安倍談話、2015年8月14日と15日

(1) 歴史から安倍は何を学ぶのか
(2) 中韓露政府の非難
(3) 外国メディアの批判報道
(4) それでも依怙地に靖国参拝
※敬称略 ◆は参照報道、①〜はその要点


………(1) 歴史から安倍は何を学ぶのか………

◆安倍首相の戦後70年談話全文(朝日)
http://digital.asahi.com/articles/ASH8G5W9YH8GUTFK00T.html

【安倍談話内容】
1.「歴史の教訓の中から、未来への知恵を学ばなければならない」・・・安倍は何を学ぶのか?

❶十九世紀の世界には、植民地がアジアにも押し寄せ、日露戦争は、植民地支配のもとにあった、多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけ、植民地化にブレーキをかけた。
第一次世界大戦の悲惨な戦争を反省し、国際連盟を創設し、不戦条約を生み出し、戦争自体を違法化した。しかし、世界恐慌が発生し、欧米諸国が経済のブロック化を進め、日本経済は大きな打撃を受け、孤立感を深め、力の行使によって解決しようと試み、満州事変、そして国際連盟からの脱退し、敗戦。

2.戦後生まれ世代はあの戦争とは関わりが無い、謝罪を続ける宿命は投げ捨てるべきだ。

❶我が国は、自由で民主的な国を創り上げ、法の支配を重んじ、ひたすら不戦の誓いを堅持してまいりました。七十年間に及ぶ平和国家としての歩み、私たちは、静かな誇りを抱きながら、この不動の方針を、これからも貫いてまいります。こうした歴代内閣の立場は、今後も、揺るぎないものであります。
➋そして、日本では、戦後生まれの世代が、今や、人口の八割を超えています。あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません。

3.「自由、民主主義、人権といった基本的価値を共有する国々と手を携えて、『積極的平和主義』の旗を高く掲げる」・・・現代中国が戦前の日本と同じ力の行使によって打開しようとしていると非難。

❶戦後の焼け野原、貧しさのどん底の中で、命をつなぐことができた。それは、米国、豪州、欧州諸国をはじめ、本当にたくさんの国々から、恩讐を越えて、善意と支援の手が差しのべられたおかげであります。
➋我が国は、いかなる紛争も、法の支配を尊重し、力の行使ではなく、平和的・外交的に解決すべきである。経済のブロック化が紛争の芽を育てた過去を、この胸に刻み、いかなる国の恣意にも左右されない、自由で、公正で、開かれた国際経済システムを発展させ、世界の更なる繁栄を牽引してまいります。
➌我が国は、自由、民主主義、人権といった基本的価値を揺るぎないものとして堅持し、その『価値を共有する国々と手を携えて』、「積極的平和主義」の旗を高く掲げ、世界の平和と繁栄にこれまで以上に貢献してまいります。

【安倍談話批判】
・いろんな意味で歴史認識紛争は「ここで終わりにしよう」で終始し、中国牽制が結論になっている。
・いろんな質問にもなんら答えなかった、例えば安倍の過去発言との齟齬など。
・主語が全くない。謝罪も過去の政権がこういったと引くだけで安倍本人の言が全くなかった。
日露戦争を「植民地解放戦争」だったと安倍は主張したのか?日露戦争は植民地奪い合いの戦争であったことを美化している。危険な歴史認識である。
・韓国や中国に直接謝罪は全くなかった。全ては被害を受けた諸外国民の苦労に同情するといったに過ぎないと他人事である。

【安倍談話の本心】
日露戦争はアジアやアフリカに勇気を与えた
・子や孫は戦争責任とは全く関係が無い、謝罪は断ち切る必要がある
・中国は脅威、仮想敵国だ。日本単独では勝てないから米軍と
・そのために、積極的平和主義を更に高く掲げ、基本的価値を共有する国と軍事同盟

