歴代法制局長の違憲指摘

(1) 歴代法制局長の違憲指摘
(2) 内閣支持率激減
(3) 70年安倍談話は閣議決定せず
(4) 日韓国交正常化50年行事に両首脳出席
(5) 安倍は衆院会期を再議決で強行する
※敬称略 ◆は参照報道、①〜はその要点

………(1) 歴代法制局長の違憲指摘………

憲法や法解釈を熟知し、「法の番人」といわれる内閣法制局長官。経験者2人が、衆院平和安全法制特別委員会の意見陳述で、首相の肝いり法案を酷評した。

61代長官を務めた阪田雅裕氏
『経済被害まで集団的自衛権の対象にして武力行使する内容であり、「満蒙は日本の生命線」と主張して開始した満州事変と同じことになる。憲法解釈の範囲を逸脱している。日本を取り巻く国際情勢も変化していない』。

62代の宮崎礼壹氏は更に厳しい
集団的自衛権の本質は「他国防衛」であり、集団的自衛権の行使が自国防衛であると称して武力行使するのは先制攻撃そのものである。明らかに違憲。安保法案は即刻取り下げるべきだ。この閣議決定憲法を踏み躙っている。民主主義の否定である』。

◆元内閣法制局長官2人が安保法制に「NO」(日刊スポーツ)
http://www.nikkansports.com/general/news/1496383.html
◆「違憲」元法制局長官も 安保法案質疑(朝日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11820731.html?ref=pcviewer
小泉内閣で第61代長官を務めた阪田雅裕氏
・「中東・ホルムズ海峡の機雷封鎖など、中東有事にまで出番を広げるのは限定的行使ではない。単に我が国の利益を守るために必要だと判断すれば、行使できると言っているのに等しい。従来の政府見解を明らかに逸脱する」
・「油が入りにくくなった、備蓄が少なくなったという話まで入るなら、満州事変の時の『自衛戦争』(満蒙は日本の生命線)と同じだ」。
・「集団的自衛権の行使容認は、基本的論理そのものの変更であり、(複数の憲法条項と対立し)法論理的に成り立たない」。憲法9条(軍の設置と領土外戦闘禁止)、憲法76条(軍事法廷禁止=海外派兵時の犯罪予防手段放棄)、憲法99条(閣僚、議員、公務員―自衛隊員の任用時憲法遵守宣誓署名義務)

・「憲法9条は、政府の勝手には戦争させないという法規範だ。自衛隊の実力行使に対する明確な歯止めをなくして、日本が戦争するかどうかを政府の裁量や判断に委ねていいと考えている国民は誰もいない」。
・「安保環境が変わったとか、グローバルなパワーバランスが変化したといった抽象的な言葉でなく、軍事技術面も含め、具体的に理由を説明する責任がある。政府説明は曖昧」。(歯止め効果は期待できないし、時の首脳の人格によって変化自在であり、予想も困難だ。)
・「政府が日本の安全保障環境が変化し、他国への攻撃でも日本の存立を脅かす事態は起こりうる、と説明しているが、朝鮮半島有事への懸念や、中国の脅威に対応する日米安保条約在日米軍の規模は従来と変わらない」。
・結局、集団的自衛権行使は進んで戦争に参加することだ。(テロの拡散や偶発的軍事衝突で)国民を危険にさらす結果しかもたらさない」。

③第1次安倍内閣時代にも長官を務めた第62代の宮崎礼壹氏は、さらに厳しい。
・「集団的自衛権の行使容認は、限定的でも憲法9条違反。法案の該当部分は速やかに撤回すべきものだ」
・「集団的自衛権行使が憲法9条で認められないのは、確立した解釈。政府が覆すのは法的安定性を破壊」。
・「集団的自衛権の本質は『他国防衛』であり、集団的自衛権の行使が自国防衛であると称して武力行使するのは違法な先制攻撃そのものだ」。「包括的か、限定的かも分離できるものではない」。時の首脳の人格によって恣意的専制的に判断される危険性が強い。
・「自国への侵略を排除する自衛権と、多国への武力攻撃に対する(しかも日本領土外での)集団的自衛権は別物だ。憲法9条の下で集団的自衛権が認められないことは確立した憲法解釈だ。政府自身がこれを覆すのは法的安定性を自ら破壊するものだ」。

④与党推薦参考人二人は合憲としたが、従来説明の域を出ず説得力はなかった。その二人は、自民が推薦した、3人しかいない合憲主張者の一人で日本会議に近い西修・駒沢大名誉教授と、公明が推薦した元自衛官で防衛相経験者の森本敏である。
西修氏「『戦争法案』ではなく、『戦争抑止法案』だ。個別的、集団的に関わらず自衛権はどちらも国家固有の権利であり、分けて考える必要はない。集団的自衛権の目的は抑止効果であり、抑止効果に基づく自国防衛だ。限定的な集団的自衛権の容認であり、憲法の許容範囲内だ」。
森本敏氏は、法解釈から逃げ、防衛政策から「核実験を繰り返す北朝鮮や海洋進出を強める中国に軍事的対峙する必要性」を強調し、「米国がアジア・リバランス政策を取っているのだから、同盟国である日本がどのように(米国を)補完し、この地域の抑止と対応能力をつけるかが最も重要だ」。


