NATO解体論とトランプ(全文訳)

◆Trump sparks NATO debate: ‘Obsolete’ or ‘tripwire that could lead to World War III’?
https://www.rt.com/usa/338237-trump-fine-nato-breakup-obsolete/
米国大統領候補トランプはこうしたNATOの生い立ちと破壊工作について調査し冷静に認識していたのです。彼はNATOを「遺物」に過ぎないと酷評したのです。食卓に上がることの無かったNATOの話題に、異質な者同士の奇妙な連合という透視を提示して、大論争を起こしたのです。

NYTはトランプを蔑み「NATOを破壊し、韓国と日本を核武装させるなど、彼は外交のイロハも理解していない」と論評し、「トランプが大統領になれば、同盟国の軍事負担が増大するだけではなく、タフトが予言したようにロシア国境で第三次世界大戦が起こる」と非難しました。

NATO第二次世界大戦の時に、資本主義に反対する運動の拡大を阻止し、安定を維持するために創立され、情報を共有し加盟国が攻撃に晒されないように軍事を共有するものでした。トランプはNATOのために米国が負担する軍事費の配分比率を不公正であると非難し、是正のための交渉をする時だと主張しました。『我々は軍備や他の手段を提供し彼らを護っている。それなのに彼らはアメリカから法外な金を奪い取るばかりだ。負担の公平化に応じないのなら軍を撤収すべきだ』とブリュッセルNATO本部の隣で自爆攻撃が行われたときに、トランプはNATOを爆撃したのです(FOX News)

トランプの立ち位置はサンダースを同じになったのです。サンダースはNATOの拡大に反対し、『21世紀の安全保障はロシアとアラブにも参加してもらい、新しい共生を創造すべきだ』と主張しています。

共和党候補者のクルーズは『NATOからの撤退はISとプーチンに大勝利をもたらすだろう』と言い、民主党候補者のヒラリー・クリントンは『プーチンは既に欧州分断の野望に燃えている。NATO解消はクレムリンをクリスマスのようなお祭り騒ぎにするだけだ』と警告した。共和党候補のケーシックは『NATOは更なる強化が必要』と主張した。

ベルリンの壁が陥落したとき、ゴルバチョフ東西ドイツの再統一に合意しましたが、その条件はNATO12国が東方ロシア側に拡大しないことだったのです。しかし、NATOはロシア国境に向かって拡大を続けて、加盟国を28に増やし、NATO不拡大という約束を無視して、事あるごとに挑みかかっているのです。米国はロシア国境に向かって軍事的威圧を加えているのです。
(BBC)estNATO ‎@estNATO

最近のNATO加盟国はバルカン半島モンテネグロです。そして、ボスニア・ヘルツゴビナ、ジョージア(ロシアとトルコの間)、マケドニアギリシャ北西)がそれに続いています。これらの国は、市場経済に基くデモクラシー、少数民族に対する公平、そして軍事的貢献能力が要求されました。

任期がおわるオバマ大統領を含めて、米国の政治家はトランプの物議をかもす主張は国際政治に対する理解を欠いていると言う。とりわけオバマは、日本と韓国に米国の核戦争抑止の軍事的な力に対する信頼に頼ることをやめ、両国が核武装を容認するトランプの主張に強く反撃している。

米軍統合参謀本部議長 Joseph Dunford『トランプの主張は15年前の国際環境でなら議論の余地があったかもしれない。だがその後私はNATOのアフガン派遣軍を指揮するという名誉ある権利を行使したのです。その後も10年間、今もNATOの有志国連合軍はアフガンに駐留し続け断固としてアフガンを未来あるものに換えようと共に努力している。この状況の異常さをトランプは理解していない』。

国務長官Ash Carter『NATOは多くの行動実績をあげ、今も行動している。1999年に派兵されたアフリカのコソボではその存在感が高まるばかりだ』とトランプを批判。

NATOはアフガンに出兵し、海賊との戦闘のためにソマリアに出兵し、今またシリアでの戦闘を支援している。NATOの作戦は米国外交を彼らの目的へと前進させた。そのために米国政治家、とりわけ民主党議員が情熱的にロビー活動し議会と世論を動かしている。NATOの中の有志国によるガルフ湾出兵がリビア国家元首カダフィを転覆させたように、NATO同盟国は数十年にわたって紛争の最前線に立ってきた。それらは時代遅れなNATO戦争犯罪である。

