辺野古にて 「先軍」政治と壊れた官僚組織の闊歩

※①〜は報道の抜書要点です。

翁長雄志知事が「県漁業調整規則」を根拠に辺野古移設作業停止を指示した。「県漁業調整規則」は農水省が所管する「水産資源保護法」に基づいて沖縄県が制定した規則である。防衛省による辺野古海岸サンゴ礁の破壊が水産資源に損害を与えるというもので、「水産資源保護法」の目的に合致している。

だが、防衛省農水省という同じ政府内部局に、水産資源に損害を与えるサンゴ礁破壊のではなく、基地移設の大幅遅れが与える「日米間の外交・防衛上の回復困難で重大な損害」を理由に提訴した。

それに対して、農水相が、水産資源環境の破壊行為である防衛省の工事を、「水産資源保護法」を根拠に知事の停止指示を停止させる行政措置を採決した。

なんとも異様で、安倍内閣憲法9条すら容易く解釈改憲しおおせた自信過剰が、「水産資源保護法」に「水産資源を破壊させる」というインサイダー裁決に躊躇なく踏み切ったのだ。憲法解釈変更も首相の一存で強行突破できる。法律の目的外利用も、法律の目的に対立する法律利用も、自由自在なのだ。

この国には、民主主義とまともな選挙を冒涜する「先軍」政治と壊れた官僚組織が闊歩している。

辺野古:農相、知事指示を「執行停止」 県、法的措置も(毎日)
http://mainichi.jp/select/news/20150330k0000e010142000c.html
辺野古:沖縄県「次の手」に苦慮…知事指示を「執行停止」(毎日)
http://mainichi.jp/select/news/20150331k0000m010170000c.html
◆沖縄知事、国の姿勢批判 辺野古作業停止、農水相認めず(朝日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11679245.html?ref=pcviewer
◆沖縄知事、次の手探る 手続きの応酬懸念 辺野古移設作業(朝日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11679216.html?ref=pcviewer

翁長雄志知事が「県漁業調整規則」を根拠に辺野古移設作業停止指示
防衛省の沖縄防衛局が、「水産資源保護法」を所管する農水相に知事の執行停止命令を不服とする審査請求
林芳正農相は沖縄防衛局の不服申請を認め、沖縄県知事の作業停止命令の執行停止命じる裁決
農水相『➊全ての移設工事が中止されれば基地移設が大幅に遅れ、日米間の外交・防衛上の回復困難で重大な損害が生じる➋普天間飛行場周辺住民に対する危険性や騒音の継続による損害』
林芳正農相『政府側の防衛局の請求を、同じ政府側の農相が判断することにも問題は無い。国が事業者である場合も岩礁破砕許可が必要で、私人が事業者である場合と変わりがないからだ』
⑤菅官房長官『県の権限は水産資源保護法に基づく(国からの)法定受託事務であり、同法を所管する農相が公平、中立な立場から審査し、執行を停止した。妥当な裁決であり、海底ボーリング調査は、環境保全に万全を期しながら粛々と対応していきたい』
⑥翁長氏は報道陣に『腹を据えて対応したいが、個別的なものは軽々に答えられないので、今日のコメントはこれだけにさせて頂きたい』
⑦知事選で翁長氏は共産、社民から自民系地方議員まで「辺野古移設阻止」の一点で支持を集めた。次の一手への期待感こそ、支持者を束ねる「横串」だ。照屋寛徳衆院議員(社民)ら翁長氏を支える沖縄選出国会議員5氏が「指示の執行停止なら、知事は間を置かずに破砕許可を取り消すべきだ」と声明。
共産党の仁比聡平氏参院予算委員会で、『沖縄防衛局が翁長氏への対抗措置に用いた行政不服審査法は国民の権利、利益の救済を図るものだ。それなのに、法を曲げてでも(作業を)強行するのは直ちにやめるべきだ」と、安倍晋三首相にただした。
⑨首相『国や地方自治体の機関が私人と同様の立場で処分を受ける場合には、不服申し立ての資格を有する。沖縄防衛局は私人の事業者と異なることはない』。
那覇市長が自衛隊那覇基地の関連情報の公開を決定したのに対し、国が決定の取り消しを求めた行政訴訟で、1995年の一審判決は「(訴訟は)個人の権利救済が目的で、国などの行政主体は原則として起こせない」と却下した。96年の二審と01年の最高裁の判決も、別の理由で国の訴えを棄却。
⑪しかし、裁判所は、行政訴訟法は「国は原告には成れない」という判例を敷衍し「自治体も国と同じく原告に成れない」と判断する可能性が強く、沖縄県行政訴訟を起こしても、裁判所が受理しないか敗訴するだろう。行政訴訟法は国の事象の受注者である地方自治体が原告となることを禁止というのだ。
⑫翁知事と内閣は相互に行政訴訟の合戦を繰り広げるしかないのだろう。
※「政府の人格」や「民主主義の理解度」が如実に顕われる事態になっている。