………(2) 内閣支持率激減………

内閣支持率が39%と、発足時から半減し、女性では不支持が支持を逆転した。安保法案反対は53%で賛成の倍に近い。安保法制の閣議決定違憲と判断する国民は50%で合憲の3倍。

8月に安倍首相「の」談話が出れば、アジア情勢は凍り付く。南中国海で日米との対峙を跳ね返した中国は、安倍の出方によっては、いつでも東中国海に全面回帰できる状態になった。自衛隊にも米軍にも全く抑止力は無い。安倍は非公式に土下座することになるだろう。

8月には原発の再稼働もあるらしい。先の土日の世論調査内閣支持率は39%と「非常に高かった」が、「尖閣戦争危機」と「原発再稼働で」内閣支持率は20%下がり、10%台になる可能性がある。

◆内閣支持下落39% 安保法案「反対」53% 朝日新聞社世論調査(朝日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11820815.html?ref=pcviewer
6月20(土)、21(日)固定電話調査;
①内閣支持 65%(2013年1Q)⇒39%(今回)と半減
 内閣不支持18%(2013年1Q)⇒37%(今回)と倍増
 女性の支持率は34%、不支持は37%と逆転した。

②安保法案 反対53%:賛成29%とダブルスコア
 違憲判断 違憲50%:合憲17%とトリプルスコア


………(3) 70年安倍談話は閣議決定せず………

公明は自民と連立政権を組んでいる。公明は閣僚の太田国交相を送り込んでいる。閣議決定は全閣僚の署名で成立する。しかし安倍談話は創価学会員が反対している。北側とは異なり、太田が創価学会員の意志に忠実である限り、閣議決定は困難である。

それでも安倍は安倍談話を発表する。閣議決定は省略したから、安倍個人の談話である。公明はこれをもって公明が自民を抑止しきったと自慢するだろう。だが、この慣れきった構図は、毎度自民が少しだけ強い法案を提示し、自公間ですったもんだの芝居後に自民が妥協した演技をして国民を騙す。

安倍首相の談話もこのような観点から見つめる必要がある。安倍談話はもともと閣議決定できる代物では無かったし、する気も無かった。が、いつものように閣議決定すると安倍が言い、すったもんだ芝居をして、安倍が閣議決定を諦め、個人的談話にすれば、公明の成果として自慢できる。

もともと安倍には閣議決定など国会対策の道具に過ぎなかったから、安倍側は談話を閣議決定された「首相談話」と区別して、「安倍首相『の』談話」と大宣伝する。『の』の挿入が首相談話を100倍強める。村山首相談話(50年)と小泉首相談話(60年)の100倍重いと国民洗脳させるだろう。

公明、特に衆院選挙区選出公明議員は戦争でも国家テロでもなんでも加担し、お先棒を担ぐ危険な連中である。退治する必要がある。

◆70年談話、閣議決定せず 自身の歴史観反映か 首相方(朝日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11820819.html?ref=pcviewer
閣議決定は全閣僚の署名が必要。しかし公明党の太田国交相創価学会員の総意の圧力を受けて署名できそうにない。公明党に署名を強要すれば自公選挙協力が崩壊する。

②安倍首相は、「侵略」「心からのおわび」などを明記した戦後50年の村山談話や60年の小泉談話を「全体として引き継ぐ」が、「植民地支配」「おわび」といった文言を出す必要は無い、積極的平和主義の広宣流布だ」などと否定的な考えを示している。

③内閣は、安倍談話を「首相の談話」と呼ばせて、閣議決定した「首相談話」と混同させるだけでなく、「の」を強調して報道させれば、安倍の談話が村山談話や小泉談話よりも、一段と重みのある談話だと国民を騙そうとしている。汚い。官邸に巣食う外務安保マフィアは、汚らわしい連中だ。


………(4) 日韓国交正常化50年行事に両首脳出席………

日本マスコミは案の定、朴槿恵政権が内政の不如意による支持率激減と、安倍による習金平首脳会談成功と、安倍による米国議会演説の大成功によって、国際的孤立に陥り、窮地からの脱出を安倍に縋ってきたと思わせる報道。

しかし韓国の朝鮮日報中央日報の報道は異なり、現段階では可能な限り最大の勝利を安倍から勝ち取った、だが安倍は狡猾である、国際約束を平気で破り捨てるから、今後約束の具体化交渉ですでに提示した条件を寸分も譲歩しない強い外交交渉が肝要だと、油断を戒めている。