米国政府とネオコンの安倍に対する歴史認識正常化要求は、安倍側にとって、想像以上に過酷であった。中国と米国の背後における連携は鉄壁であったとも言える。

それでも安倍は現在の中国脅威を示唆する「国際法遵守」を言ったが、それはか細く、一瞬で論破されることを予感させる。

安倍の冗長な反省?にもかかわらず、彼の虚言癖によって、今日のこの言を「行動によって証明する」ことを世界は注視するであろう。安倍の私的諮問機関の報告書の最終章にある今後の政策が改めて安倍の虚言癖の払拭を促さないだろうことを誰でも予感させるからだ。

それは戦後歴史を、中韓を排除した、欧米とASEANと日本の共同歴史研究という方針に露骨である。アジア太平洋戦争の朝鮮と中国における日本の蛮行を、それ以外の国々だけで正当化すること、そして日本の若者をそうして洗脳する歪んだ教科書を押し付ける活動で、その本心を確認できる。

安倍は権力維持に虚言を弄して世界騙そうとしている。その芝居は過剰で長大に過ぎた。多すぎる虚言は彼の過去の発言との二律背反を浮き彫りにする。安倍は自分の過去発言との齟齬を生涯にわたって追及されるべきだ。1945年の日本の反省が「一億総懺悔」で誤魔化された二の舞は許されない。

◆支持率さらに下落必至…安倍首相「戦後70年談話」の大誤算 (日刊ゲンダイ
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/162774
①どっちつかずの内容で、しかも右派に気を使わざるを得ない。追い込まれている安倍首相の苦境が、談話に表れています。支持率はさらに下落するでしょう。歴史に名を残したいと格好をつけ、墓穴を掘りました。ホント、バカな首相だ。


………(2) 中韓露政府の非難………

◆中国外務省「戦争責任を明確に説明し謝罪すべきだ」安倍談話(朝日)
http://digital.asahi.com/articles/ASH8H03L8H8GUHBI02V.html
①中国外務省は14日夜、安倍晋三首相が発表した戦後70年談話の内容について、木寺昌人駐中国大使を外務省に召還し、
②「中国の厳正な立場」を再び表明し、「日本は侵略戦争の性質と戦争責任を明確に説明し、被害国人民に誠実に謝罪するべきだ。この重大な原則的な問題をごまかしてはならない」と通達した。

◆韓国外務省、「日本政府の歴史観あらわに=70年談話『行動見守る』」(時事)
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol&k=2015081500208&utm_source=twitter&utm_medium=jijicom&utm_campaign=twitter
①現在の日本政府が植民地支配と侵略の過去にどのような歴史観を持っているか、国際社会にはっきりと示す機会になった。
②歴代内閣の歴史認識は今後も揺るぎないと表明したことに注目する。日本政府がこうした立場をどのように具体的行動で実践するかを見守ることにした。歴史問題では原則通りに対応する。
③安倍首相が15日、靖国神社に私費で玉串料を奉納し、一部閣僚が同神社を参拝したことは、日本の指導層が(歴史に対する)真剣な省察と反省の姿勢を拒否することを行動で示したことになる。これでは、国際社会の信頼は得られない。

北方領土で日本の抗議拒絶=「大戦の結果無視」−ロシア外務省(時事)
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol&k=2015081500022&utm_source=twitter&utm_medium=jijicom&utm_campaign=twitter
①日本は第2次大戦の結果を無視している。トルトネフ副首相による北方領土択捉島訪問はポツダム宣言8項の忠実な履行である。
②日本政府の抗議「政府の立場と相いれず、日本国民の感情を傷つける」を拒絶する。政府要人の(北方領土)訪問に際して日本の立場を考慮するつもりはなく、今後も続けられる。

国連事務総長「真の和解必要」 安倍談話に遺憾表明(朝鮮日報
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/08/15/2015081500557.html?utm_source=twitterfeed&utm_medium=twitter
①「過去の歴史に対する反省と理解に基づき関連国が真に和解し、共に平和と繁栄の道に進むべきだ」潘基文(パン・ギムン)事務総長