NATO加盟国はGDPの大きさに比例する分担をしてきたのであって、米国のみに負担を押し付けたのではない。米国は22%を負担し、ドイツは14.5%負担し、英国は11%負担している。だがトランプは『NATO加盟国は殆ど貢献していない、実際のNATO軍事費は3000億ドル(35兆円)を超える』と反論する。

2006年にNATOはそれぞれの国のGDPの2%以上を軍事費に充てると約束しているが、約束を守ったのは、米国のほかに英国とギリシャポーランドエストニアだけである。世界経済の危機と次々に起こる緊縮財政の必要が軍事費2%目標を未達にさせた。

米国を除くNATO国の総GDPは米国よりも大きい(1.2倍)が、米国防費の半分以下である。2015年に米国は5980億$(70兆円)を軍事費に使った。英国は660億$と米国の1/9だった。米国の軍事費は実質的な国家予算の50%を超える。税以外の社会保険を加えた米国政府支出においてさえ16%に近い(日本は8%)異常な軍事費である。

米国はNATOに、2009年は8億$、2010年は7億$を支出した。それは総軍事費6000億$の0.1%という微々たる金額が、欧州の米軍基地と欧州軍の情報共有や代理戦争という地政学的な戦略の対価なのだ。

にも拘わらず、米国の兵器企業群はNATO加盟国の税金を剥がし取っている。ボーイングロッキードマーチンやその他の兵器産業はNATO軍事費の殆どを手にしている。そのために米国兵器産業は90年代にNATOを拡大させるために巨額の議会工作費を費やしておつりの来る利得を得ている。例えば、ロッキードマーチンルーマニアNATO加盟を要求する同国軍事企業に投資し、ボーイングチェコのお友達企業に投資した。

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NATOは1990年代にユーゴスラビア内部紛争に介入した。NATOは1993年から1995まで飛行禁止空域を宣言したうえで78日間の悲惨な空爆作戦を強行した。その結果ユーゴのベルグラードは瓦礫と化し無数の市民が殺された。

この紛争はNATOに何らの脅威も与えなかったにも拘わらず、「人道的介入」が必要だと見せかけた。真実は、いつものように、ワシントンが政治的バランスをシフトさせる「ご親切」であった。

しかし、満足すべき結果は得られなかった。ワシントンはNATOを心からの善意をもって内戦を停止させるところの平和を希求する軍事同盟として売り込むことに失敗し、出兵の正当化に腐心するほかなかった。誰一人その正当化に加わろうとするものは現れなかった。それは、NATO加盟国の安全に対する、誰でも手に触れることのできる、眼に見える脅しでなければなららかったのだ。

NATOの報道官は2013年にロシアの脅威という誇大宣伝活動を開始した。プーチンはその後現在まで2年間バルチック地域を侵略される危機に瀕していた。切迫した脅威の証拠は何も無く的外れな主張であったが、その誇大宣伝は人々は信じ込むまで執拗に繰り返された。

物事の周辺にある些細な過失を探し求め続けることによって、モスクワは犯罪者にされた。勿論それは米国が4500マイル離れたロシア国境にまで影響力を行使するための壮大なるあてこすりに過ぎなかった。モスクワは過ぎし日の栄華の再現を求めないと決定的な発言をしたが、NATOはそれを脇に置いて緊張を高め続けた。

ロシア連邦が安全を脅かす主要な脅威の元であると見せかけるために、NATOはわざとゆっくりロシア国境への拡大をわざとゆっくり進めた。その間中ずっと、NATOは被害者を演じた。プーチンをならず者にするNATOの倫理上の犯罪行為はプーチンNATOの敵対関係を強めたのだ。

アメリカ大統領候補者ドナルド・トランプは、壊れた時計のように、ぶんぶん煩い愚か者であると、常に自分が正しいと言い募る時代遅れのNATOは評価する。創立以来67年間NATOはその存在を正当化する都合の良い理由など見つけることができなかった。どこにも脅威など存在しなかったから、彼らは架空の脅威をイメージし、それを強めることに腐心した。それは壮大ともいえる陰謀であったが、同盟国の関心を引き付ける唯一のものであった。NATOにサヨナラを言うときがきた。