明治富国強兵の基礎となって世界遺産に登録されようとしている軍事工場群は朝鮮併合の軍事的条件を完成させただけでなく、併合後は朝鮮人多数を強制的に徴用し(日本は志願だというが、証拠文書が必要な田畑の地籍登録の期限を区切って、ほとんどを無主の田畑となし)、志願に追い込んだ。

しかも極めて多数の徴用者が栄養失調と重労働と極悪環境で死んでいる。それらの歴史事実を漏らすことなく世界遺産に展示することを、ドイツの例を見せて提示し、岸田外相はそれを受け入れたので、韓国は妥協した。

だが、すでに水面下では、日本側が「強制徴用」という言葉も、「地籍登録による田畑没収による志願強制」も展示に表記しないで、別の語彙でごまかす算段を始めたと噂。昨日の日韓歩み寄りは、むしろもっと過激な日韓対立の原因に転じる悪性の種を蒔いたともいえる。

◆日韓首脳、協力を強調 日韓国交正常化50年、両国で式典(朝日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11820814.html?ref=pcviewer
①東京の韓国大使館とソウルの日本大使館で日韓国交正常化50年の記念式典。前者には安倍首相が、後者には朴槿恵大統領が出席した。

②安倍首相「これからの50年を展望し、手を携え、両国の新たな時代を築き上げていこうではありませんか」

朴槿恵大統領「50周年である今年は両国が協力と共栄の未来に向かって進む転換点にしなければならない。最も大きな障害である過去の歴史の重い荷物(植民地支配や慰安婦性奴隷の歴史認識と謝罪)を和解と共生の心でおろすことが重要だ」。

◆日韓、土壇場の改善演出 両首脳の式典出席、直前に発表(朝日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11820775.html?ref=pcviewer
①裏では両政府が心理戦を繰り広げ、出席決定は前日だった。持ち掛けたのは韓国側で、安倍側が拒否の姿勢だった。それが変化したのは安保国会漂流と内閣支持率激減、それに南中国海での中国非難包囲網失敗、AIIBと「一帯一路」で、安倍政権の国際的孤立だけでなく国内でも孤立したからだ。

②外相会談で妥結した明治富国強兵に絡む世界遺産問題も、韓国が提示したドドイツ世界遺産の展示例に日本が同意したからだ。しかし、この問題は安倍側から蒸し返されるだろう。すでに「朝鮮人労働者が多数働いた」と展示したい安倍側に対し韓国側は「強制労働でXX万人が死んだ」を要求する。


………(5) 安倍は衆院会期を再議決で強行する………

参院でも安保法案の審議が紛糾し、参院公明党には比例区議員しかいないから、創価学会員の総意である反対を無視できない。故に、自民は参院強行採決できず、安保法案が衆院から送付されてからずるずる60日を消費するだろう。

そこで安倍は衆院で再可決し、そして解散するだろう。野党は総選挙準備もなく、また惨敗し、安倍は永久的専制君主になる。憲法も、閣議決定も世論も、安倍には無関係になる。専制君主の誕生である。

◆国会95日延長、戦後最長 安保法案、衆院再議決も可能に(朝日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11820813.html?ref=pcviewer
衆院は22日夜、9月27日まで95日間の延長を自民党と「公明党」が強行採決した。

②95日間という史上空前の会期延長は、7月末までに衆院で自公が強行採決し成立させ、参院で60日経過後に、衆院で再議決を強行して安保法案を成立させる目的である。

衆院公明党には自民の選挙協力議席を得た選挙区議員が強硬なる安保法制推進者で、比例区議員の反対を抑えて安倍に協力。しかし参院公明党比例区議員だけで創価学会員の総意を無視できず、半数以上が安倍に批判的。そのため、自民は採決を強行できず、衆院での再議決で強行突破するほかない。

④安倍政権は、参院で議決できなくても、衆院の3分の2以上で再議決できる「60日ルール」を使って、衆院再議決を「最終決戦場」に据えた。しかし、安保法案の「反対包囲網」が憲法学会から元法制局長官にまで拡大し、世論の反対も強く、内閣支持率が激減した。衆院通過の見通しが立たない。

衆院憲法審査会で3人の憲法学者が「違憲」と指摘し、昨日は二人の元内閣法制局長官が異例ともいえる強い口調で批判した――戦争危機を招きよせる/ホルムズ海峡などの経済的理由なら満州事変(満蒙は日本の生命線)と同じ先制攻撃法案だ/明らかな憲法違反/直ちに法案を撤回すべき――と。

⑥「世論調査」での安保法制反対と賛成の比率がダブルスコアになっている、内閣支持率も39%まで激減した。夏以降に原発再稼働を強行すれば、内閣支持率20%台が予測される。

民主党岡田代表も維新の党松野頼久代表はともに会期延長に反対で、いったん閉会し、法案を整理し直し、秋に再提出すればいいではないか」。