………(3) 外国メディアの批判報道………

新華社、「歴史攻勢」今後も=「おわび直接回避」−安倍首相訪問に期待も・中国(時事)
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol&k=2015081400796&utm_source=twitter&utm_medium=jijicom&utm_campaign=twitter
新華社は、談話は「『反省』と『おわび』を直接表明することを回避し、日本は今後おわびを続ける必要はないと言明した」と報じた。
②9月3日の抗日戦勝70周年式典に安倍の参列を強く求め、そこで安倍謝罪の真実性を確認する考えもある。しかし、中国政府の中には、安倍首相は「戦前回帰志向」(対日関係者)が強いとして、本格的な信頼関係構築は困難との見方もある。
新華社通信は13日の論評で、「(安倍政権の)誤った歴史観と時代の潮流に逆らった安全保障観の下での『戦後レジーム脱却』は、未来を切り開く助けにはならないばかりか、戦前の暗黒時代に逆戻りする可能性もある」と指摘。強い警戒感は簡単に解けそうにない。

◆安倍談話発表 直接の「お詫び」避ける(人民日報)
http://j.people.com.cn/n/2015/0814/c94474-8936383.html
◆日本官方发布“安倍谈话”中文版本(人民日報)
http://world.people.com.cn/n/2015/0815/c1002-27465833.html
安倍氏は談話において直接「反省」と「お詫び」の意を表明することを避け、過去の日本政府の歴史認識の回顧を通じ、「我が国は先の大戦における行いについて、繰り返し痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきた」と述べた。安倍氏自身は反省も謝罪もしたくないらしい。
安倍氏は日本の侵略と植民地行為についても、同様に直接的な表現を避け、「事変、侵略、戦争。いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争を解決する手段として二度と用いてはならない」、「植民地支配から永遠に訣別」など第三者的で一般論的な口調を用いた。
安倍氏はまた、戦後生まれの世代が人口の8割を超え、「あの戦争に何ら関わりのない」世代に「謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」と述べた。戦争犯罪を起こした日本の歴史を正視し、国民に伝えて、再びの犯罪を阻止せんとする気持ちとは正反対の本心を安倍氏は堅持している。

◆反省与道歉,容不得不真诚(人民日報)
http://world.people.com.cn/n/2015/0815/c1002-27466211.html
反省と陳謝には心がこもっていない
①安倍は“植民”、“侵略”、“陳謝”を歴代内閣が繰り返し声明してきたとのべ、彼自身の反省と謝罪については言葉を濁した。戦後生まれ世代には謝罪を繰り返す義務など無いと突っぱねた。戦後生まれ世代には安倍の歴史改竄バージョンを教えれば良い。すでにその教科書は出来ている・・・
②安倍には、華麗な言葉の修飾を並べても、言えない不誠実が、隠せば隠すほど現れる。安倍の話には「主体=安倍自身」が存在しない。謝罪したのは村山首相であって安倍ではないのだ。村山氏が謝罪したから『俺は謝罪の必要などない。しかも村山の謝罪は歴史を改竄した』というのが本心であろう。
③安倍談話の2日前12日、韓国で開催された2015東アジア国際平和会議に鳩山由紀夫元首相が参加して、ソウル西大門刑務所にある抗日烈士墓碑にひざまずいて、日本の植民地統治の時期に犯した残酷な犯罪を謝罪して、国際社会の広範な称賛を勝ち取りました。これは日本の指導者の模範です!
④日本の指導者は歴史責任を正面から引き受け、軍国主義の侵略史を徹底的に処断すべきです。この重大な原則の前に、いかなる事実をも覆い隠すべきでありません。
南京大虐殺紀念館で生存者李秀英さんの話;私たちは歴史をしっかりと記憶するが、それは憎しみの為ではない。私たちの国は日本に対して寛大な処置を実施してきた。世代が変われば忘却され、再びの蛮行が起こされない保証はない。だから平和のために記憶するのです。
大切なことは記憶を噛みしめる具体的な行動の有り無しとその深さなのです。それなくして日中の平和友好と幸福はもたらされないのです。