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辺野古 県反論 翁長知事コメント全文(琉球新報
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-241044-storytopic-3.html
本日、3月27日、農林水産大臣あてに、沖縄防衛局長から提出された執行停止申立書に対する意見書を提出した。
 私が行った3月23日の指示に、沖縄防衛局長が、農林水産大臣あて、審査請求に対する裁決があるまで指示の効力を停止するよう申し立てしたものであり、農林水産大臣から、本日までに意見書を提出するよう通知があった。
 23日の指示に対し、翌日24日に執行停止申立書が沖縄防衛局長から農林水産大臣に提出され、その日の午後には東京から農林水産省職員が、沖縄県に意見書提出に関する文書を手交しに来た。
 さらにその意見書の提出期限は3日後の本日27日という、行政手続き的には、いかがなものかと思える対応でしたが、県としては、何とか期限内の意見書提出に至りました。
 意見書の内容ですが、
 (1)まず、沖縄防衛局は指示により行政処分を受けたと申し立てているが、指示の法的位置づけは、行政指導である。
 (2)次に、沖縄防衛局は一般の国民同様の立場で処分を受けたと申し立てているが、そもそも、この申立制度は、国民に対して広く行政庁に対する不服申し立ての途を開くことを目的としており、国自体が不服申し立てを行うことが予定されていない。さらに法自体が、審査する立場にある国が、別の国の機関から申し立てをうけることを想定していないので、沖縄防衛局は申請人としての性質を持たない。
 (3)また、沖縄防衛局は、地方自治法第255条の2を根拠としているが、岩礁破砕等の許可制度は法定受託事務であることから、そもそも県の手続きに不服があるなら、地方自治法第245条の8にある、代執行等で行うべきである。
 以上から、この申し立て自体が成立し得ないことから、それを認めて執行停止に至ることは認められないと意見した。
 もし仮に、この申し立てが成立したとしても、次の理由から、県の行った措置は適法であることも意見を述べた。
 (4)岩礁破砕の定義からも、常識的にも、最大45トンものコンクリート製構造物の設置は、船舶の投錨(とうびょう)に類する軽微な行為ではないことは明白であり、岩礁の破砕に該当し得ることも明白である。
 (5)事前協議について、県は、取扱方針に明文で記載されている内容を説明し、岩礁破砕行為でない投錨程度の軽微なものは申請が必要ないとしたものを、沖縄防衛局はあたかもアンカーと称すれば、いかなる巨大なものであっても申請が必要ないとの説明を受けたかのようにすりかえ、さらに申請書からも削除させたかのように主張している。
 しかし、沖縄防衛局は、当初、浮標のアンカーには160キロ程度のものを使用し、一方、許可申請書内では汚濁防止膜のアンカーとして、およそ15トンのコンクリート製構造物を記載していることからすると、コンクリート製構造物の設置に関しては、適切に許可申請の要否を判断できていたと考えられる。
 さらに、中谷防衛大臣の国会答弁でも、10月の台風時にフロートが流されたことを受け、アンカーを重くすることを環境監視等委員会に説明したとあることから、45トンものコンクリート製構造物の設置は、当初から計画されていたものではないと考えられる。
