誘導路も設けられた。このほかヘリコプター発着所2カ所、衛星通信アンテナ約10基、レーダー塔の可能性がある施設1カ所も確認でき、完成間近だと分析。


………(3) 南中国海問題は日本マスコミの誇張………

ベトナム共産党総書記が北京で中国共産党総書記(習近平)に謝罪し、口をつぐんだ。騒ぐのは日本とフィリピンだけになった。

タイの軍事政権は中国製の潜水艦3隻の購入を決め、更に泰北東部から首都に向かう鉄道近代化を中国と協議して今秋着工と発表。この路線は中国〜ラオス〜泰〜マレーシアの幹線である。

ただし、対軍事政権はバランス感覚があり、日本人が多く住む泰北西のチェンマイと首都間の鉄道は日本に建設も運営も委託する方針。日本のマスコミが誇張し歪曲して南中国海問題を騒ぐが、その実態はいささか異なっている。日本マスコミに騙されると、安倍の集団的自衛権行使を後押しするからだ。

◆タイ:中国から潜水艦購入へ(共同/毎日)
http://mainichi.jp/shimen/news/20150703ddm007030158000c.html
①タイ海軍は中国から潜水艦計3隻を約360億バーツ(約1300億円)で購入する計画を決めた。プラウィット副首相兼国防相が了承すれば、暫定内閣に承認を求める。

②昨年5月のクーデター後に発足した事実上の軍事政権は、民主化を求める米国と関係が悪化。一方、内政干渉しない中国とは、要人の交流を重ねるなど接近が際立っている。購入を予定している潜水艦は、浮上せずに3週間航行し続ける能力がある。

◆中国・タイ鉄道協力プロジェクト、第1期が10月に着工か(中国網)
http://japanese.china.org.cn/business/txt/2015-07/02/content_35967444.htm
①中国・タイ鉄道協力共同委員会第5回会議が、6月30日から7月1日かけてタイ中部のコラートで開かれた。中国国家発展改革委員会の王暁涛副主任、タイのプラジン運輸相が会議を主宰。

②王副主任
・双方は誠意ある友好的な雰囲気の中で協議を進めた。
・中国・タイ鉄道協力プロジェクトの第1期はバンコクケーンコイ線となる133キロの鉄道のフィージビリティスタディが完了しており、早ければ今年10月に着工となり、2017年末に開通する見通しだ。
・会議に提出されたタイ運輸省作成のタイ・中国鉄道計画図によると、第2段階は246キロのケーンコイ−マプタプット線。第3段階は138キロのケーンコイ−ナコンラチャシマ(コラート)。第4段階は355キロのナコンラチャシマ−ノンカイ線。
・中国とタイの鉄道協力プロジェクトはいずれも複線で、運行時速は約180キロ。上述した4路線は「人」の字のような形を作り、南北に長い国土のバンコク以北を横断する。
・両国の鉄道協力は、中国と東南アジアの相互連結戦略に関わっている。北はラオスビエンチャンにつながり、南はマレーシアやシンガポールに向かい、汎アジア鉄道の重要な一環になる。

………(4) 米中蜜月とは言えないものの、相当に率直な意見交換………

日本マスコミは米国と中国は南中国海で今日にも戦端を開くかもという印象操作をしている。米国政府の報道官には、国務長官と国防長官人事の議会承認の条件に共和党タカ派がねじ込んだネオコン官僚(アーミテージの子分格)がおり、日本マスコミは彼らの会見を「米国政府の」と報道している。

それに騙されたら、これもまた、安倍の集団的自衛権行使の片棒を担がされるはめになる。折しも、中国は副首相級閣僚以下がワシントンで大規模な対話と協議を行っていた。

中国副首相はケリーにもカーターにもそしてオバマ大統領にも、施設建設の正当性を説明し、断固完成させる、いやもうすぐ完成して、漁船遭難救助に役立ち、海底資源の国際共同探査の中心にもなる、米国も参加したらどうかと余裕ある説明をしている。

◆楊国務委員、「海洋保護」中米協力の新成長点に(CRI)
http://japanese.cri.cn/881/2015/06/25/142s238365.htm
習近平主席の特別代表として訪米中の楊潔チ国務委員は24日ワシントンで、オバマ大統領の特別代表ケリー国務長官と、第7回中米戦略と経済対話の枠組み―中米「海洋保護」特別会議に出席。