◆視点:「アジアとの和解」という態度が欠ける安倍談(中国網)
http://japanese.china.org.cn/jp/txt/2015-08/15/content_36313321.htm
安倍氏は「反省」という言葉を使ったことがあるが、日本が侵略戦争を起こし、植民地支配を行ったことに「痛切な反省」をしているのではなく、人類社会が戦争一般に対する反省という意味だった。
②20年前、村山富市内閣が戦後50年談話に関する議論していた。戦争問題について、国際社会に対する日本の態度を表明しようとしたころ、それに断固反対する右翼政治家がいた。そのひとりが安倍晋三氏である。
安倍氏に追随する日本の右翼メディアは何度も、安倍氏は日本の対外戦争を侵略戦争としないし、戦争や植民地支配に謝罪することはないと何度も言い続けた。70年前の戦争に対するこのような態度こそ、安倍氏の本意なのだろう。
④四千字に上る安倍談話は、日本が他国を侵略した原因を分析しているが、意味不明。武力による国際紛争の解決をしないと宣言して日本の平和憲法との内容を一致させながら、他方では「積極的平和主義」を最後に語る。これは日本国内でいま審議されている「集団的自衛権」の問題を想起させる。
⑤日本の民間では「戦争法」と呼ばれている。安倍氏は最近、国会など正式な場で公然と「中国脅威論」を語りだした。南中国海へ行って平和を維持すべきだとすら語っている。安倍氏アジア諸国と本当に和解する気があるのかどうか、現状では疑問がある。
安倍氏の主張する「積極的平和主義」では、日本とアジアとの和解は難しい。中国は9月3日、中国人民抗日戦争および世界反ファシズム戦争勝利の70周年活動を行う。安倍氏はこれに参加すべきだ。
➆そして自分の言葉で中国市民に対し、「痛切な反省」と「心からのおわび」をするべきだ。そうでなければ日本がアジア諸国との最終的な和解は、戦後70周年のときに訪れることはないだろう。

◆「穏やかでも十分」「過去形の謝罪」=おわび言及に、韓国・中国人社会(時事)
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc&k=2015081400936&utm_source=twitter&utm_medium=jijicom&utm_campaign=twitter
①一定の評価をする声が聞かれた一方、「過去形の謝罪なのでは」との声も
「『繰り返しおわびの気持ちを表明してきた』という表現は過去形」
「(おわびは)引用していて(心からの)謝罪の気持ちは感じない」
「『おわび』が曖昧。相手に伝わる言葉を使ってほしかった。自分の言葉で、一言言えば済むことなのに」
「戦後の中国人の態度を『寛容な心』と強調されたのは、今後も寛容であることを強要されてるみたい」
「争いは権力や利益を求め過ぎた結果だ。今の政治家は権力に固執してはいないか。本当に戦争をしないと態度で示せるかどうかだ」。

◆Shinzo Abe upholds Japan war apology but reframes it in a nationalist narrative about resistance to colonialism(FT)
http://www.ft.com/intl/cms/s/1afbfa4a-426c-11e5-9abe-5b335da3a90e,Authorised=false.html?siteedition=intl&_i_location=http%3A%2F%2Fwww.ft.com%2Fcms%2Fs%2F0%2F1afbfa4a-426c-11e5-9abe-5b335da3a90e.html%3Fsiteedition%3Dintl&_i_referer=&classification=conditional_standard&iab=barrier-app#axzz3iqP1HRzE
安倍晋三は謝罪を踏襲したものの、彼の国家主義者としての談話では植民地解放戦争だったと冒頭から主張され、日露戦争を偉大で世界から称賛される勝利であるとの印象を与えることに腐心している。

◆Japan’s PM: We’re sorry for #WWII, but we can’t keep apologizing forever(CNN)
http://cnn.it/1LbireS
①安倍は謝罪を口にしたが、過去の政権の謝罪を紹介しただけであり、それらを踏襲すると言ったはなから、永遠に謝罪し続ける必要は無いと言い切った。