 (6)現在実施されているボーリング調査にまで停止を求めていることに対しては、指示は、許可区域外において無許可で行われている巨大コンクリート製構造物の投下行為が行われている蓋然(がいぜん)性が認められること、及び、許可区域外の工事の停止と調査を求める指示に対して十分な対応をしてこなかったことを理由として、コンクリート製構造物の投下行為と一体となる工事の停止と調査を行わせるよう求めるものである。
 (7)浮標等のアンカーについて、沖縄県内で国の機関を事業者とする他の同種事案においても岩礁破砕等の手続きの対象とされていないと主張しているが、その情報は、許可を必要とするべき漁業権内の海域であるかどうかなど、何も示されておらず、沖縄防衛局の資料でも最大8トンとなっており、20トンや45トンものコンクリート製構造物とあまりにもかけ離れている。
 県外の事例も示されているが、漁業権が設定されている海域なのかどうかなど、必要な根拠は何も示されていない。
 (8)アンカーの設置面積を約300平方メートルとし、許可を受けた区域が約160ヘクタール、施行区域は約560ヘクタールと比較して、比例原則に反して著しい権限濫用と主張しているが、総面積約300平方メートル、臨時制限区域の外周、約10キロにわたって数十個のコンクリート製構造物を設置する行為を軽微とするなら、水産資源の保護培養、漁業秩序の確立という法の趣旨を明らかに軽視するものに他ならない。
 最後に、沖縄防衛局は、指示により工事が停止されることに関する損害として、普天間飛行場の返還の遅れに直結する、日米関係にも問題が生じると主張しているが、
 (9)戦後70年を経た今もなお、国土面積の約0・6%しかない本県に約74%の米軍専用施設が存在する状況は、異常としか言いようがなく、その米軍基地が沖縄経済発展の最大の阻害要因であることは明確である。
 日本の安全保障が大事である。それは私も等しく共有する思いでありますが、負担を沖縄県民だけが背負うのではなく、日本国民全体で考えるべきである。
 その様な歴史をたどって来たからこそ、沖縄の県民は先の県知事選において、36万票という民意となり、移設による負担の継続ではなく、米軍基地負担を否定する道を選んだのである。
 普天間飛行場を抱える宜野湾市民の意思も、約3千票の差をもってこれが支持されていることも忘れないでいただきたい。
 それにもかかわらず、政府の一方的論理によって、辺野古移設を「唯一の解決策」であると決めつけて、普天間飛行場の負担の大きさを執行停止の理由として述べることは、悲しいことでありますが、沖縄県民の痛みを感じない、感じようとしない政府の姿勢があることを国民の皆さまに知っていただきたい。
 (10)国の言い分はあまりに抽象的な主張であり反論の必要に欠けるが、基地の移設について日本の国内法に基づいた正当な許可手続きを経て実施させることが、なぜ、日米関係の悪化につながるのか私には理解できない。
 また、日米関係が悪化するから、日本国内法に基づく必要な許可を得ないままに作業を続行させて良いというのであれば、それは主権を持つ一つの独立国家の行動ではないと断じざるを得ないであろう。
 (11)そもそも、幾度となく、情報提供や調査協力の要請を行うとともに、コンクリート製構造物の設置行為が岩礁破砕行為に該当するのであれば、必要な手続きを採るべきであることをも伝えてきたが、沖縄防衛局は、許可の申請や協議を行うことなく、工事を続行し続けて来た結果、県自身で調査活動を行わざるを得ない状況に陥ったのである。
 このような意見をもって、沖縄防衛局の申し立ては、不適法であって却下されるべきであり、また、仮に申し立て自体が適法であったとしても、明らかに執行停止の要件を欠如するものであるから、速やかに棄却されるべきであると意見した。
 2015年3月27日
沖縄県知事 翁長雄志