②楊国務委員
・中米はともに海洋大国で、海洋の探査と開発利用および保護に寄与しており、世界の海洋管理の面で共通の利益が多い。新しい情勢下で両国は一層努力し、『海洋保護』を中米協力の新しい成長ポイントにすべきだ。
・双方は、現在の対話と協力のメカニズムを生かし、海洋生態系整備、海洋環境測定、漁業資源保護、公海での不法操業取り締まり、海上人道救助、危険物輸送管理、国連やAPECの枠組みにおける実務的な海洋協力、海洋の持続可能な開発などを共同で進めていくべきだ。

③ケリー国務長官
・中国の提案に同意する。アメリカは中国とともに、海上での法の執行と海洋の持続可能な開発等の分野で協力し、人類の共同の福祉を維持促進していきたい。

◆中米対話・協議、300件近くの成果(人民日報)
http://j.people.com.cn/n/2015/0626/c94474-8911751.html
◆中米戦略・経済対話、戦略対話の合意事項120超(CRI)
http://japanese.cri.cn/881/2015/06/25/301s238395.htm
アメリカのワシントンで23日から24日にかけて行われていた第7回中米戦略・経済対話が終了。オバマ米大統領は24日午後、ハイレベル協議に出席した習近平国家主席の特別代表、劉延東副総理、汪洋副総理、楊潔チ国務委員らとホワイトハウスで会見した。

②戦略対話では、中米両国は新しい大国関係の構築推進、実務協力の深化、アジア太平洋地域における協力、地域の注目される問題や世界的な問題、意見の食い違いに対するコントロールなどについて深く討論し、合意事項が120項目を超えるという多大な成果を収めました。

③2日間の対話と協議は対テロ、不拡散、取締りと反腐敗、宇宙、科学技術、税関、衛生、農業、林業、交通、地方など広範な分野におよび、300件余りを討議し、120件の合意に達しています。

④中国側は国家の領土主権と海洋権益を断固として守ると同時に、直接の当事国との対話と交渉を通じた係争の平和的解決に引き続き尽力することを重ねて表明した。南中国海の航行の自由は保証されており、米側が客観的で公平妥当な立場を取り、地域の平和と安定を維持することを要請した。

⑤双方は、両国の軍隊の相互信頼メカニズムの構築を推進し、海賊の取り締まり、人道支援、防災、平和維持、軍事医学などの分野における交流と協力を強め、アジア太平洋地域やその他の地域で積極的に良好な交流を行い、両国の軍隊の関係を更に推し進めていくことで合意しました。

⑥さらに双方は、両国の海洋の環境保護海上における法執行、海の安全、海上資源の持続可能な利用、国際海洋事務などの面における交流と協力について深く討論し、多くの成果を収めました。

⑦中国政府はいかなる形のハッカー行為にも断固として反対し、取り締っている。相互尊重、平等互恵を基礎にサイバーセキュリティー問題で米側と協力したい。米側が事実を尊重し、中国側と同じ方向に向かい、両国のサイバー関係の改善を推進することを希望する。

⑧今年9月の習主席公式訪米が重大な意義を持ち、訪米の申し分のない成功を確保することは中米両国に利益に合致し、双方は緊密に協力し、準備作業を真剣に成し遂げるべきだとの認識で一致し、その自信を深めた。

⑨今回の戦略対話は、習近平国家主席の特別代表を務める楊潔チ国務委員とオバマ大統領の特別代表を務めるケリー国務長官が共に主宰しました。

⑩楊国務委員
・共に30数年努力してきた結果として、両国関係は大きな発展を遂げた。今日のような頻繁な交流は今までなかったうえ、両国の利益がこれほど密接になったのも初めてで、両国間の実務協力が今日のように深化したのもこれまでにはなかった。
・今回の中米戦略・経済対話が成功したのは、両国が国際上の地域問題と世界的な問題に対し共に手を携え立ち向かうという意欲と成果の表れである。中国はアメリカと共に、9月の両国首脳会談に向けて各方面の準備を整え、両国の新しい大国関係の構築に新たな動力を注ぎたい」と述べました。

⑪ケリー国務長官
・両国が協力を強化することは、両国だけではなく、世界にとっても重要な意義がある。両国の2国間および地域問題における協力は著しい成果を収めている。
・今回の戦略・経済対話は建設的で多くの成果が得られた。これは、両国が協力の深化に努め、誠意を持って意見の食い違いなどに対応していることの表れだ。