◆How much remorse has Japan shown over WWII?(BBC)
http://www.bbc.com/news/world-asia-33921001?ocid=socialflow_twitter
日本はWWIIについて自責を示したと言えるか?
①日本は第二世界大戦での残虐行為を何十回も謝罪したと主張しているが、しかし、中国と韓国は満足には程遠いという。そして、70回目の終戦記念日に安倍政権は被害者に謝罪を繰り返すことになるだろう。
②日本の歴史修正論者はWW2の性奴隷という残虐行為を否定する。航空自衛隊のトップであった田母神氏は最も雄弁な主張者だ。彼の主張は若い日本人の間に人気がある。
「勝者の歴史を押し付けられてきた。独立した我が国はその歴史観から解放されねばならぬ。白人帝国主義者たちを追い出すための植民地解放戦争を勇敢に戦った。それが歴史の真実である。私たちを誇りにすべきだ」と主張する。
③田母神氏は「残虐行為は全く行われず、朝鮮半島も侵略しなかった。むしろ台湾と朝鮮と満州に投資をおこない文化を高めたのだ。南京虐殺は全くなかったと断言できる。中国の民間人を日本兵士が屠殺する目撃者が皆無だからだ」と叫ぶ。
④田母神氏は戦時性奴隷についても同様に完全否定して言う、「もし事実ならなぜ強制連行される女性を救う行動を朝鮮人はしなかったのか?臆病だからか?」などと。騒がしい彼らの歴史否定は日本の国家主義者が広く信じている歴史バージョンである。
安倍晋三首相は戦場に朝鮮からの慰安婦が居たことは認めている。しかし安倍は繰り返し「強制連行した証拠は無い」と言い、また募集に応じた売春婦であったと主張する。これは歴史の非常な暗部である。売春婦制度が続いていたからと言って、日本軍の責任が免除されるわけではない。
⑥90歳前後の元性奴隷の女性たちは勇気を奮って告白している。『私達は誘拐された』のだと。釜山の李さんの家は日本に土地を奪われ貧しかった、14歳の時に、街角で誘拐され中国に運ばれて、3年間性奴隷を務めさせられた。
➆東京に住む93歳の松本さんは中国で毎日6人の性奴隷を規則正しく性病検査した。兵士は農村を襲って強姦し虐殺した。将校は慰安所で堪能していた。松本さんは償うために聖職者になった。日本右翼が執拗に攻撃する。お前の喉を切ってやると脅された。安倍を許すわけにはいかない。

◆Why Abe's 'utmost grief' won't ease regional tensions(DW)
http://www.dw.com/en/why-abes-utmost-grief-wont-ease-regional-tensions/a-18649603?maca=en-rss-en-all-1573-rdf
安倍の『最大限の悲嘆』が地域の緊張を緩和しない理由は?
①アジア地域を緊張させた安倍にとって談話はそれを解きほぐす唯一のチャンスであったはずだ。しかし安倍は過去の日本政権による謝罪を踏襲すると言ったにもかかわらず、彼の国家主義が、再び個人的な「誠実な謝罪」を出すことを失敗させた。
②彼はまた、「戦後生まれ世代が永遠に謝罪し続ける必要は無い、そうはさせない」と言い切った。彼の本心はそこにあったのだ。安倍の「歴史の教訓」とは単なる流行語にすぎず、安倍談話を詳細に読むと「安倍自身は謝罪していない」のだ。
③安倍は村山談話が「植民地支配と侵略、特にアジア諸国民に与えたすさまじい損害と苦しみに『深い自責』を感じ『誠実な謝罪』をする」と声明したことを紹介したが、安倍はそれを『意図的に間接的な流行語として利用した』のだ。安倍の本心は確実に「村山談話へのNO!」であると殆どの人は見る。
新華社は「過去の謝罪を水で薄めて流し去ろうとしている」と評論した;
・不純化された安倍の謝罪は、失われた信頼を取り戻し、日本の隣人およびより広い国際社会と和解するには程遠い。
・安倍は、戦後世代に謝罪の歴史のページを閉じることができると日本の右翼を喜ばせ、そして周辺国の隣人との関係悪化の損害を避けようと試みたが、それは「言語による計略」なのだ。WWIIにおける日本軍による侵略と残虐行為に対する憤怒は今も高く渦巻いているのに。
⑤日本の多くの保守主義者は、10万人の女性が誘拐され性奴隷にされたことを否定している。彼らは、女性がブローカーに雇用された高給取りの売春婦と主張し、日本の軍と政府は責任を全く負う必要が無いと主張している。
⑥安倍を含む多くの政治家が靖国参拝を繰り返して、隣国との摩擦を起こしている。靖国は処刑された14人のA級戦争犯罪人と1000人のBC級戦犯を畏敬の念をもって祭っているからだ。
➆安倍はそれらに対する過去の政権の謝罪を紹介することによって、直接謝罪から逃げたのだ。安倍は4月の米議会演説でも、日本の行動がアジアの民族に「苦しみをもたらした」と認めたけれども、その言辞は曖昧で、なんらの具体的行動も起こされなかった。
⑧安倍は日本の超国家主義集団「日本会議」の構成員である。日本会議南京虐殺などの歴史事実を誇張だと言って否定するプラットフォームなのだ。
⑨安倍は頑迷な軍国主義者でもある。彼は平和憲法を無視して、自衛隊を事実上の国軍に仕立て上げるべく安保法案の制定を強行している。その結果日本国民の支持率が40%以下に下落し、不支持が上回った。
尖閣/釣魚島での緊張を仲間が起こし、それを利用してナショナリズムを扇動した安倍は、同盟国軍と自衛隊がその島で戦闘することを可能にすることを衆議院に認めさせたのだ。
⑪フィリピンやベトナムや米国およびいくつかの東南アジアの国家が安倍の決定を歓迎したものの、当然ながら、中国と韓国は非常に批判的であり続けた。
⑫アナリストは「安倍談話は米国の圧力で作られた。その結論は日米軍事同盟の強化であり、共に中国を軍事牽制し、アジアに緊張をまき散らし、アジアにおける米国覇権を維持するために自衛隊を活用する決意表明なのだから」と言う。
⑬だが、米国政府の願望である中国牽制を無力化する険悪な日韓関係の問題解決には程遠いだろう。ワシントンが思うほどに日韓の歴史的葛藤の根は浅くない。
⑭日本も中国も韓国にも歴史問題に無関心で経済繁栄至上主義の人が多数存在する。安倍は彼らを「島が盗られる」と煽って極東に軍事的緊張を生起させた。
⑮植民地化と侵略戦争についての歴史記憶は冷戦の主要なテーマだったのだ。WWⅡ植民地主義を真に払拭したとは言い難い。形を変えた、例えば軍事色を隠した経済植民地に過ぎないと言う見方もあり、それに米国が猛反発していたからだ。その問題は今も解決せず、安倍は新たな紛争のネタにしている。
⑯日本政治は中国と韓国を完全に納得させる謝罪を拒んできたが、それが安倍の願望である「謝罪の終了」を不可能にしている。中国と韓国は既に日本に対して「寛容」な処置を実施済である。日本側が完全なる謝罪と、永続的国民教育を正しく行うことでしか、本質的には和解できないだろう。

◆英紙タイムズ社説「戦争の罪と向き合わず」=70年談話で(時事)
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2015081500304
①安倍談話は、恥ずべきほどなまでに、(戦争中の)日本の罪ときちんと向き合わなかった。原爆忌終戦記念日で、日本は戦争の加害者というより、被害者であるという神話を維持している。この「神話」が克服されなければ、周辺諸国との関係や日本の外交を歪める。


………(4) それでも依怙地に靖国参拝………

中国も韓国も政府筋は安倍談話に無関心。村山・河野談話の謝罪を踏襲すると言っただけで、両談話に対して「歴史歪曲だと否定する日本会議系構成員の筆頭である安倍が、自分の過去発言を謝罪し取り消さぬ限り、彼の行動を注視するほかない。その意味で、靖国玉串奉奠と閣僚参拝がその回答」だろう。

天皇陛下のおことば全文 戦没者追悼式(朝日)
http://digital.asahi.com/articles/ASH8G6DBPH8GUTIL03Q.html
①「過去を顧み、さきの大戦に対する深い反省と共に、今後、戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願い、全国民と共に、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、心からなる追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります」

終戦の日天皇陛下「深い反省」…全国戦没者追悼式(毎日)
http://mainichi.jp/select/news/20150815k0000e040170000c.html
①安倍首相は、歴代首相が言及してきたアジア諸国の戦争犠牲者への加害責任や「哀悼の意」「深い反省」には一昨年、昨年に続いて触れず、世界の国や地域の繁栄のために「今を生きる世代、明日を生きる世代のために、国の未来を切り開いていく」と述べた。

◆Japan Emperor Offers 'Remorse' on WWII Surrender Anniversary(NYT)
http://www.nytimes.com/aponline/2015/08/14/world/asia/ap-as-japan-wwii-ceremony.html?partner=rss&emc=rss&smid=tw-nytimes&smtyp=cur&_r=0
天皇明仁WWⅡ終戦記念日に「Deep Remorse深い自責の念」(=全ては私が悪かったのです、ごめんなさい)と異例の表明をしたが、安倍は昨日の談話に続いて彼個人の自責の念を表明しなかった。
②安倍はアジアの膨大な被害者は無視し、代わりに日本兵尊い犠牲になってくれたおかげで現代日本の繁栄があると言った。安倍は、彼自身の言葉で日本の戦争犯罪を認め謝罪することはない。それに対して、天皇はそれがよくないのだと示唆したのだった。
③安倍は、前の総理が謝罪したのだから俺は謝罪不要だと言っているに等しい。だから、いくら村山談話を「全体として踏襲」と言っても誰も信用しない。そもそも、彼が村山談話河野談話を否定する急先鋒であったついこの前までの発言を取り消して謝罪していないのだから。
④安倍は、何度も何度も、「侵略の明確な定義は無い」とか「証拠書類が発見されなかったから、南京虐殺も戦時性奴隷も無かった」と言い募ってきた。過去の談話を踏襲すると言うのなら、その前に彼自身の過去の言動の誤りを認め謝罪することが先だろう。
⑤米国が煩いので靖国参拝は出来なかったが、安倍は玉串奉奠した。彼の代理に閣僚三人と特別補佐官が参拝して、軍国主義を称揚する戦争神社で膝まづいた。言葉が信用できないから行動を注視する中国と韓国への安倍の回答が「軍国主義のシンボル靖国神社への玉串奉奠と閣僚参拝」であった。

◆Japan’s emperor appears to part ways with Abe on pacifism debate(WP)
https://www.washingtonpost.com/world/japans-emperor-offers-remorse-on-anniversary-of-wwii-surrender/2015/08/15/1094f89c-4120-11e5-9f53-d1e3ddfd0cda_story.html
WWⅡ終戦の日戦没者追悼式典に妻美智子と登壇した日本の天皇は、例年の声明での表現を強めて「深い自責の念」と述べた。その言葉は、内閣総理大臣安倍晋三のそれとは違っていた。

天皇明仁『ここに過去を顧み、さきの大戦に対する深い反省と共に、今後、戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願う』

天皇は毎年同じステートメントを読んできたが、今年は例年とは異なる表現を使った。81歳の名目指導者は、昨年までは“deep sorrow” を意味する「深い悲しみ」を使ってきたが、今年、彼はずっと強い言葉を使った:“deep remorse”「深い自責の念」。

④皇室を担当してきたベテランジャーナリスト久野靖は述べた;
天皇明仁のコメントは数十年間で前例がない。彼は、私達が歴史から学ぶべきであると言っている」
「それは、憲法によって政治発言を禁止された象徴天皇として言い得る限界表現だ。そして、今年と言う変節の年に彼が述べた多くの気持ちが凝縮されている」
天皇の短い声明は、前日に安倍総理大臣述べた長い談話よりも、遥かに重く注目すべきである。安倍は戦争行為に対して“feelings of profound grief”「深い悲しみ」と表現したが、安倍はその発言を彼の歴史観の背後に埋没させようと試みているからだ」。

⑤1989年に天皇裕仁が死に、明仁が継承したが、彼は憲法が彼に禁じる政治的発言に違反しないように細心の注意を払ってきた。

⑥だが彼は、「憲法解釈変更」と「戦力を行使する普通の国」になろうとする安倍に対する不快感を隠さず、憲法は忠実に守られねばならず、日本憲法の平和主義は戦力を行使しない国のあり方だと婉曲に述べている。

➆安倍の戦争法案は、おそらく参院でも可決されるだろうが、国民の間に強烈なる抗議行動を生起させている。天皇明仁は再び彼の意見を8月15日に述べた。彼の発言は安倍に抗議する国民の側に立っている。

⑧『終戦以来既に70年、戦争による荒廃からの復興、発展に向け払われた国民のたゆみない努力と、平和の存続を切望する国民の意識に支えられ、我が国は今日の平和と繁栄を築いてきました。戦後という、この長い期間における国民の尊い歩みに思いを致すとき、感慨は誠に尽きることがありません』と。

⑨久野靖「戦争経験者は死に絶えようとしている。安倍総理を含む戦争法案を作っている議員の全ては戦後生れである。天皇は、現代日本の平和が「強い自責の念」を抱いた戦争経験者たちの労苦によって成り立っていることを想起させようとしている」

原武史(日本帝国に詳しい明治学院大学政治学者)
「仰天しようがしまいが、“深い自責の念”が日本の平和を確立したことを否定できない。天皇は“深い自責の念”を抱いた人々による意図的な努力のおかげであると明言しているのだ。それは安倍が進める攻撃的な国家体制への批判だ」
「安倍が憲法解釈を変更して強行する軍事同盟の強化による抑止力の強化という安全保障に対する天皇の異論とも言える」
天皇明仁は、それは違うと言い、日本人自身が平和のために一貫して切望した非武装・非戦という方法によって強化された真の平和を今の私たちが持っているのだと述べている。それは現在の国政に対する痛烈な批判である」

◆Japan PM Abe sends ritual offering to Yasukuni Shrine on WW2 anniversary(ロイター)
http://www.reuters.com/article/2015/08/15/us-ww2-anniversary-japan-idUSKCN0QK00L20150815?feedType=RSS&feedName=topNews&utm_source=twitter
安倍晋三首相はWWⅡ終戦記念日の今日、靖国(戦争)神社に玉串料を奉納した。

◆3閣僚が靖国参拝=安倍首相は玉串料奉納(時事)
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol&k=2015081500045&utm_source=twitter&utm_medium=jijicom&utm_campaign=twitter
①女四悪人が参拝・・・有村治子少子化担当相、高市早苗総務相山谷えり子国家公安委員長稲田朋美政調会長小泉進次郎内閣府政務官ら60余名。

◆中国外務省、閣僚参拝に「強烈な不満」=大使館に申し入れも(時事)
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2015081500234
高市早苗総務相安倍内閣の閣僚3人が靖国神社に参拝したり、安倍晋三首相が同神社に玉串料を奉納したりしたことについて談話を発表した。
②「15日は日本軍国主義が無条件降伏した日だ。日本の政治家がこの日に、第2次大戦A級戦犯が祭られ、侵略戦争を美化する靖国神社をあがめることは、歴史問題に対して大きく誤った態度を改めて反映するものだ」安倍談話の謝罪は嘘。行動を注視すると言ったら、安倍側の回答は靖国参拝だった。